ファンタジーはここにあった。ロシアの小さな島で、廃墟の家に住みついたホッキョクグマ
 ロシアとアラスカの間に位置する小さな島は、1990年代初頭から放棄された状態となっている。当時建てられた建物には誰も存在しない。
そして今、廃墟となった家は、ホッキョクグマの住処となっている。

 ロシア人写真家がこの島を訪れたところ、家の壊れた窓から顔を出す愛らしいホッキョクグマたちに遭遇した。

 クマが家に住むとか、まるでファンタジーの世界に迷い込んだかのようだ。

小さな島で廃墟の家から顔を出すホッキョクグマ ロシア人野生生物写真家のドミトリー・コフさんは、チュクチ海に浮かぶ小さな島コリュチン島を通過した時、廃墟となった建物の窓から、ホッキョクグマが覗いている姿を目撃した。[画像を見る]  コリュチン島は、ユーラシア大陸の最東端のチュクチ半島の北岸から11kmほどの場所にあり、島の長さは4.5km、最大幅は1.5 kmととても小さい。

 ツンドラに覆われたコリュチン島は、1年のうち9か月間は、島の周りの海は氷で覆われている。

 かつてはコリュチノと呼ばれる小さなチュクチ族の集落があったが1987年の時点で村は消失していた。1934年にソビエトの科学者たちが北極海航路の気象観測所としての極地基地を建設したが、それも閉鎖され、現在は誰も住んでいない。

 当時のままに残された状態の建物を、現在ホッキョクグマが住処代わりに使っているようだ。[画像を見る] まるで自分の家のように、廃墟の家でくつろぐクマたち ドミトリーさんは直接シロクマに近づいたわけではない。静音性の高いドローンを使いながら彼らが怖がらないように撮影した。

 ホッキョクグマのナチュラルな姿を撮影したドミトリーさんは、撮影した写真を自身のウェブサイトに掲載し、このように綴っている。
ロシア北極圏の最も遠く、最も東に位置するこの場所に辿り着くことは非常に困難ですが、忘れられない光景に出会えました。

海岸沿いをセーリングヨットで旅した時、広大な手つかずの風景が広がっていました。また、そこにはうち捨てられた無人の建物があり、様々な野生生物が活気に満ちていました。

予定通りにいかないのは自然の常ですが、最も予期しない時にサプライズをしてくれるのも、また自然の魅力の1つです。

気象観測所の廃棄された建物に住みつくホッキョクグマの姿を撮影できたことは、一生に一度あるかないかの状況でした。
[画像を見る] [画像を見る] [画像を見る]  何頭かは、ドミトリーさんの飛ばすドローンの存在に気付いたそうだが、気にすることなく窓の外を眺めていたという。[画像を見る]  なお、ドミトリーさんが撮影したホッキョクグマの写真の1枚は、ナショナルジオグラフィックが主催する2021年のロシアの写真コンテストで、「人為的環境における野生生物のベストイメージ」賞を受賞したということだ。

written by Scarlet / edited by parumo

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