宇宙人を見つけるなら、まず超AIを駆動するスーパーコンピューター「ダイソン球」を探せ!


 地球以外にも知的生命体は存在するのか?この問いについては、ここ10年でかなり楽観的な見解が広まってきた。

 宇宙技術の発達によって、地球に似た惑星がかなり一般的である可能性が明らかになってきたからだ。
ならば知的生命体が存在したとしてもおかしくない。

 ではどうやって探すのか?

 オックスフォード大学の研究者は、宇宙人そのものを探すよりも、まずは恒星のエネルギーによって稼働する巨大なスーパーコンピューターがあるダイソン球を探すべきだと主張する。そのダイソン球は、超AIにより人工生物圏を建造しており、地球外高度文明が存在する可能性があるというのだ【恒星のエネルギー利用を可能にする巨大装置、ダイソン球】

 こうした地球外生命の発見を目的とする研究分野のことを「SETI(地球外知的生命体探査)」という。

 SETI関連の研究者は、物理学や天文学をバックボーンとしていることが多い。ゆえにコンピューター神経科学で学位を取得したオックスフォード大学人類未来研究所のアンダース・サンドバーグ博士は、かなり異色の経歴の持ち主と言えるだろう。

 サンドバーグ博士は、SETI研究のひな形の形成に貢献したことで知られる人物だ。その経歴にふさわしく幅広い分野を研究対象とする彼だが、SETIに関する業績は、「ダイソン球」と呼ばれる恒星を卵の殻のように覆ってしまう仮説上の人工構造物ついての理論だ。

 サンドバーグ博士によれば、知的生命を発見するには、このダイソン球を探すべきなのだという。

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 1960年、物理学者フリーマン・ダイソンは、高度な地球外文明ならば恒星を囲むような人工生物圏をつくり出すだろうとの理論を提唱した。

 高度文明ならば大量のエネルギーが必要になるだろう。現在の物理学によるならば、ある惑星系で最大のエネルギーはその恒星からもたらされる。ゆえにどこかの時点で、そのエネルギーを利用するようになるのは必然であろう。


 そのためにはどうするか? 恒星をすっぽりと包むような(あるいは囲むような位置に設置された)巨大構造物で、恒星のエネルギーを吸収すればいい。それがダイソン球だ(そのよくあるイメージは、恒星を包む殻のような球だが、ダイソン自身はそのような構造物を想定していたわけではない)。

 都合がいいことに、ダイソン球は恒星によって熱されるので、赤外線で明るく輝くと考えられる。そのため、地球から肉眼で見える遠方の星々のように、ダイソン球もまた見えることだろう。もしこれを見つけ出すことができれば、地球外高度文明が存在するという証拠になる。

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【スーパーコンピューターとしてのダイソン球】

 1999年、サンドバーグ博士は、これが必要になるだろう特定の用途について考察した論文を発表した。そこで提唱されているのが、恒星ほども大きなスーパーコンピューターである。

 我々の文明が多少なりとも参考になるのだとすれば、文明が発達すればするほどコンピューターの演算能力はますます重要なものになるだろう。

 そして文明が発達した末にたどり着くのが、恒星のエネルギーによって稼働するダイソン球スーパーコンピューターと、それによって誕生する大規模な人工知能(AI)だ。

 この見解はSETI関連研究で大きな影響力を持つようになり、本格的なダイソン球探しが行われるようになった(たとえば、現在ウプサラ大学の研究グループがこれまででもっとも大規模な捜索を実施中だ)。 

 60年代に提唱されたときは単なる奇抜なアイデアに過ぎなかったダイソン球だが、最近では毎年複数の関連論文が発表されるようになっている。サンドバーグ博士によると、それがより現実的な概念とみなされるようになったことが背景にあるという。


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【ダイソン球の発見が意味すること】

 仮にダイソン球を本当に発見できたとすれば、単純に地球外文明の電波を検出できた場合よりもずっと大きな意味がある。というのも、その存在が示しているのは、知的生命はそれをつくれるほどの超文明にまで発達できるということだからだ。

 これまでのところ、地球外生命はまだ発見されていないし、高い確率でいるだろうと期待される候補惑星すら見つかっていない。

 サンドバーグ博士によれば、じつはこのこと自体があるメッセージを伝えている可能性もある。つまり知的生命はどこかの時点で滅亡してしまうということを示唆しているのかもしれない。だとすれば、今人類がやるべきことは絶滅のリスクをできるだけ下げるための努力だ。

 あるいは、無限に広がる宇宙といえども、生命はきわめて稀な現象であって、我々は本当にひとりぼっちの存在である可能性もある。

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【夏眠するダイソン球】

 ちなみにサンドバーグ博士は2017年にまた新たな論文を発表している。それによると、ダイソン球はつくられても”夏眠”させられる可能性があるという。

 我々の太陽は50億年ほどで燃え尽きると考えられている。宇宙にはまだまだたくさん恒星があり、太陽寿命の数千倍以上の期間は星々が燃え続ける、すなわち夏が続くと考えられる。

 コンピューターは発熱すると作業の効率が低下するが、それはダイソン球によるスーパーコンピューターもまた同じだ。


 ゆえにその性能をフルに発揮して何かすごいことを成し遂げたいのなら、星々が燃え尽きて宇宙が冷えてから稼働させた方が効率がいい。そのすごい目的のためならば、時間という投資も安いものかもしれないと考えられるのだそうだ。

 つまりサンドバーグ博士は、ダイソン球が恒星のエネルギーを使った超高性能スーパーコンピューターであるだけでなく、宇宙スケールの時間軸で存在するものととらえているのである。

 しかし宇宙が終わりに近づけば、物理はそれまでとは違うものになるだろうと予測されている。そうなれば、さまざまな事柄の評価が難しくなるだろうことも博士は認めている。

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【これからの人類と地球外生命の可能性 】

 サンドバーグ博士の仮説の本筋は、今もなおスーパーコンピューターとしてのダイソン球だ。その一方で、この世ではありとあらゆるシナリオを想定することができる。したがって、ある文明の科学技術がたどる道筋もさまざまと考えられる。

 同博士はそうした可能性にオープンな態度を示している。地球の人類には無限に広がる可能性が待っていることだろう。そしてそれは、地球外の知的生命体にとっても同じことだ。

References:We Should Look for Star-Sized Supercomputers to Find Aliens, This Researcher Says/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:宇宙人を見つけるなら、まず超AIを駆動するスーパーコンピューター「ダイソン球」を探せ! https://karapaia.com/archives/52303196.html
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