人間にとってかわいくない生き物だって、平等に守るべき命である

 ここ数年の異常気象のおかげで、世界各地で山火事や洪水、熱波などの自然災害が多発しており、野生でくらす生き物たちも大打撃を受けている。

 オーストラリアを襲った森林火災で火傷を負ったコアラたちの姿を見て、心を痛めた人もたくさんいるだろう。

 だが、そうした危機に直面している動物の中には、ヘビ、コウモリ、クモといった人間に忌み嫌われる生き物たちもいる。

 彼らをかわいいと思う人は少ない。それどころか嫌悪感を持つ人も多い。それでも彼らは生態系にとって欠かせない役目を果たしており、他の動物たちと同じように守るべき命だと、さまざまな専門家がVICEで伝えている。

【多くの人に愛される動物】
 人間たちに愛される動物は「カリスマティック・アニマル」と呼ばれている。ライオンや虎、象やキリン、パンダやコアラ、イルカやラッコなど、動物園の人気者たちだ。

 テレビ番組でもよく取り上げられ、ときに映画の主人公になったりもする。そうしたものを通じて、私たちは子供の頃から彼らに対する親しみを育んでいる。

 だからこそ、彼らは資金集めの宣伝として利用される。このこと自体は悪いことではない。自然保護団体ネイチャー・コンサーバンシーとイェール大学に所属する保全計画の専門家ジェニファー・マクゴーワン博士が言うように、それは保全活動の大切な部分なのだ。

 マクゴーワン博士によると、カリスマティック・アニマルは抱きしめたいと思う可愛さをもっていたり、大きかったりワイルドだったり、見つめれば、見つめ返してくれるような動物たちだ。

 そうした感情的なつながりを感じさせる動物は、保全において重要なのだと、世界自然保護基金(WWF)の野生生物学者ロビン・ナイドウ博士は説明する。

 たとえばアフリカのゾウは世界各地からツーリストを惹きつけており、地元にとってはこれが収入源となる。だからゾウを守ろうという動機が生まれる。

 都合がいいことに、体の大きなカリスマティック・アニマルは、その分生息域が広いことが多い。だから彼らを守ることはそこで暮らすほかの動物たちを守ることにもつながる。ナイドウ博士は、「彼らはほかの多種多様な種にとっての”傘”になっています」と話す。

 とは言え、カリスマティック・アニマルの多くは人気があり、人間に守られながらも、やはり脆弱で危機に直面している。
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【その見た目や生態で人間に愛されない生き物たち】
 しかしメイン大学の古生態学者ジャクリーン・L・ジル博士によれば、実際のところ、本当の危機に直面しているのは、両生類や爬虫類、蜘蛛やコウモリなのだという。

 たとえばオーストラリアの森林火災ではコアラ33万匹のうち6万匹が死んでしまったと推定されている。だが最大の痛手を受けたと考えられるのは、人間にとって人気のない種である可能性が濃厚だ。にもかかわらず、そうした種が注目されることはあまりない。
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【嫌われ者にも生態系では大切な役割がある】
 トロント大学の博士課程の学生ダニエル・デ・カール氏は、人間に無視されがちな、忌み嫌われがちな生物も生態系の中では重要な役割を果たしていると説明する。

 ヘビなどの捕食動物は動物が増えすぎることを防ぐ大切なストッパーだ。夏になればうるさい蚊であっても鳥や魚などの重要な食料源だし、寄生虫ですら捕食動物のように動物の数を適切に維持する手助けをしている。

 生態系はバランスの上に成り立っており、どこかが崩れてしまえば、全体が崩れかねない。だからどんな生物だって敬意を払う価値があり、守るべき対象となる。
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【大人の嫌悪感を子供に刷り込まない。全て生物にはそれそれに価値があると教育することの大切さ】
 人は昔から、見た目が不気味な生物を恐れ、駆除する対象であると教えられてきた。むろん本能的なものもあるだろう。脳がその動物は危険だと伝えているかもしれないからだ。

 だとするならば、どうやれば不人気な生物たちも守らねばならないと人々に思わせることができるだろうか?

 デ・カール氏は、人々の嫌悪感は自然に芽生えたものではなく、学習によるものだと話す。なぜなら、強い嫌悪感を示すのは大抵は大人で、ほとんどの子供は興味を示すものだからだ。

 子供が興味を持ってカエルや虫などを触ろうとすると、苦手な親は大騒ぎして子供から引き離そうとする。子供はそれらの生物を愛してはいけないものと刷り込まれていく。

 だから教育が大切なのだ。教育を通じて、嫌われ者の生き物だって生きる価値のある、大切な存在なのだと伝えなければならないのだ。
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【種の絶滅の危機を防ぐため、人間の力が必要】
 さらにデ・カール氏は、地球規模で起きている気候変動、温暖化にも言及している。

「気候変動による絶滅の危機は、政府が協調して規制する以外に食い止めることができません」とデ・カール氏は言う。たとえば世界で排出される全二酸化炭素のうち3分の1がわずか20社によって、7割が直接的・間接的に100社によって排出されているのだという。

 そして我々1人1人が、行動を変えていかなければならない。人間は文明の為、生物たちの生息地を破壊し続けてきた。このしっぺ返しは必ず帰ってくる。手遅れになる前に、我々が意識を変えていくことで、みんなの地球を守ることができるのだ。

References:Creepy Animals Deserve to Be Saved From Destruction, Too / written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:人間にとってかわいくない生き物だって、平等に守るべき命である https://karapaia.com/archives/52303875.html
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