それを裏付けるような研究結果がまた報告された。
あなたは昨日の夜に何を食べたか覚えているだろうか? こうした「いつ」「どこ」で「何」が起きたのかといった事象の記憶を「エピソード記憶」という。
残念ながら私たち人間は、歳をとるにつれてエピソード記憶が少しずつ衰えていくが、『Proceedings of the Royal Society B』(8月18日付)に掲載された研究によると、なんとイカは死の数日前まで衰えないことが明らかになったそうだ。
人間のエピソード記憶 エピソード記憶とは、いつ、どこで、何が起きたのかといった事象(イベント)を記憶しておく力のことだ。
昨晩の夕食以外にも、夏休みにディズニーランドへ行った、17歳の誕生日にプレゼントをもらったといった記憶もこれにあたる。
人間の場合、エピソード記憶は4歳頃から形成され始め、歳をとるにつれて段々と衰えていく。一方、場所や時間には関係していない一般的な知識を思い出す力のことを「意味記憶」というが、こちらは歳をとってもそれほど衰えない。
人間の脳において、エピソード記憶に重要な役割をはたしているのは「海馬」だ。そのため加齢によってその力が低下するのは、海馬の劣化が原因であると考えられている。
[画像を見る]
photo by Pixabay
イカもエピソード記憶らしきものを持っていた エピソード記憶は、過去の出来事を思い出すという意識的な行為とつながりがある。だから、かつては人間だけの記憶とされていたこともある。
しかし今では動物にもエピソード記憶らしきものがあることが明らかになっている。
こうした類の力は、ほかにもカササギ、ラット、ゼブラフィッシュ、類人猿などでも確認されている。
イカもまたエピソード記憶らしきものがあることで知られている。その脳に海馬はないが、学習と記憶を担う「垂直葉系」という独自の構造があるおかげだ。
これによって目先のことだけでなく、未来のことも想定して採餌行動を最適化したり、いつ、どこで、どんなエサを手に入れたのかという記憶にもとづき、戦略を変更したりすることができる。
だが今回、仏ノルマンディー大学のアレクサンドラ・シュネル氏らが調べたのは、海馬のないイカのエピソード記憶が衰えるのかどうかということだった。
[画像を見る]
Photo by:Dr Alex Schnell, University of Cambridge
コウイカの記憶力は死の数日前まで衰えないことが判明 実験に使われたのは、卵から育てられた24匹のヨーロッパコウイカだ。コウイカの寿命は1年ほどだが、それらの中には人間でいえば生後10~12か月から90歳までに相当するイカが含まれていた。
こうしたイカたちをまずは視覚的な合図(白黒の旗をふる)に反応するよう訓練する。
さらにそれから4週間かけて、合図があったら1時間後に小エビの肉、3時間後にグラス・シュリンプ(イカはこちらをより好む)がもらえることを教える(なおパターンを学習しないよう、合図を出す位置はその日によって変えられた)。
こうした訓練の結果、コウイカたちは合図に応じて自分の好みのエサ(グラス・シュリンプ)を手に入れられるようになったという。しかも、高齢のイカであっても、記憶力の衰えを示す兆候が見られなかったのだ。
[画像を見る]
Photo by:Dr Alex Schnell, University of Cambridge
このことから、過去の出来事を思い出すコウイカの記憶力は、歳をとっても衰えないと推測されている。
またコウイカがいつまでも衰えないエピソード記憶を発揮できるのは、エサを食べなくなる最後の数日まで、その垂直葉系が劣化しないからではないかとシュネル氏らは推測している。
もっともコウイカのエピソード記憶はまったく衰えないわけではないようだ。研究グループによれば、老化による長期記憶の劣化や、垂直葉系以外の記憶に関連した脳構造が変性する兆候を示した研究が過去にあるのだそうだ。
これがわかったのなら、今度はその素晴らしい記憶力がいつから発揮されているのか知りたいところだ。
まさかこの世に生まれた直後から出来事を覚えていられるなんてことがあるのだろうか? シュネル氏らの今後の研究テーマもそれであるとのことだ。
イカやタコの寿命が短い理由は、その高度な能力に関係しているのかもしれない。今後も頭足類からは目が離せない。
References:Episodic-like memory is preserved with age in cuttlefish | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences / Cuttlefish remember the what, when, and where of meals—even into old age | Ars Technica / written by hiroching / edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』











