次世代のドラッグは電気刺激?ボタンひとつで昇天できる脳インプラントが数年後に市販化されるかもしれない
 脳に電子デバイスを埋め込む脳インプラントは、様々な疾患の治療や改善に利用されているが、新たに開発中なのは、純粋な快楽のみを目的としたものだ。

 ボタンひとつで、快楽が得られ、多幸感をもたらしてくれるという。
それはSF映画のような、どこかディストピアを連想させるデバイスだが、想像以上に早く市販化されるかもしれない。

 その技術はすでに現実のものになりつつあると、複数の専門家が『Futurism』で解説している。

既に電気刺激で快楽を得ている人は存在する 米ミシガン大が医学のティム・ブランズ氏は、「電気刺激を快楽の為に使う人たちはもういます」と語る。

 ブランズ氏は、電気で神経を刺激して、膀胱を治療する方法を研究している。そうした研究を通じて、ある意外なことに気がついた。

 まったく同じ刺激(膀胱付近や、奇妙なことに足首への刺激)で、性的な快感を感じにくい女性を治療できそうだったのだ。

 こうした技術の安全性や効果が向上すれば、娯楽用の快楽デバイスがごく普通に市販される日は、そう遠くはないと彼は予測する。

 実際、神経を刺激してさまざまな効能を得るデバイスならすでに市販されているという。

 カーネギー・メロン大学のダグラス・ウェーバー氏は、「もうAmazonで神経刺激デバイスが売られていますよ」と語る。

 そうしたものは、体を鍛える・痛みをとる・痩せる・賢くするなど、さまざまな効果を謳っている。ウェーバー氏自身は、そうした謳い文句が本当なのか確かめてはいない。

 それでも、「神経刺激デバイスの開発は進むでしょうし、20年もすれば、本当に効果があるものが出回ることでしょう」と、推測している。


 こうしたデバイスがもたらす快楽には、色々なものがある。電気で筋肉を刺激してマッサージ効果を得るなど、肉体的な快感もあるだろう。

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脳インプラントで更なる快楽が得られる だが、脳インプラントで中枢神経を刺激すれば、それ以上の快楽が得られるという。脳内麻薬「ドーパミン」を放出させ、多幸感を得ることも可能になるという。

 たとえば、ある実験では、うつ病患者に脳インプラントを施し、毎日300回もの電気刺激を与えた。すると患者には数年ぶりに笑顔が戻り、喜びを感じられるようになったという。

 こうしたデバイスは、脳の奥深くに移植されるため、今のところ、かなり重度の症状にしか使われない。だが、いずれ技術が進歩したとき、それが一般消費者向けに販売されないと考える理由はない。

 そして現在の研究動向を鑑みるに、わずか数年後には、その技術を応用した製品が市販されるかもしれないという。

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快楽をテクノロジーで得ることのメリット、デメリット だが、それが可能だからといって、やるべきということにはならない。

 米キンゼー研究所の性心理学者ジャスティン・レミラー氏は、「性テクノロジーが、いずれ性生活にとって代わるか? という大きな疑問にはまだ答えが出ていません」と語る。

 手軽に快楽を得られるデバイスが、何らかの理由で性に問題を抱える人たちにとってメリットがあることは明白だろう。


 だがその一方で、インスタントな快楽装置によって、親密な人間関係にヒビが入ることはないのだろうか?

 人と人とのつながりはとても大切なものだ。だが、ボタンひとつで手軽に快楽を得られるようになれば、人々はつながりを重視しなくなる可能性もある。

 とは言っても、好むと好まざるにかかわらず、この手のデバイスはいずれ普及するだろうという意見もある。ならば、それが現実になる前に、議論しておくことが大切かもしれない。

 良くも悪くも、医療用の技術は別の目的に転用されるものだ。

 ブランズ氏は、それを勃起不全治療薬「バイアグラ」に触れて説明する。この薬は、男性の性的機能不全を治すための薬だが、中には快感を増強するために服用する人がいる。

 それによって必ずしも大惨事になるわけではないが、いずれはそうしたケースも出てくることだろうとブランズ氏は言う。

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 だがそれは杞憂かもしれない。なにしろネズミですら、ヘロインの快楽よりも他者とのつながりを求めるという研究すらあるのだ。

 新しいものは、常に社会から警戒されるものだ。手軽に快感を味わえるデバイスも、それと同じなのかもしれない。


 手に入るのならば、人はそれを手に入れるだろう。だからと言って、それで否応なく人間関係が崩れ去るとは限らない。結局は使う人次第ということなのかもしれない。

References:What Are the Ethics of an Implant That Delivers Pleasure Directly Into Your Brain? / written by hiroching / edited by parumo

追記:(2021/11/25)タイトルを一部訂正して再送します。

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