雪が光る謎の現象がロシアの北極圏で目撃される。その正体は?
 ロシア北西部、北極圏の白海沿岸で、雪の中が青白く光る現象が目撃された。発見したのは微生物学者のヴェラ・エメリアネンコ氏だ。


 雪の上を踏むと光がウインクするかのように点滅する。とても幻想的で美しい光景だ。クリスマス用のライトが埋め込まれているようにも見える。

 その謎を探るべく、エメリアネンコ氏は雪の一部を採取して顕微鏡で調べてみた。ほどなくその正体が明らかとなる。

雪の中から青白い光を放っていたのは小さな海の甲殻類 この日、ヴェラ・エメリアネンコ氏は息子と2匹の犬を連れて自身が務める白海沿岸にある生物調査所から散歩に出かけていた。

 そこで遭遇したのが光る雪だ。雪を踏みつけると青白い光を放つ。犬が走るとその導線が光り出し、とても幻想的で美しい。

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 一同はしばらく雪のイルミネーションを楽しんだ後、エメリアネンコ氏雪の一部を持ち帰り、顕微鏡を使ってその正体を調べることに。

 すると雪をライトアップしていたのは、海洋甲殻類の一種カイアシ類の「Metridia longa」であることがわかった。

 Metridia longaは北極圏、北大西洋、太平洋、および周辺海域に生息し、大きさはメスで4.2ミリ、オスで3.5ミリほど。


 生物発光をし、物理的、電気的、化学的に刺激されると発光する。この光は、頭と腹部の表皮腺から発光酵素「ルシフェリン」を含む分泌物によって与えられる。

Metridia longa

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Metridia longa perceiving and capturing non-motile prey海流に流され、雪に閉じ込められた可能性 Metridia longaは日中は水深90メートルまで潜り、夜間は比較的浅いところまで浮遊してくるそうだが、白海の沿岸には生息していないという。

 おそらく潮の強い流れに巻き込まれ、白海沿岸に流れ着いたのではないかと、ロシア科学アカデミーで北極圏海洋動物プランクトンを研究するクセニア・コソボコワ氏は推測する。

 白海が満潮を迎えると、冷たい海水が岸部の氷や雪の割れ目に流れ込む。この時、Metridia longaも海水といっしょに雪の中に流れ込み、そのまま閉じ込められてしまった可能性があるという。

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生きていた?死んでいた? 今回、偶然にも奇跡の光景を目にすることができたエメリアネンコ氏だが、彼女が務める80年以上の歴史がある生物調査所には光る雪に関する記録はないそうだ。

 雪に閉じ込められたしまったMetridia longaは生きていたのだろうか?エメリアネンコ氏は弱っているが生きていると考えている。

 だが、他の専門家らは死んでいた可能性もあるという。その理由は、生物発光をするカイアシ類は死んだ後も体にルシフェリンがある限り発光するからだそうだ。

 いずれにせよ、歩いた後がライトアップされるとか、自然の神秘はいつだってファンタジー。一度は遭遇してみたいものだ。


References:Scientists observe 'glowing snow' in the Russian Arctic / written by / parumo

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