キノコが宇宙を救う。菌糸体で作った人工衛星でスペースデブリ問題を解決できる可能性

photo by Pixabay
 映画『ゼロ・グラビティ』の物語の発端は、宇宙空間を高速で移動する無数のスペースデブリ(宇宙ゴミ)との衝突事故だが、実世界でも起こりうる問題だ。

 デブリの衝突は新たなデブリを発生させる。
そしてその密度がある一定の値を超えると衝突が衝突を呼び、連鎖的に増殖して宇宙は利用不能になる。これが近い将来やってくるだろう宇宙時代で懸念される「ケスラーシンドローム」と呼ばれる問題だ。

 更に問題はもう1つある。それは人工衛星が大気圏に再突入して燃焼する際、細かいアルミニウムの粒子を残すことだ。それはその後何年も大気圏を浮遊し、いずれは地球環境にも影響するだろうと考えられている。

 そこで注目されているのがキノコだ。
キノコの「菌糸体」で作られた素材を使用することで、これらの問題が解決できる可能性があるという。
【キノコで作った人工衛星でスペースデブリ問題を解決に導く】

 スペースデブリの発生源は、故障で制御不能になったり耐用年数を過ぎた人工衛星、あるいはロケットから切り離されたパーツなどで、1センチ程度の大きさでも弾丸と同じ破壊力を持つ。

 それらが衝突しあうと、新たなデブリが発生し、その空間密度がある臨界値を超えると、衝突が連鎖しデブリが自己増殖し、大惨事を引き起こすかもしれない。これがケスラーシンドロームだ。

 “サイバーファーマー”を自称するマックス・ジャスティス氏は、そうした近未来に予測される大問題をキノコを使って解決しようとしている。

 キノコの「菌糸体」は丈夫で、熱に強く、環境にも優しい。
これでつくられた人工衛星は、宇宙産業に革命を起こすだろうという。

 ヒントになったのは、元宇宙飛行士で、現在は京都大学で教鞭もとる土井隆雄氏が、スペースデブリを削減するべく住友林業と共同で開発している木の人工衛星(23年打ち上げ予定)だ。セルロース繊維の層(すなわち木材)は熱の変化や直射日光に非常に強い。

 しかしジャスティス氏によれば、菌糸体は木よりも人工衛星の素材として優れた点がいくつもあるのだという。まず木より柔軟かつ丈夫で、軽い。

[動画を見る]
Fungus: The Plastic of the Future
 
 上記動画で実演しているように、熱にも強く、ガスバーナーで炙っても煙が出るだけだ。
また寒い宇宙空間でくっついて(冷間圧接)しまうこともない。

 菌糸体の中に金属の配線を通して、さまざまな信号を送信することもできるし、何よりも木材よりはるかに持続可能な資源だ。キノコには人工衛星に利用すべき数々の理由があるとジャスティス氏は語る。

【キノコ素材なら環境に優しく、ケスラーシンドロームが発生しにくい】

 菌糸体は強く結合しており、耐火性もある。そのためにこれを砕くには非常に大きなエネルギーが必要になる。

 ケスラーシンドロームでもっとも危険とされるのは、弾丸のように小さなデブリだ。
その点、頑丈で細かな破片になりにくい菌糸体なら安全性が高い。

 また大気圏で燃えても有害な物質が残ることはない。まさに未来の人工衛星の素材としてはぴったりなのだ。

[画像を見る]

【キノコの可能性は無限大】

 そんな大きな可能性を秘めたキノコの菌糸体に注目するのはジャスティス氏だけではない。たとえばMars City Designでは、これを利用して火星に建物をつくろうと研究を進めている。

 もちろん宇宙開発への利用だけではない。
死者を自然に埋葬してくれる生きたお棺、ファッション好きならぜひ注目したいキノコレザーキノコスニーカーなど、さまざまな分野でキノコの利用が始まっており、レンガの代わりにもなるとしてその研究が進められている。

[動画を見る]
This mushroom brick could replace concrete

 更にはプラスチックを食べてくれるキノコも発見されており、まさにキノコは地球のみならず宇宙の救世主となってくれる可能性を秘めているようだ。

References:Mushrooms could solve a huge problem in outer space/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:キノコが宇宙を救う。菌糸体で作った人工衛星でスペースデブリ問題を解決できる可能性 https://karapaia.com/archives/52302578.html