
Photo by:国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)
これまで日本人の祖先は、縄文人と弥生人であると考えられてきた。しかし『Science Advances』(21年9月17日付)で発表された最新のゲノム解析の結果によると、さらに第三の祖先がいるようだ。
それは、大陸からの渡来が進んだ古墳時代に登場した「古墳人」で、日本人のルーツはこの3集団に由来しているという。
これまでの日本人の先祖に関する仮説「日本人の二重構造モデル」 これまでの考古学的な研究からは、この日本列島には、4万年~3万年前には人が暮らしていただろうことが明らかになっている。
今を生きる私たちの直接の祖先についてはいくつか仮説があるが、もっともよく知られているのは東京大学の埴原和郎氏が提唱した「日本人の二重構造モデル」だ。
それによると、旧石器時代後期頃に東南アジアから日本列島へと渡来人がやってきた。こうした人々が、1万6000年~3000年前に日本で暮らしていた「縄文人」の祖先だ。彼らは狩猟採集民で、水辺に竪穴式住居を建てて、狩猟や漁などを行いながら暮らしていた。
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尾岳貝塚(初期縄文)から発掘された縄文陶器。この場所に埋葬された骸骨は、脚を折り曲げた状態で置くという特殊な埋葬方法をとっていた / image credit:Shigeki Nakagome, Lead researcher, Assistant Professor in Psychiatry, School of Medicine, Trinity College Dublin.
これに次いで北東アジアから2度目の渡来人がやってくる。これが「弥生人」の祖先だ。弥生人は農耕民であり、日本に稲作を伝えたのも彼らだと考えられている。
こうして、もともといた縄文人と後からやってきた弥生人たちが交わることで形成されたのが現代日本人であるというのが、埴原の説だ。
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ゲノムからみる弥生時代人 I 神澤秀明 博士(国立科学博物館)縄文人、弥生人、古墳時代の骨からゲノムを解析 しかし金沢大学の中込滋樹氏らによる最新の研究によると、縄文人、弥生人の他に、第三の祖先が関わっているのだという。
「弥生時代」(前10世紀~後3世紀中頃)に続き、3世紀頃から始まる「古墳時代」では、馬の飼育が行われるなど、生活に大きな変化が起きている。このため、この時期に大陸からの人の流入があり、古墳人が登場したと指摘する意見がかねてからあった。
研究グループはこの仮説を検証するために、日本各地で出土した縄文人と古墳時代の人の骨から新たにゲノムを入手。
くわえて、これまでに報告されてきた縄文人と弥生人のゲノムデータをあわせて、パレオゲノミクス解析(古い遺体から遺伝情報を抽出し、解析する手法:古代ゲノム学)を行なった。
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平城貝塚から出土した縄文土器(縄文晩期)と、古代のDNAが抽出された頭蓋骨 / image credit:Shigeki Nakagome, Lead researcher, Assistant Professor in Psychiatry, School of Medicine, Trinity College Dublin.古墳時代に東アジアから3度目の移民「古墳人」の存在を確認 その結果明らかになったのが、これまで指摘されていた通り、古墳時代に東アジアから3度目の移民があったということだ。
現代日本人のルーツは、縄文人と弥生人の二重構造ではなく、古墳時代の東アジアの人々、いわゆる古墳人をもくわえた三重構造だったのだ。日本人には3集団の先祖の血が流れている またこの研究では、弥生人や古墳人の遺伝子が大陸の人たちに近い一方、縄文人はそれとははっきり異なっており、彼らが長い間孤立して暮らしていただろうことも判明している。
ゲノムデータを用いたシミュレーション解析によると、縄文人の祖先は、2万~1万5000年前に大陸の人たちと分かれ、少なくとも縄文早期まで人口1000人程度の小さな集団だったようだ。
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四国の愛媛県上浮穴郡久万高原町にある遺跡で、今回配列が決定した最古の縄文人の個体が発見された / image credit:Shigeki Nakagome, Lead researcher, Assistant Professor in Psychiatry, School of Medicine, Trinity College Dublin.
しかし稲作が伝来したとされる弥生時代に、北東アジアから弥生人が渡来し、さらに古墳時代に東アジアから3番目の祖先がやってきた。現代の日本人には、こうした3集団の祖先の血が流れている。
なお、これまでの考古学では、モノやコトといった間接的データから過去の歴史を探ってきた。
References:Ancient DNA Rewrites Japanese History | Technology Networks / パレオゲノミクスで解明された日本人の三重構造 / written by hiroching / edited by parumo
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これまで日本人の祖先は、縄文人と弥生人であると考えられてきた。しかし『Science Advances』(21年9月17日付)で発表された最新のゲノム解析の結果によると、さらに第三の祖先がいるようだ。
それは、大陸からの渡来が進んだ古墳時代に登場した「古墳人」で、日本人のルーツはこの3集団に由来しているという。
これまでの日本人の先祖に関する仮説「日本人の二重構造モデル」 これまでの考古学的な研究からは、この日本列島には、4万年~3万年前には人が暮らしていただろうことが明らかになっている。
今を生きる私たちの直接の祖先についてはいくつか仮説があるが、もっともよく知られているのは東京大学の埴原和郎氏が提唱した「日本人の二重構造モデル」だ。
それによると、旧石器時代後期頃に東南アジアから日本列島へと渡来人がやってきた。こうした人々が、1万6000年~3000年前に日本で暮らしていた「縄文人」の祖先だ。彼らは狩猟採集民で、水辺に竪穴式住居を建てて、狩猟や漁などを行いながら暮らしていた。
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尾岳貝塚(初期縄文)から発掘された縄文陶器。この場所に埋葬された骸骨は、脚を折り曲げた状態で置くという特殊な埋葬方法をとっていた / image credit:Shigeki Nakagome, Lead researcher, Assistant Professor in Psychiatry, School of Medicine, Trinity College Dublin.
これに次いで北東アジアから2度目の渡来人がやってくる。これが「弥生人」の祖先だ。弥生人は農耕民であり、日本に稲作を伝えたのも彼らだと考えられている。
こうして、もともといた縄文人と後からやってきた弥生人たちが交わることで形成されたのが現代日本人であるというのが、埴原の説だ。
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ゲノムからみる弥生時代人 I 神澤秀明 博士(国立科学博物館)縄文人、弥生人、古墳時代の骨からゲノムを解析 しかし金沢大学の中込滋樹氏らによる最新の研究によると、縄文人、弥生人の他に、第三の祖先が関わっているのだという。
それが古墳時代の古墳人である。
「弥生時代」(前10世紀~後3世紀中頃)に続き、3世紀頃から始まる「古墳時代」では、馬の飼育が行われるなど、生活に大きな変化が起きている。このため、この時期に大陸からの人の流入があり、古墳人が登場したと指摘する意見がかねてからあった。
研究グループはこの仮説を検証するために、日本各地で出土した縄文人と古墳時代の人の骨から新たにゲノムを入手。
くわえて、これまでに報告されてきた縄文人と弥生人のゲノムデータをあわせて、パレオゲノミクス解析(古い遺体から遺伝情報を抽出し、解析する手法:古代ゲノム学)を行なった。
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平城貝塚から出土した縄文土器(縄文晩期)と、古代のDNAが抽出された頭蓋骨 / image credit:Shigeki Nakagome, Lead researcher, Assistant Professor in Psychiatry, School of Medicine, Trinity College Dublin.古墳時代に東アジアから3度目の移民「古墳人」の存在を確認 その結果明らかになったのが、これまで指摘されていた通り、古墳時代に東アジアから3度目の移民があったということだ。
現代日本人のルーツは、縄文人と弥生人の二重構造ではなく、古墳時代の東アジアの人々、いわゆる古墳人をもくわえた三重構造だったのだ。日本人には3集団の先祖の血が流れている またこの研究では、弥生人や古墳人の遺伝子が大陸の人たちに近い一方、縄文人はそれとははっきり異なっており、彼らが長い間孤立して暮らしていただろうことも判明している。
ゲノムデータを用いたシミュレーション解析によると、縄文人の祖先は、2万~1万5000年前に大陸の人たちと分かれ、少なくとも縄文早期まで人口1000人程度の小さな集団だったようだ。
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四国の愛媛県上浮穴郡久万高原町にある遺跡で、今回配列が決定した最古の縄文人の個体が発見された / image credit:Shigeki Nakagome, Lead researcher, Assistant Professor in Psychiatry, School of Medicine, Trinity College Dublin.
しかし稲作が伝来したとされる弥生時代に、北東アジアから弥生人が渡来し、さらに古墳時代に東アジアから3番目の祖先がやってきた。現代の日本人には、こうした3集団の祖先の血が流れている。
なお、これまでの考古学では、モノやコトといった間接的データから過去の歴史を探ってきた。
中込氏らは今後も、そうした考古学的仮説をパレオゲノミクスという新しい技術で直接検証していく予定であるそうだ。
References:Ancient DNA Rewrites Japanese History | Technology Networks / パレオゲノミクスで解明された日本人の三重構造 / written by hiroching / edited by parumo
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