
光を操作することで、脳の機能を完全にコントロールすることに成功したそうだ。
新たに開発された光誘導システムは、脳内の「ニューロン(神経細胞)」による「神経伝達物質」の放出を制御することができる。
マインドコントロールを連想させるちょっと怖い技術だが、実際には脳機能の究明や、てんかんや筋肉痙攣といった脳に起因する病気の治療などにも役立つと期待されるとのことだ。この研究は『Neuron』に掲載された。
脳の仕組み解明の為に必要な脳内コントロール 光を浴びるだけで記憶を消去できてしまうなど、なんだか不穏な雰囲気があるが、そもそもそんなことが研究されているのは、脳の働きの解明につながるからだ。
脳を深く理解するには、その内部のシグナルを自由に制御する必要がある。そして既存の技術では、それを細胞膜の電位を人工的に変化させるという間接的なアプローチで行っていた。
ところが、このアプローチには欠陥がある。周辺の酸性度までをも変えてしまったり、脳細胞に余計な誤作動を引き起こしたりするのだ。
また「グリア細胞(神経系を構成する神経細胞ではない細胞の総称)」のような膜電位の変化に反応しない細胞に対しては、ちっとも役にも立たない。
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Photo by Natasha Connell on Unsplash
光を使ったブレインコントロール法の開発 そこで韓国の基礎科学研究院(IBS)と韓国科学技術院(KAIST)のグループが開発したのが、「オプト・vトラップ(Opto-vTrap)」というシステムだ。これは光で「シナプス小胞の開口放出」を邪魔することができる。
ニューロンとニューロンが連絡を取る際、その橋渡しをしているのが、両者が接する「シナプス」と呼ばれる部位だ。
片方のニューロンの興奮がシナプスに伝わると、その末端にある「シナプス小胞」が「神経伝達物質」を放出。これがもう一方のシナプスに結びつくことで、ニューロンからニューロンへとシグナルが伝えられる。
オプト・vトラップは、青色光を照射してシナプス小胞をまとめてしまい、神経伝達物質を放出できないようにする。膜電位を利用しないので、グリア細胞などに対しても効果を発揮する。
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青色光を照射すると、小胞がひとまとまりになり、神経伝達物質が放出されなくなる(右図)。青色光を消せば、小胞が散らばり、すぐに元の状態へ戻る(左図)image credit:Institute for Basic Science細胞を傷つけることなく実験が行える 特に重要なのは、オプト・vトラップによる操作は、一時的な効果しかないということだ。
これまでの類似の技術では、シナプス小胞を傷つけてしまい、ニューロンが最大24時間も機能しなくなってしまう。これでは時間に制約のある実験には不向きだ。
ところがオプト・vトラップの場合、シナプス小胞が働かなくなるのはほんの15分程度。1時間もあれば、ニューロンは完全に回復する。
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photo by Pixabay
マウスの恐怖記憶を消去することに成功 これによって神経伝達物質の放出を直接制御できるようになった。つまり脳の機能を自由にコントロールできるということだ。
今回の実験では、培養した細胞や脳組織のスライスでオプト・vトラップの有効性が確認されただけでなく、生きているマウスに植え付けられた恐怖記憶を一時的に消去することにも成功している。
この技術は、複数の脳領域が示す相互作用の解明など、脳科学のさまざまな分野で活躍してくれるだろうとのこと。
また研究だけでなく、てんかんや筋肉の痙攣といった脳に起因する病気の治療や、皮膚組織拡張技術などにも応用できると期待できるそうだ。
References:Schematic diagram of Opto-vTra [IMAGE] | EurekAlert! Science News Releases / written by hiroching / edited by parumo
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新たに開発された光誘導システムは、脳内の「ニューロン(神経細胞)」による「神経伝達物質」の放出を制御することができる。
これを利用することで、マウスの記憶を一時的に消すことができたという。
マインドコントロールを連想させるちょっと怖い技術だが、実際には脳機能の究明や、てんかんや筋肉痙攣といった脳に起因する病気の治療などにも役立つと期待されるとのことだ。この研究は『Neuron』に掲載された。
脳の仕組み解明の為に必要な脳内コントロール 光を浴びるだけで記憶を消去できてしまうなど、なんだか不穏な雰囲気があるが、そもそもそんなことが研究されているのは、脳の働きの解明につながるからだ。
脳を深く理解するには、その内部のシグナルを自由に制御する必要がある。そして既存の技術では、それを細胞膜の電位を人工的に変化させるという間接的なアプローチで行っていた。
ところが、このアプローチには欠陥がある。周辺の酸性度までをも変えてしまったり、脳細胞に余計な誤作動を引き起こしたりするのだ。
また「グリア細胞(神経系を構成する神経細胞ではない細胞の総称)」のような膜電位の変化に反応しない細胞に対しては、ちっとも役にも立たない。
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光を使ったブレインコントロール法の開発 そこで韓国の基礎科学研究院(IBS)と韓国科学技術院(KAIST)のグループが開発したのが、「オプト・vトラップ(Opto-vTrap)」というシステムだ。これは光で「シナプス小胞の開口放出」を邪魔することができる。
ニューロンとニューロンが連絡を取る際、その橋渡しをしているのが、両者が接する「シナプス」と呼ばれる部位だ。
片方のニューロンの興奮がシナプスに伝わると、その末端にある「シナプス小胞」が「神経伝達物質」を放出。これがもう一方のシナプスに結びつくことで、ニューロンからニューロンへとシグナルが伝えられる。
オプト・vトラップは、青色光を照射してシナプス小胞をまとめてしまい、神経伝達物質を放出できないようにする。膜電位を利用しないので、グリア細胞などに対しても効果を発揮する。
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青色光を照射すると、小胞がひとまとまりになり、神経伝達物質が放出されなくなる(右図)。青色光を消せば、小胞が散らばり、すぐに元の状態へ戻る(左図)image credit:Institute for Basic Science細胞を傷つけることなく実験が行える 特に重要なのは、オプト・vトラップによる操作は、一時的な効果しかないということだ。
これまでの類似の技術では、シナプス小胞を傷つけてしまい、ニューロンが最大24時間も機能しなくなってしまう。これでは時間に制約のある実験には不向きだ。
ところがオプト・vトラップの場合、シナプス小胞が働かなくなるのはほんの15分程度。1時間もあれば、ニューロンは完全に回復する。
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マウスの恐怖記憶を消去することに成功 これによって神経伝達物質の放出を直接制御できるようになった。つまり脳の機能を自由にコントロールできるということだ。
今回の実験では、培養した細胞や脳組織のスライスでオプト・vトラップの有効性が確認されただけでなく、生きているマウスに植え付けられた恐怖記憶を一時的に消去することにも成功している。
この技術は、複数の脳領域が示す相互作用の解明など、脳科学のさまざまな分野で活躍してくれるだろうとのこと。
また研究だけでなく、てんかんや筋肉の痙攣といった脳に起因する病気の治療や、皮膚組織拡張技術などにも応用できると期待できるそうだ。
References:Schematic diagram of Opto-vTra [IMAGE] | EurekAlert! Science News Releases / written by hiroching / edited by parumo
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