動物も笑う。それは声に現れる。少なくとも65種の動物は遊びながら笑うことが判明

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 楽しい時、うれしい時、人間は笑う。では動物たちはどうなのか?笑っているような表情を見せることはあるけれど本当に笑っているのだろうか?

 新たなる研究によると、動物たちも笑うという。
かねてから動物が遊んでいるときに発する声は、人間の笑いによく似ていると考えられており、実際に65種の動物が遊びながら"笑う"ことを特定したという。

【人間の笑いと同様の笑いを動物たちはするのだろうか?】
 共に笑うことは、人間が相手とつながり絆を結ぶのに重要な行為だ。笑いの原因は個人や集団によって多種多様とはいえ、笑いが発する音は異なる文化をもつ人々の間でたいてい認識される。

 しかし、人間以外の動物の場合はどうなのだろう?そもそも彼らは笑うのか?笑う理由は、人間の笑いと同じようなものなのだろうか?

 人間の場合、笑いはさまざまな感情の表われといえる。楽しいからという肯定的な笑いもあれば、悔しい、むかついたという否定的な感情までその幅は広い。

 人はジョークを聞いたときや、おもしろいと思うものを見たときに笑うが、動物の知性に人間で言うところのユーモアのセンスがあるのかどうかはわからない。
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【65種の動物が遊びながら笑うことを特定】
 だが、多くの動物は遊びの中で、仲間と共にいる時、愉快な特有の声を発している。研究者は、このような発声を人間の笑いにかなり近いものだと考えている。

 最近の研究で、動物の間で遊んでいるときの発声がどれくらい一般的なものなのかを調査した。そして、65の種が遊びながら"笑う"ことを特定した。

 そのほとんどは哺乳類だったが、鳥類も遊びながら笑うものがいることがわかった。この新たな分析が、人間の笑いの起源の進化を追う助けになった。

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【なぜ動物たちは笑うのか?動物たちが笑っているのを見分けるには?】
 遊びの行為はときに喧嘩しているように見えることがあるため、動物は遊びの中で声を出したり、笑ったりすることで、エスカレートして攻撃的になり危険な状態になっていくのを抑えているのではないかという説が、4月16日付の『Bioacoustics』誌に掲載された。

 喧嘩と違って、遊びはたいてい繰り返し発生し、交尾やエサを探すといった生存行動とは別に起こる、と言うのは、ロサンゼルスはカリフォルニア大学の、自然人類学博士号候補者であるサーシャ・ウィンクラー。

 どこで遊びを見分けるかというと、「霊長類を研究している人は、"見ればわかる"と言います」ウィンクラーは言う。

 私たちにもっとも近い親戚である霊長類は、人間が遊んでいるときにする表情とよく似た"遊びの顔"をもっているのがひとつのサインだという。

 ウィンクラーは、かつてアカゲザルの研究していたときに、サルが遊んでいるときに喘ぐような静かな息をしていることに気づいた。ほかの多くの霊長類も、遊んでいるときに声を発することが知られている。

 ウィンクラーと共同研究者のグレッグ・ブライアントは、動物の笑いの種類はもっと幅広いのではないかと考えたという。

 そこで、このアカゲザルの静かな呼吸のように、遊びの中で声によるシグナルを発している動物がほかにいないかを調べるために、これまでの多くの研究を見直した。
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【動物の笑いは声に現れる】
 すると、哺乳類に関する論文の中にたくさんの例が見つかった。とくに霊長類、齧歯類、群れを作る肉食動物、海洋哺乳類などの間では、声による遊びのシグナルが報告されていたことがわかった。

 こうした声の多くは、遊んでいるときだけに発する。サバンナモンキーの鳴き声やドブネズミの超音波風震え声、バンドウイルカの口笛のような声やギャーギャーいう鳴き声、リスザルのチーチーいう声などがある。


 チンパンジー、ゴリラ、サル、ヒヒなど霊長類の多くは、喘ぐようなくすくす笑いや、唇を打ち鳴らしブツブツいうような声、震え声や金切り声など、さまざまな遊びの笑い声を発する。
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【笑うのは主に哺乳類や鳥類】
 笑うと言われている動物はほとんどが哺乳類だが、カササギフエガラスやミヤマオウムなどの鳥類も遊んでいるときに声をたてる。

 2017年の研究では、ニュージーランドに生息しているミヤマオウムの笑い声を録音してスピーカーで流すと、ほかのミヤマオウムが自発的に鳴き始めると報告されている。つまり、鳴くという行為がほかの仲間への誘いになり、とくに遊びを始めやすくすることが示された。
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 魚類や両生類、爬虫類についての遊びの笑いの報告は、ほとんどない。これはこれらの種の中では遊びという行為が存在するか否かについて、疑問があるからだろう。【人間の笑いの進化】
 人間の笑いは、遊びの中から生まれたと考えられていて、この仮説は、多くの霊長類の遊びが絡んだときにたてる喘ぐような笑いによって裏付けられている。

 人間の笑いも、こうした喘ぐような静かな笑いから発展した可能性があり、"進化の過程で儀式化され、現在のようなハ、ハ、ハという発声になった"のかもしれないと、ウィンクラーは言う。

 人は遊んでいるときに笑うのはもちろんだが、言語や遊び以外の行為にも笑いを取り入れ、肯定的なものから否定的なものまでさまざまな感情を笑いで表現するようになった。
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【人間の笑いと動物の笑いの違い】
 人間の笑いは、もうひとつの重要な点でもほかの動物の笑いと決定的に違う。

 それは笑い声の大きさだ。人は集団の仲間に入れてもらうために、大声で笑いを伝播させる。
それに比べて、ほとんどの動物の笑いはことさらひそやかで、目の前の相手に聞こえるくらいの音量しかない。

「多くの動物が遊んでいるときに声を発するという似たような機能をもっているのは、とても興味深いことです」ウィンクラーは言う。

 「でも、私たち人間の笑いには、こうした独特な特徴があって、今後の研究の重要な分野でもあります」

References:Play vocalisations and human laughter: a comparative review: Bioacoustics: Vol 0, No 0 / Do animals laugh? | Live Science/ written by konohazuku / edited by parumo

記事全文はこちら:動物も笑う。それは声に現れる。少なくとも65種の動物は遊びながら笑うことが判明 https://karapaia.com/archives/52302497.html
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