10年間、パンとヨーグルトしか食べられなかった12歳少年。「選択的摂食障害」の治療を開始
 バランスよく様々な食材を食べることは健康的な生活を送る上で大切なことだが、イギリスに住む12歳の少年は、10年間、特定のパンとヨーグルトしか口にできず、専門医に「選択的摂食障害」と診断された。

 これは、特定の物しか食べられない摂食障害で、他の食べ物を食べようとすると、恐怖や嫌悪感が生じ吐き気を催す為、どうしても口にすることができない。

 現在、治療を始めた少年は、少しずつではあるが他の食べ物も口にできるようになったという。

10年間、特定のパンとヨーグルトしか食べられなかった少年 イギリス・ノーフォーク州に住むアシュトン・フィッシャー君(12歳)は、2歳の時から特定の2つの食べ物以外を口にすることができずにいた。

 アシュトン君が10年間、口にすることができた食べ物は、特定のブランドの白い食パンとイチゴやバナナが入ったフルーツ味のヨーグルトのみだ。  息子の健康を心配した両親は、他の食べ物を与えようと試みたが、アシュトン君は怖がってしまい泣きじゃくったという。

 母親のカーラさんは、このように話している。
息子が、こんなふうに食べ物恐怖症になった確かな理由は今でもわかりません。

もしかしたら、赤ちゃんの時に患った胃食道逆流がトラウマになったのではないかと私は思っています。

特定のものしか食べず、必要な栄養を全く摂取していないのでとても心配していました。でも、他の食べ物を食べさせようとすると、息子はパニック発作を起こしてしまうのです。
 アシュトン君の2つの食品以外の食べ物を怖がる。それゆえ、クリスマスディナーも家族そろって食べたことがないそうだ。

 他の食べ物のにおいに、アシュトン君が耐えられないからだ。

 学校の給食はもちろんのこと、友達の誕生日パーティーに呼ばれても、アシュトン君は出された食べ物を口にすることができない。そんな状況は彼の日常生活に大きな打撃を与えた。

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 両親は、息子を地元クリニックの医師に診せたが、「偏食」と診断されたのみで、「いずれ成長すればマシになっていくでしょう」と言われただけだった。
クリニックの医師は、偏食を治すよう栄養士に診てもらえばいいという指示を出しました。でも、息子はただの偏食ではないと私たちは知っていたので、それは時間の無駄でした。

正直、息子自身が最近までは食生活が人と違うことに気付いていなかったのですが、中学になると同級生が息子の食生活に気付きはじめ、みんなに不審がられていることを悟ったようで、食生活を改善したいと思ったようです。
 このように話すカーラさんは、アシュトン君が円満に学校生活を送ることができるようにと、専門家を訪れる決心をした。

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少年は選択的摂食障害だった 幸い、今年7月に専門医に会うことができたアシュトン君は、その医師の診察で「選択的摂食障害(ARFID)と正式に診断された。

 選択的摂食障害は、限られた食品の中でも特定のブランドや、特定の店の食品、決まった調理法でなければ食べられないという特徴がある。

 また、選択的摂食の食行動異常は食べ物へのこだわりであり、感覚過敏(光過敏、音過敏、匂い過敏)などを伴うことも多く、自閉症スペクトラム症など、強迫性障害を併発するケースでよくみられることがわかっている。

 治療をしていく中で、アシュトン君は白パンやヨーグルト以外の別の食べ物を少しずつ口にできるようになっていったという。

 今では、ハムサンドウィッチやローストディナー、ポテトチップス、マクドナルドのチキンナゲットなどを食べることができるようになった。

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 必ずしも、健康的な食べ物ばかりではないが、2種以外の食べ物を口にすることができるようになったのは大きな進歩だ。
まだ、初期段階ですが、専門医が新しいことに挑戦する自信を息子に与えてくれました。状況は好転しています。

息子は、今は口にした食べ物が嘔吐をもたらさないということを理解できるようになりました。

プライベート治療なのでお金がかかりますが、地元クリニックの医師は息子の恐怖症を理解していませんでした。

これは、蜘蛛恐怖症と同じで心理的な問題で、食べ物恐怖症の人に安全な食べ物をどれだけ与えようとしても、彼らには蛆や魚の目を与えられていると感じてしまい、恐怖で食べることができないのです。

選択的摂食障害は、患者だけでなく親にとっても非常に困難な恐怖症ですが、助けを差し伸べてくれる場所があることを他の人にも知ってもらいたいです。

この状態は、子供に影響を与えるだけでなく、大人も同様に苦しみ、専門家の助けが必要となるからです。(カーラさん)
 アシュトン君の治療を行っている専門心理学者は、「患者が、自分に起こっていることを先ず理解することが第一で、その後は我々が患者を安心させることができるよう、生産的な目標に向けて患者の焦点を導き、抵抗、障害、間違った情報を正して和らげる治療を行っていきます」と述べている。

written by Scarlet / edited by parumo

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