人工細菌を使用することで、レアアースの回収、ウランの検出や排水の浄化など、さまざまな応用が期待できるとのこと。
この研究は『Nano Letters』(21年1月28日付)で発表された。
人間の細胞並の細かさで生きた細菌を3Dプリント ローレンス・リバモア国立研究所で開発された微生物用3Dプリンター「微生物バイオプリンティング・ステレオリソグラフィ装置(SLAM)」は、生きた微生物(細菌)を生体材料樹脂に混ぜ、三次元パターンの「バイオフィルム」を印刷することができる。
その解像度は18ミクロン。人間の細胞並の細かさだ。
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image credit: Illustration by Thomas Reason/LLNL細菌の行動を探れ! こうした3Dプリンターは、各種形状に印刷された細菌がどのように行動するのか調べるうえで役に立つそうだ。
研究グループのウィリアム・ハインズ氏の説明によると、細菌の行動は一見単純に思えて、じつはとても複雑で、「組織の形状」によって影響を受けるのだという。
つまり細菌の集まりの「形」や「組織」で、成長や食事の仕方から、仲間との協力・競争関係、つくり出す分子まで、振る舞いが変わってくるのだ。
SLAMを使えば、細菌の構造パターンを自由自在に、しかも環境を管理しながら印刷できるので、彼らの自然界における機能をより詳しく観察できるようになる。
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幅広い産業への応用に期待 こうした研究は、バイオテクノロジーの発展にとっても重要なことだ。
たとえば、電子を食べる細菌(電気栄養微生物)の作用である「微生物電気合成」を調べれば、余った電力を変換してバイオ燃料などを生産する方法を研究できる。
現時点で、微生物電気合成を利用したシステムは、インターフェースが”二次元構造”であるために性能が限られている。
しかしSLAMで”三次元構造”に印刷した微生物と導電性素材を組み合わせれば、より高性能な微生物電気合成システムをつくることができる。
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また研究グループは、微生物を三次元構造に印刷することで、レアアースの回収率が向上することや、微生物の蛍光が増強すること(ウランセンサーとして応用できる)を確かめている。
バイオフィルムはすでに、「炭化水素の再処理」「クリティカルメタル(重要性が高い金属)の回収」「船に張りついたフジツボの除去」「各種バイオセンサー」など、産業利用が進んでいる。
構造が微生物の行動に与える影響が解明され、彼れらの物理化学的特性を自由に制御できるようになれば、自律的にパターン化され、自己修復機能や検出機能まで持つ「人工生体素材」などというものも開発できるかもしれないそうだ。
References:New Method Developed for 3D Printing Living Microbes To Enhance Biomaterials / written by hiroching / edited by parumo
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