だが、地球を脱出してせっかく新天地にたどり着けたとしても、相変わらずそこにウイルスは存在するかもしれない。
なぜなら地球外生命が存在するのなら、ウイルスもまた存在する可能性が濃厚であるからだ。エイリアン・ウイルスである。
米アリゾナ州立大学の宇宙生物学者ポール・デイビス教授によれば、生命という現象を支えるためには、さまざまな微生物や微小な物質が必要であると考えられるという。
それが正しいのだとすると、ウイルスもまた、生命全体にとって必要不可欠な存在であったとしてもおかしくはないのだそうだ。
遺伝情報の交換にはウイルスが必要 仮に地球以外の惑星に生命が存在していたとする。そして、それがある程度長期間にわたって存続できるものだとする。
それだけの複雑さと丈夫さが備わっているのならば、それは遺伝情報を交換する能力をも備えているに違いないとデイビス教授は推測する。
そのために必要なのがウイルスだ。それは遺伝情報を交換するためのツールのようなものだ。たとえば地球上において、ウイルスは動物が外部から遺伝情報を取り込む手助けをしている(これを「遺伝子の水平伝播」という)。
地球と同じように、地球以外の惑星にもさまざまな環境があるはずだ。そこに生物が生息していたとするならば、まったく均質なたった1種類だけにとどまるとはおよそ考えられない。
さまざまな環境に適応するために、各種の遺伝情報を必要とする。そしてそのプロセスを、ウイルスか、それに類するものの力を借りて行うのである。
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善玉ウイルスは生命活動に大切な存在 宇宙にもウイルスが存在する可能性があるとは、なんとも不穏な話だ。なにしろ、このところ私たちはウイルスに苦しめられてばかりだったのだ。
しかしデイビス教授によると、ほとんどのウイルスは悪者ではなく、善玉ウイルスなのだという。
たとえば「バクテリオファージ」と呼ばれる細菌に感染するウイルスは、細菌が増えすぎてしまうことを防いでいる。
また植物が高温の土壌で生きる手助けをしたり、地球の生化学サイクルに大切な役割を果たしているウイルスも存在する。
それどころか私たち自身の遺伝子のかなりの部分が、古いウイルスの名残である可能性すらある。
このところ腸内細菌の重要性が注目されているが、人間の体内には無数の微生物によって微生物叢が形成されている。それと同じように、惑星にも微生物叢がある。ウイルスはその中で大切な役割を担っているのだ。
「ウイルスがいなければ、地球上の生命を維持することはできないかもしれません」とデイビス教授は語る。
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数年以内に地球外生命が発見される可能性 ところで、デイビス教授のこうしたコメントは、先月発表された地球外生命が数年以内に発見される可能性があるとする研究を受けてのものだ。
ケンブリッジ大学のグループによって新たに発見された「ハイセアン惑星」という新しいタイプの惑星は、水素を豊富に含んだ海におおわれている。
そのため、恒星との距離がこれまでの常識では生命には適さないとされるものであっても、生命が生存できる可能性があるそうだ。
References:Viruses may exist ‘elsewhere in the universe’, warns scientist | Infectious diseases | The Guardian / written by hiroching / edited by parumo
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