未知と遭遇する日は近いのかも。生命の誕生に欠かせない有機分子を銀河の原始惑星系円盤で発見
 原始惑星系円盤が生み出すガスや塵から放たれた光の”指紋”を調べたところ、生命に欠かせない大きな有機分子が豊富にあることが明らかになった。

 この発見は、地球で生命を誕生させた化学的な基礎が、銀河のいたるところにある可能性を示唆しているそうだ。


生命に不可欠な原料となる有機分子 複雑で大きな有機分子は、生命に不可欠な分子を作るための「原料」だ。それらは条件が整いさえすれば、糖やアミノ酸、リボ核酸(RNA)といった物質の構成要素すら作り出す。

 そうした有機分子は宇宙のいたるところに存在する。ただし、これまでは惑星が形成される場所(あるいは時期)から遠く離れたところでしか観察されてこなかった。

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惑星を育む原始惑星系円盤で光の指紋を捜索 そこで今回の研究の中心人物である英リーズ大学のジョン・アイリー博士は、若い星々をかこむガスや塵にそうした有機分子がどのくらいあるのか確かめることにした。

 こうしたガス・塵を「原始惑星系円盤」といい、惑星はここで誕生する。たとえば地球は、太陽の周囲にあった原始惑星系円盤の中で、小惑星や彗星に衝突されて成長した。

 アイリー博士らが探していたのは、「シアノアセチレン」「 アセトニトリル」「シクロプロペニリデン」の3つの有機分子だ。

 こうした分子から放たれた光は、はっきりと異なる波長を持ついわば”指紋”のようなもので、これを検出することができれば、そこに特定の分子があることがわかる。

 捜索場所として選ばれたのは、「IM Lup」「GM Aur」「AS 209」「HD 163296」「MWC 480」の5つの原始惑星系円盤だ。いずれも地球から300~500光年の距離にあり、そこでは現在進行形で惑星が形成されているとされる。

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image credit:M.Weiss / Centre for Astrophysics / Harvard&Smithsonian予想を上回る有機分子を発見 『Astrophysical Journal Supplement Series』(21年9月16日付)に掲載された研究によると、5つの原始惑星系円盤のうち4つで、お目当ての有機分子が検出されたという。


 しかも、その量は予想よりもずっと多かった。モデルから推測されていた量の10倍から100倍もあったのだ。小惑星の衝突によって生命の素材が持ち運ばれる? 重要なのは、こうした領域で小惑星や彗星が形成されているということだ。

 アイリー博士によれば、地球の生命誕生につながったものと同じプロセスが、原始惑星系円盤でも起きている可能性があるという。

 つまり若い惑星に衝突する小惑星や彗星によって、生命に不可欠な複雑で大きな有機分子が持ち運ばれるのかもしれないのだ。

 ならば、その荒々しい惑星形成のプロセスは、その後の生命の誕生を祝う壮大な花火のようなものかもしれない。

 研究グループの次なる課題は、こうした原始惑星系円盤内に今回検出されたものよりさらに複雑な分子が存在するのかどうか調べることだそうだ。

References:How planets may be seeded with the chemicals necessary for life | University of Leeds / written by hiroching / edited by parumo

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