宇宙は有限であり、巨大なドーナツ型であるとするシミュレーション結果

 宇宙の端っこはどうなっているのだろう?そもそも端っこなんてあるのだろうか?眠れない夜に考えるにはもってこいのテーマなのだが、宇宙の果てに行きつくことは到底不可能なので様々なデータから仮説を導き出すしかない。

 『airXiv』(6月24日投稿)で閲覧できる査読前の論文によると、宇宙はドーナツのような形をしている可能性が高いと予測されている。
更に宇宙の大きさは有限で、観測可能な宇宙の3、4倍くらいであるという。

 ってことは、宇宙で一方向へひたすら真っ直ぐ進めば、いつかは同じ場所に戻ってくることも可能で、少なくとも迷子になることはなさそうだ。

【宇宙ってどんな形?】
 そもそも宇宙とはどんな形をしているのか? 天文学者じゃなくても興味深い問いだ。現在、可能性として考えられるのは「平坦な宇宙」と「閉じた宇宙」と「開いた宇宙」だ。

 2本の線を平行に引いてみたとしよう。平坦な宇宙では、並行して引かれた線は、どこまで行っても並行なままだ。ところが閉じた宇宙では、奇妙なことに平行線はどこかで交わる。また開いた宇宙ならばそれが離れていく。

 面白いことに、こうした性質はそれぞれの宇宙の運命をも決めている。平坦な宇宙と開いた宇宙なら無限に膨張する。一方、閉じた宇宙ならいつかは崩壊してしまう。

 そして、これまでの観測からは、私たちが暮らすこの宇宙は平坦な宇宙であることがわかっている。
だから、今の宇宙はいつまでも膨張し続ける。

 だがこれは幾何学的な話である。
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【トポロジーというもう1つの視点】
 もう1つ、「位相幾何学(トポロジー)」という視点がある。この視点から見てみれば、幾何学のルールの範囲内で、また別の宇宙の形を考えてみることができる。

 今度は1枚の紙を想像してほしい。ぱっと見、まっ平だ。その上に平行な線を引けば、どこまでも平行だろう。

 では、紙をくるっと丸めて端と端をつなぎ、筒にしてみよう。それでも平行な線は、やはりいつまでも平行だ。

 さらに筒の端と端をつなぎ合わせてみる。するとドーナツのような形が出来上がる。だが、それでも平行な線は平行だ。
形は変わったが、幾何学のルールは破られていない。
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【宇宙の真の姿を知るには?】
 完全に平坦な宇宙は無限に広がる。しかし平坦であっても、先程の紙のように位相幾何学的につながってループする宇宙は有限で、少なくとも理論上は、その大きさを測ることだってできる。

 この宇宙が連結してループしているかどうかなど、一体どうすればわかるのだろうか? これまで宇宙は幾何学的には計測されてきた。だが、そこから位相幾何学的な形を知ることはできない。

 ウルム大学(ドイツ)とリヨン大学(フランス)の研究グループが注目したのは、「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」だ。これは宇宙の誕生からわずか38万年後に放たれたとされる光で、ビッグバン直後の宇宙を知る手がかりと考えられている。

 その当時、宇宙は今よりも100万分の1ほど小さかった。もしも宇宙が本当に連結しているのならば、そうしたまだ小さな宇宙では観測可能な範囲内(宇宙の膨張は遠く離れるほど速くなる。光速より速く膨張するところからは地球まで光が届かないので、観測できない)でくるりとループしていた可能性が高い。

 一方、現在では、膨張のせいでループのスケールが観測可能な範囲を超えている可能性が大だ。だとすれば、現実にそれを直接目にすることは難しい。


 しかし初期宇宙の様子を伝えるCMBには、宇宙の形を示すヒントが隠されているようだ。それはCMBの温度の乱れ(専門的には「摂動」という)だ。もしも私たちの宇宙の1次元以上が端と端で連結しているのなら、温度の乱れが小さかった頃の宇宙のループ以上に大きくなることはない。

 つまり、もし乱れに大きさの限度があるのならば、ここから宇宙の位相幾何学的な構造を知ることができるかもしれないということだ。
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ブランク衛星が撮影した、宇宙最古の光である宇宙マイクロ波背景放射 / image credit:【宇宙の大きさには限りがあり、それはドーナツ型をしている】
 そこで研究グループは、いくつかの宇宙の形を想定し、そこではCMBの乱れがどのようになると考えられるのかシミュレーションで予測。それを実際のCMB観測データと比較してみることにした。

 その結果、一般に想定されている無限の宇宙よりも、ドーナツ型の有限宇宙の方が観測データによく当てはまることがわかったという。

 中でも特によく当てはまったのは、実際のサイズが観測可能な宇宙の3、4倍ほど大きな宇宙であったそうだ。【ドーナツ型の宇宙では、一周して戻ってこられる】
 宇宙がドーナツ型ということはループしているということで、同じ方向へずっと移動し続ければ、ぐるっと周ってまた同じ場所に戻ってくるということだ。

 ただし、これはあくまで理論上の話だ。観測可能な宇宙の外側では、空間が光よりも速く膨張している。そうした領域では膨張速度よりも速く移動することができないので、現実にはいつまでたっても1周することはできない。


 ちなみに別の研究グループによる宇宙マイクロ波背景放射の分析でも、宇宙は風船のようにループしているという結果が得られている。

References:Our universe might be a giant three-dimensional donut, really. | Live Science / written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:宇宙は有限であり、巨大なドーナツ型であるとするシミュレーション結果 https://karapaia.com/archives/52304262.html
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