謎の減光で人類を惑わす恒星「ベテルギウス」その原因がついに判明

 2019年9月から20年初頭にかけて、オリオン座の一角にある赤色超巨星「ベテルギウス」の明るさが35%も陰るという原因不明の減光現象が観察された。ベテルギウスはすでに最盛期を過ぎた星だ。
そのため爆発して超新星になる予兆ではと大きな話題になった。

 だがその原因がついに判明したようだ。

 このほど、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTによってとらえられた一連の鮮明な画像の分析結果が、『Nature』(6月16日付)で発表された。

 それによると、これまで予測されていた通り、ベテルギウスが放出したガスが固まって塵となり光を遮ったという説明がもっとも妥当であるという。

【赤い超巨星、ベテルギウス】
 赤色巨星はもともと不安定だ。太陽の8~35倍もの質量があり、激しく燃え盛る。そのために寿命も短い。

 ベテルギウスは800万~850万歳だと考えられているが、すでに100万年前に最盛期が過ぎている。一方で太陽は46億歳だが、まだ寿命の半分が過ぎた程度だ。

 そんなベテルギウスが膨張して赤色超巨星になったのは4万年前のこと。核内にあった水素はもう使い果たされており、現時点ではヘリウムが核融合を起こして炭素と酸素が生成されている。

 またベテルギウスの核が収縮したことで、核の周囲に水素が集まり、殻のようなものが形成されている。
この水素の殻はヘリウムと融合し、ヘリウム核融合の燃料となる。

 だが、やがて熱と圧力が失われ核融合を続けられなくなれば、まるでもう1つの太陽が出現したかのように明るく地球を照らす超新星爆発を起こす。そして中性子星かブラックホールのどちらかが残される。

 ベテルギウスはおそらく10万年以内に超新星爆発を起こしてその一生を終えることが予想されており、近年ではベテルギウスの大幅な減光が見られいよいよ爆発の兆しか?と思われた。

2019年から2020年のベテルギウスの明るさの変化(画像)
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image credit:ESO/M. Montarges et al.

2019年から2020年のベテルギウスの明るさの変化(アニメーション)
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How Betelgeuse changed in brightness in 2019–2020【ベテルギウスが放出したガスの雲が光を遮っていたことが原因】
 こうしたプロセスを経て星が超新星になる前、核の内部で融合した重元素が周辺の宇宙に放出される。これについて現状ではあまり理解が進んでおらず、何が引き金となってそのようなことが起きるのかはわからないままだ。

 それでも、ベテルギウスが実際にガスを放出したこと自体は、昨年ハッブル宇宙望遠鏡によって観測されている。

 そうしたガスの雲がベテルギウスの前を横切ったのだ。奇しくも、そのときベテルギウスの一部の温度が低下していた。

 そのために、シリコンなどが含まれるガスが凝縮・硬化して塵に変化した。パリ天文台のミゲル・モンタルジ氏らの分析によれば、これが星の光を遮ったと考えるのが、減光の原因としてもっとも妥当であるそうだ。
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Artist’s animation of Betelgeuse and its dusty veil

 研究グループは、今回の発見によって、ほかの赤色巨星でも同じような質量の喪失を検出しやすくなるのではないかと期待している。


 いずれにせよ、ベテルギウスはまだ健在だ。今後も終わりを迎える星の奇妙な振る舞いを見せて、私たち驚かせてくれるかもしれない。

References:Mystery of Betelgeuse's dip in brightness solved | EurekAlert! Science News / European Southern Observatory (ESO)/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:謎の減光で人類を惑わす恒星「ベテルギウス」その原因がついに判明 https://karapaia.com/archives/52303271.html
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