
地球上の水の総量は、14億立方キロメートルと推定されている。海洋だけでも地球の70%を占めているのだから、水の中に住む魚は特に多様な生物だ。
水棲生物ならではの個性豊かなその姿は我々を楽しませてくれるが、一方で、中には人間が命を落とすほど危険な仲間もいる。
もうすぐ夏本番、海や川に出かけることがあっても、心の片隅に置いておいてほしい。水中からヤバいあいつが近寄ってきているかもしれないことを。
【10. ウツボ】
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凶悪なアゴと攻撃的な行動で知られるウナギの親戚(ウナギ目ウツボ科)。そう頻繁に起きるわけではないが、その縄張り泳いでいる人が噛まれることは実際にある。また飼育中のウツボに噛まれるという事件も過去には起きている。
「海のギャング」とも呼ばれ、大型のものに噛まれれば、最悪指を失うほどの大怪我をすることもある。
またウツボには毒を持つ仲間もいる。赤血球を破壊し、血液の凝固を妨げる毒を食らってしまえば、ただ痛いだけでなく、凄まじい出血でのたうち回ることになるだろう。【9. ゴマモンガラ】
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モンガラカワハギ科最大の種で、インド洋や太平洋など、世界中の熱帯の海に生息する。普段はそれほど攻撃的なわけではない。しかし繁殖期になると、海でもっとも危険な魚に変貌する。
この時期のゴマモンガラは、フィンに噛み付いたり、潜水用具に攻撃したりと、ありとあらゆる手段でダイバーに襲いかかる。
毒はないが、実際に噛まれたダイバーによれば、スーツ越しでもとんでもなく痛いそうだ。ただ縄張りの外に追い出そうと突進してくるだけの場合もあるが、海中で見かけたら逃げるのが得策だ。【8. ミノカサゴ】
派手な姿をしているので、見分けるのは簡単だろう。インド洋・太平洋の固有種で、ミノカサゴの仲間ならどれもカラフルかつゴージャスだ。
海中で見かけたら、じっくり観察しようと近寄ってみたくもなるかもしれない。が、近寄り過ぎれば、海で最強クラスの猛毒をお見舞いされる羽目になる。
背ビレなどに毒針が隠されており、これに刺されると激痛とともに患部が赤く腫れ上がり、めまい、発熱、呼吸不全、湿疹といった症状が出て、アレルギー体質であれば死にいたることもある。
その毒で実際に死者が出るケースは稀だが、それを補うかのような攻撃性の高さが怖い。
世界でもっとも懸念される侵入種の1つでもあり、現在は大西洋、メキシコ湾、カリブ海でも見かけるようになった。【7. カンディル】
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Removing A Candiru From Man's Penis | HORROR STORY | River Monsters
ほんの数センチ程度しかない小さなナマズの仲間だ。しかし小さいゆえに恐ろしい。
自分よりも大きな魚のエラなどから体内に侵入して、内側から肉を食らうのだ。獰猛な性格をしており、しかも集団で獲物に襲いかかる。
時に人間もまたそのターゲットになることがある。尿道に入り込まれてしまったときの恐怖にあなたは耐えられるだろうか?
そのヒレには返しがついており、一度侵入されてしまうと引き抜くことすら容易ではない。重度の炎症と出血によって死ぬこともある。地元ではピラニア以上に恐れられているという。
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Big & Deadly ELECTRIC EELS - Amazon River Monsters
ウナギといっても厳密にはウナギではない。分類上はナマズやコイに近い。南米北部のアマゾン川やオリノコ川に生息し、ここで自然界でもきわめてユニークな進化を遂げた。そう、発電能力だ。
こんなことができるのは、自然界広しといえども、シビレエイやデンキナマズなどのごく一握りの生物だけだ。
人間を襲うことは滅多にないが、遭遇してしまえばもっとも危険な魚である。
600ボルトの電流をお見舞いされればひとたまりもない。
呼吸や心臓が止まり、意識を失えば浅瀬でも溺れてしまう。デンキウナギのせいで人が死んだという事例はそれほど多くはないことになっているが、それはただ記録がないだけという可能性もある。【5. アカエイ】
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How Dangerous Is A Stingray? | STINGRAY | River Monsters
非常に古い魚で、2億年前にサメから分岐したと考えられている。尾に毒針があるが、その毒はあまり研究が進んでいない。
アカエイの生息域は海だけでなく、川や湖沼にまで広がっており、200種以上も存在するからだ。だが毒針に刺されればさまざまな合併症が生じ、下手をすれば死にいたることもあるのは確かだ。
アカエイは内気で、死亡事故が起きることは稀だ。それでもそこにアカエイがいることを知らずにうっかり踏みつけてしまい、足を刺されるといったケースはある。
著名な環境保護活動家だったスティーブ・アーウィン氏は、アカエイの撮影中に胸を刺されて急死した。【4. ムベンガ(ゴリアテ・タイガーフィッシュ)】
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Jeremy Wade Catches Killer Goliath Tigerfish | TIGERFISH | River Monsters
アフリカ、コンゴ川水系に生息する大型肉食淡水魚で、学名は「ヒドロキヌス・ゴリアテ」。ゴリアテ・タイガーフィッシュとも呼ばれている。
ゴリアテとは旧約聖書に登場する大男のこと。その名の通り、成長すると体長1.5メートル、体重50キロにもなることがある。
ヒドロキヌス属の仲間のほとんどは人間に危害をくわえたりはしないが、ムベンガについては縄張り意識が強く、泳いでいる人を襲うこともある。
毒は持たないが、ずらりと並んだ杭のような牙を見れば、そんなもの必要ないことがわかるだろう。まるでピラニアの大型バージョンで、獲物に集団で襲いかかる姿が目撃されている。【3. ハコクラゲ】
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BOX Jellyfish - The Most Dangerous Sea Creature
クラゲに毒があるのは周知の事実だ。だがそのユーモラスな見た目のせいで、命を落とすような大事にはならないと油断してはいないだろうか?
確かに大抵のクラゲならそれでいい。だがハコクラゲに属する仲間はその”大抵”に含まれない連中だ。
「シーワスプ(海のスズメバチ)」と呼ばれる「オーストラリアウンバチクラゲ」などは、海どころか地球上で有数の強力な毒を持つ生物として知られている。
触手に並ぶ刺胞による一刺しは強烈で、プスッとやられれば耐え難いほどの激しい痛みを味わったうえに、ものの数分で心停止、全身麻痺、意識消失といった症状が現れ、死にいたる。
厄介なことに、体がほとんど透明なので、海中で彼らを見つけることはほぼ不可能だ。オーストラリアウンバチクラゲによる犠牲者は、オーストラリアだけでも過去80年で少なくとも63人に達する。
【2. オニダルマオコゼ】
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Deadly Stone Fish | National Geographic
全身がコブのような突起におおわれており、海底の岩石に擬態することから、英名を「ストーンフィッシュ」という。
気がつかずにうっかり踏んでしまうと、運が良くても病院送りは決定だ。海で最強の毒の持ち主かどうかについては議論があるが、最強クラスであることは間違いない。
インド洋・太平洋の浅い海に生息しており、その巧みな擬態能力ゆえに発見が難しい。エサにならないような大きな生物に対して特に攻撃的というわけではない。それでも我々にとっては踏みつけてしまう危険があるだけに、恐ろしい相手だ。
背ビレの刺条から分泌される神経毒にやられると、呼吸困難や痙攣を引き起こして数時間で死にいたる。
しかし幸いにも、その生息域付近の施設には解毒剤が普及しているので、オニダルマオコゼによる死亡事故はそれほど多くはない。【1. フグ】
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Handling a Deadly Pufferfish | PUFFERFISH | River Monsters
外敵が接近するとぷぅと膨らんで追い払おうとするユーモラスな外見からはなかなか想像できないが、その体には青酸カリの1000倍も強力な「テトロドトキシンTetrodotoxin」という自然界最強クラスの猛毒を宿している。恐ろしいことに、この毒に有効な解毒剤はない。
フグの毒は卵巣や肝臓をはじめ、内臓に集中している。そのためその毒は防衛のためばかりでなく、生きるために必要な成分であると考えられている。
最近では無毒なフグを養殖することにも成功しているが(フグは本来無毒で、その毒はエサから獲得される)、無毒なフグが有毒なフグに噛み付いて、毒を取り込もうとでもしているかのような姿が観察されている。
「フグは食いたし、命は惜しし」と言われるように、我々日本人にとっては高級食材である。これを提供できるのは免許を取得した専門の調理師だけということになっているが、それでも素人が自分で調理して死亡する事故が毎年のように起きている。
ここに挙げた魚以外にも、海にはオーバーキルな魚が潜んでいることは言うまでもない。
References:The World's Deadliest Fish - Toptenz.net / written by hiroching / edited by parumo
追記(2021/07/17)フグの毒名をテトロドトキシンに変更して再送します。
記事全文はこちら:ウツボからカンディルまで、危険な10種の魚たち https://karapaia.com/archives/52304048.html
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