
image credit:Parks Canada
野生の世界では時に奇跡が起きることがある。捕食者と被捕食者の立場が逆転することもあるのだ。
カナダの国立公園でハイイログマの刺殺死体が発見された。公園当局は当初、何に刺されて死んだのか特定できなかった。
そこで死体を解剖したところ、なんと、シロイワヤギの角に刺されていたことがわかったのである。
ハイイログマの死体発見。犯人はシロイワヤギ 今月4日、カナダの国立公園パークス・カナダを訪れていたハイカーが体重70キロほどのメスのハイイログマ(グリズリーベア)の死体を発見した。
その現場は人気のハイキングルートのすぐそばだったが、通報を受けたパークレンジャーが速やかにクマの死体を空路で回収した。
[画像を見る]
image credit:Parks Canada(ハイイログマの参考画像)
回収されたクマの死体は、首や脇の下の周りに致命傷とみられる刺し傷を負っていた。しかし当初、それが何によるものかは不明だった。
ところがその後の解剖で驚くべき犯人が明らかになった。
検死を行ったカナダの国立公園パークス・カナダの分析によると、メスのハイイログマに襲われたシロイワヤギが反撃し、その角でクマを追い詰めて殺した可能性が高いという。
自然界では捕食者のトップに位置するハイイログマを返り討ちで仕留めたシロイワヤギは非常にラッキーだったといえるだろう。
[画像を見る]
image credit:Parks Canada(シロイワヤギの参考画像)
ヤギがクマを倒したシチュエーションを予想 パークス・カナダの野生生物生態学者デビッド・ラスキン氏は、地元メディアのインタビューにこう語っている。
北米に生息するハイイログマは、シロイワヤギの天敵である。
パークス・カナダはラスキン氏の経験豊かなパークレンジャーの考察から、緊迫した戦いの様子を以下のように推測している。
[画像を見る]
photo by iStock
ヤギがクマを倒した例は他にも 獲物の立場のシロイワヤギがクマの猛攻から逃れること自体非常にまれだが、ラスキン氏によるとヤギがクマを殺した例は過去にもあるという。
以下の動画はカナディアンロッキーで目撃されたハイイログマとシロイワヤギの様子。ハイイログマに追われた母子らしきシロイワヤギ2頭が、狭い岩の隙間に入ってハイイログマから身を守っている。
[動画を見る]
MOUNTAIN GOAT GRIZZLY BEAR ENCOUNTER IN CANADIAN ROCKIESヤギに殺されたのは幼いハイイログマだった また、死体で発見されたハイイログマはまだ幼い個体だったと考えられている。
ハイイログマは最近になって体重360キロまで成長することがわかってきたが、死体はその1/5の70キロほどしかなく、出産経験がないことも判明。
若くして命を落としたそのクマは、そのヤギに噛みついて食いちぎろうとした可能性もあるが、鋭く固い角に守られたヤギのほうが上手だったのだろう。ハクトウワシを刺し殺した幼いアビの事例も こうした事例はネットでも時折話題にのぼる。
例えば昨年、アメリカのメイン州の湖で何者かに殺されたハクトウワシの死骸が見つかり、その犯人がアビ科の幼鳥であることが後に判明した。
[画像を見る]
image credit:Andy Morffew, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons:ハクトウワシ
その鳥は、ワシに襲われながらもとがったくちばしでワシの心臓を突き刺したのだ。
[画像を見る]
via_Stellata_Olfusa_20090606_e" hspace="5" >
image credit:David Karna/Wikimedia Commons:アビの親子
こうした動物たちの逆転劇は稀有な戦いとして注目されがちだが、と同時に一見不公平な戦いでも勝敗は最後まで読めないことも示している。クマを恐れず撮影に没頭。襲われるおそれも また野生動物に出くわした人の中には、珍しい光景をとらえようと近づいてスマホ撮影を始める人もいる。が、その行動が命取りになることもある。
今年初め、イギリスのデータ分析会社YouGovが行った世論調査で、アメリカの成人男性1,224人のうちの7%が「ハイイログマを倒せる」と信じていることが明らかになった。
現実には野生のクマを倒しに行く人などまずおらず、自信過剰な回答が証明されることもないだろう。しかしクマの撮影に没頭しているうちに見つかって襲われることはありうる。
倒せると主張する男性の中には、クマを撃退して生還できた幸運な人のニュースを見て「なら自分だって平気かも?」と楽観視する人もいそうだが、クマの犠牲者数を考慮してない可能性もある。動物の死体を発見したらすぐ報告。危険回避のため争いの場から離れること 自然豊かな地域ではどんな動物がこちらの様子をうかがっているかもわからない。観察してるつもりが観察されてる可能性もあるのだ。
特にクマの生息地のような危険な場所で、野生動物の命がけの戦いの場面に遭遇したときは近寄らないのが賢明だ。
パークス・カナダの広報係を務めるバイルズ氏は「安全はパークス・カナダの最優先事項です」と述べ、来園者に動物の死体を見つけた時の対処法や、死体の放置で引き起こされる危険性を伝えている。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
野生の世界では時に奇跡が起きることがある。捕食者と被捕食者の立場が逆転することもあるのだ。
通常なら1対1で戦って勝てる確率はわずかだが、ゼロではない。
カナダの国立公園でハイイログマの刺殺死体が発見された。公園当局は当初、何に刺されて死んだのか特定できなかった。
そこで死体を解剖したところ、なんと、シロイワヤギの角に刺されていたことがわかったのである。
ハイイログマの死体発見。犯人はシロイワヤギ 今月4日、カナダの国立公園パークス・カナダを訪れていたハイカーが体重70キロほどのメスのハイイログマ(グリズリーベア)の死体を発見した。
その現場は人気のハイキングルートのすぐそばだったが、通報を受けたパークレンジャーが速やかにクマの死体を空路で回収した。
[画像を見る]
image credit:Parks Canada(ハイイログマの参考画像)
回収されたクマの死体は、首や脇の下の周りに致命傷とみられる刺し傷を負っていた。しかし当初、それが何によるものかは不明だった。
ところがその後の解剖で驚くべき犯人が明らかになった。
検死を行ったカナダの国立公園パークス・カナダの分析によると、メスのハイイログマに襲われたシロイワヤギが反撃し、その角でクマを追い詰めて殺した可能性が高いという。
自然界では捕食者のトップに位置するハイイログマを返り討ちで仕留めたシロイワヤギは非常にラッキーだったといえるだろう。
[画像を見る]
image credit:Parks Canada(シロイワヤギの参考画像)
ヤギがクマを倒したシチュエーションを予想 パークス・カナダの野生生物生態学者デビッド・ラスキン氏は、地元メディアのインタビューにこう語っている。
その後の司法解剖により、ハイイログマが死亡前に負った傷がシロイワヤギの角のサイズや形状と一致することを確認しましたハイイログマの首と脇の下にあった傷の位置から、クマに襲われたヤギが鋭い角でクマを突き刺したことがうかがえるという。
北米に生息するハイイログマは、シロイワヤギの天敵である。
パークス・カナダはラスキン氏の経験豊かなパークレンジャーの考察から、緊迫した戦いの様子を以下のように推測している。
ハイイログマは通常上から獲物に襲いかかり、攻撃は獲物の頭、首の後ろ、肩に集中する傾向があります。
したがって急襲されたシロイワヤギは防御反応として鋭い角で身を守ることになります。そしてこの防御が功を奏して形勢が逆転したのでしょう。
[画像を見る]
photo by iStock
ヤギがクマを倒した例は他にも 獲物の立場のシロイワヤギがクマの猛攻から逃れること自体非常にまれだが、ラスキン氏によるとヤギがクマを殺した例は過去にもあるという。
シロイワヤギが防御のためにクマを殺した事例は過去にも報告されています。なので目を疑うほどのことではありません。そもそもシロイワヤギは自分を守るのに十分な角を備えた強い動物ですからね。なお全米野生生物連盟によると、オスのシロイワヤギの体重は最大で136 kgにもなり、その驚異的な登山能力が生かせる急傾斜地においてはハイイログマより優位に立つことができるという。
以下の動画はカナディアンロッキーで目撃されたハイイログマとシロイワヤギの様子。ハイイログマに追われた母子らしきシロイワヤギ2頭が、狭い岩の隙間に入ってハイイログマから身を守っている。
[動画を見る]
MOUNTAIN GOAT GRIZZLY BEAR ENCOUNTER IN CANADIAN ROCKIESヤギに殺されたのは幼いハイイログマだった また、死体で発見されたハイイログマはまだ幼い個体だったと考えられている。
ハイイログマは最近になって体重360キロまで成長することがわかってきたが、死体はその1/5の70キロほどしかなく、出産経験がないことも判明。
若くして命を落としたそのクマは、そのヤギに噛みついて食いちぎろうとした可能性もあるが、鋭く固い角に守られたヤギのほうが上手だったのだろう。ハクトウワシを刺し殺した幼いアビの事例も こうした事例はネットでも時折話題にのぼる。
例えば昨年、アメリカのメイン州の湖で何者かに殺されたハクトウワシの死骸が見つかり、その犯人がアビ科の幼鳥であることが後に判明した。
[画像を見る]
image credit:Andy Morffew, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons:ハクトウワシ
その鳥は、ワシに襲われながらもとがったくちばしでワシの心臓を突き刺したのだ。
[画像を見る]
via_Stellata_Olfusa_20090606_e" hspace="5" >
image credit:David Karna/Wikimedia Commons:アビの親子
こうした動物たちの逆転劇は稀有な戦いとして注目されがちだが、と同時に一見不公平な戦いでも勝敗は最後まで読めないことも示している。クマを恐れず撮影に没頭。襲われるおそれも また野生動物に出くわした人の中には、珍しい光景をとらえようと近づいてスマホ撮影を始める人もいる。が、その行動が命取りになることもある。
今年初め、イギリスのデータ分析会社YouGovが行った世論調査で、アメリカの成人男性1,224人のうちの7%が「ハイイログマを倒せる」と信じていることが明らかになった。
現実には野生のクマを倒しに行く人などまずおらず、自信過剰な回答が証明されることもないだろう。しかしクマの撮影に没頭しているうちに見つかって襲われることはありうる。
倒せると主張する男性の中には、クマを撃退して生還できた幸運な人のニュースを見て「なら自分だって平気かも?」と楽観視する人もいそうだが、クマの犠牲者数を考慮してない可能性もある。動物の死体を発見したらすぐ報告。危険回避のため争いの場から離れること 自然豊かな地域ではどんな動物がこちらの様子をうかがっているかもわからない。観察してるつもりが観察されてる可能性もあるのだ。
特にクマの生息地のような危険な場所で、野生動物の命がけの戦いの場面に遭遇したときは近寄らないのが賢明だ。
パークス・カナダの広報係を務めるバイルズ氏は「安全はパークス・カナダの最優先事項です」と述べ、来園者に動物の死体を見つけた時の対処法や、死体の放置で引き起こされる危険性を伝えている。
来園者が動物の死体に遭遇した場合はすぐにそこから離れ、早急に発見場所を報告してください。その場にいると、死体に引き寄せられた肉食動物や他の野生生物たちの活発な行動に巻き込まれる恐れがあるからです。References:livescience / youtube / iflscienceなど /written by D/ edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
』
編集部おすすめ