脳内を清掃し睡眠の質を向上させる携帯型のキャップ型デバイスの開発に米軍が出資
 睡眠は大事だ。個人差はあるが、最低6~7時間前後の睡眠時間が必要とされており、特に睡眠の質は重要視されている。


 きちんと眠れないと、認知機能が低下し咄嗟に正しい判断ができなくなる。

 そこで米軍は、電気刺激と超音波で「脳内の液体の流れをコントロール」して、睡眠の質を向上させる携帯型のキャップ型デバイスの資金援助を開始した。

 戦場にいる兵士の士気やパフォーマンスを高めるだけでなく、将来的には睡眠障害やアルツハイマー病などの治療にも役立つ可能性を秘めているそうだ。

睡眠中脳内では清掃作業が行われている 私たちの人生の3分の1は睡眠で占められている。それだけ重要な時間でありながら、眠っている間に脳内で何が起きているのか、今も謎が多い。

 だが2012年、ある重要な発見があった。眠っている脳内では、有害な老廃物が脳髄液で洗い流されていることがわかったのだ。眠りとは文字通り、「脳の清掃作業」だったのである。

 この処理システムは、「リンパ系」と「グリア細胞」が関係していることから「グリンパ系」と呼ばれている。そして、その乱れがアルツハイマー病のような神経疾患にも関係していることが明かされてきた。

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携帯型のキャップ型デバイスで睡眠の質を向上 この作用をコントロールすることで、戦場にいる兵士のパフォーマンスを向上できないかと考えたのが、アメリカ国防総省だ。

 こうして戦場に携帯できるキャップ型デバイスの開発を米軍から依頼されたのが、米ライス大学の研究グループだった。


 現時点で想定されているデバイスの構成は、脳のシグナルを検出するセンサー、シグナルを処理するアルゴリズム、脳内の液体の流れを促進する「神経変調デバイス」だ。

 脳シグナルの検出方法としては、「脳波センサー(EEG)」(脳内の電気活動を測定)、「血流センサー(REG)」(血液の流れを測定)、「眼窩超音波センサー(OSG)」(眼窩から伝わる超音波を計測)、「経頭蓋超音波ドップラー(TCD)」(頭蓋骨から伝わる超音波を計測)などが考えられている。

 こうしたシグナルをアルゴリズムが処理して脳の状態を把握。それに応じて「経頭蓋電気刺激(TES)」や「低強度集束超音波パルス(LIFUP)」で脳内の液体の流れをコントロールし、睡眠のクリーニング効果をアップさせる。

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NeuroEngineering Initiative
睡眠障害や神経疾患の治療にも 研究グループによると、脳内の液体を計測・制御できる携帯用デバイスは、戦場の兵士だけでなく、睡眠障害やアルツハイマー病などの神経疾患の治療にも役立つ可能性があるとのこと。

 初年度の助成金額はおよそ3億1000万円。1年後に最初のプロトタイプを提出できるよう開発が進められているそうだ。

References:Brain-cleaning sleeping cap gets US Army funding / written by hiroching / edited by parumo

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