マホトーンかな?米海軍が、頭を混乱させ会話を不可能にする非殺傷兵器を開発中
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 ドラクエのマホトーンのように、声を出せなくして敵の呪文を封じ込めるスキルは、直接的な攻撃力はなくても、戦場ではきわめて厄介なものとなる。

 アメリカ海軍では、これと似たような効果がある非殺傷兵器を開発中であるようだ。
それを使っても話者が喋れなくなるわけではない。しかし声をエコーさせることで頭を混乱させ、完全に会話不能にしてしまう。

自分の声が遅れて聞こえてくる。遅延聴覚フィードバックを応用 「AHAD(handheld acoustic hailing and disruption)」と呼ばれる会話阻害兵器には、吃音(きつおん。どもりのこと)の治療に使われる「遅延聴覚フィードバック」の技術が応用されている。

 吃音のある人の声をマイクで拾い、それをヘッドフォンから50~200ミリ秒ほど遅れて流してやると、症状が緩和されることがある。自分の声が遅れて聞こえると話しやすくなるのだ。これが遅延聴覚フィードバックだ。

 ところが、吃音のない人にはこれが逆効果となる。頭が混乱して話し方が変になったり、完全に話せなくなったりするのだ。

 オンライン会議などをよく行う人なら似たような経験があるかもしれない。ネットの遅延などで、自分の声がエコーのように遅れて聞こえてくると、何を話しているのかわからなくなってしまうはずだ。


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敵の声を長距離マイクで録音し、スピーカーで声の上にかぶせる AHADはこの現象を応用して、ターゲットの会話能力を奪ってしまう。

 会話能力を封じたい人間が何かを話していたら、すかさずその声を長距離マイクで録音。その直後に声をスピーカーから流し、自分の声が遅れて聞こえてくるように仕向ける。

 AHADをさらに破壊的なものにするために、効果が発揮されるエリアをピンポイントで限定する指向性スピーカーの採用も検討されている。

 これを使うと、周囲にいる人にはエコーしている声が聞こえない。だから、すぐそばにいる人がAHADで混乱させられているなどとは気がつかない。

 狙われた人は、何かが変だと思っても助けを呼ぶこともできない。まったく恐ろしい兵器なのだ。

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戦場のコミュニケーション能力を剥奪する恐ろしい兵器 なお、中には自分の声がループしても平然と会話できる人もいる。残念ながらそうした人にAHADは効かない。

 だが、そのような例外はいるものの、効く人には効果テキメンだ。戦場におけるコミュニケーション能力は決定的に重要だ。
ゆえにAHADが戦況を左右することもあるかもしれない。

 この兵器が小型化され汎用化されれば、夫婦喧嘩が繰り広げられる修羅場を制するのに役立つかもしれないし、選挙で大声で演説している人を妨害することができるかもしれないが、それってちょっと違法かもしれない。

References:US Navy Develops Weapon That Could Make It Impossible To Speak

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