18分ごとに膨大な電波を放出する未知の天体を発見
 宇宙のスケールで考えれば割と近い、4000光年先で、既知の天体のどれとも一致しない謎の天体が発見されたそうだ。

 謎の天体は、18分18秒ごとに30~60秒の非常に明るい膨大な電波を放つ。
宇宙で観測できる低周波電波としては最大級に明るいパルスで、天文学者が知る天体のどれとも違う。

 その正体としては、「マグネター(中性子星)」や「白色矮星」が挙げられている。仮に前者であるなら、史上初めて観測された「超長周期マグネター」ということになる。

 もしそうなら、同じく謎とされている「高速電波バースト(FRB)」の正体である可能性もあるそうだ。

4000光年先で発見された謎の電波を放出する不気味な天体 謎の天体は、「GLEAM-X J162759.5-523504.3」と名付けられている。

 観測されたのは、2018年のこと。オーストラリア、カーティン大学の天体物理学者ナターシャ・ハーリー・ウォーカー氏によると、「数時間にわたる観測中、現れたり消えたり」したという。

 「天文学者としては気味が悪いです。そんな天体はこれまでに知られていません。しかもそれがすぐ近くにあるんですから。4000光年先というのは、私たちの銀河の裏庭のようなものです。」

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マーチソン広視野アレイから見た銀河。低い周波数は赤、中間の周波数は緑、高い周波数は青で示されている。

★で示したものが謎の天体「GLEAM-X」 / image credit:Dr Natasha Hurley-Walker/ICRAR/Curtin and the GLEAM Team

 宇宙では、定期的・非定期的に脈動する天体は一般的だ。

 たとえば、中性子星の一種である「パルサー」は、高速で回転しながら電波のビームを放つ。すると、ちょうど灯台のように地球を定期的に照らす。だが、通常なら数秒から数ミリ秒といった短い間隔だ。

 だが、西オーストラリア州にある「マーチソン広視野アレイ」から観測されたGLEAM-Xは違う。もっと長い周期で脈動していたのだ。

 電波的には非常に明るいが、太陽よりも小さい。また電波は大きく偏光しており、とんでもなく強い磁場があるらしいことが窺える。

GLEAM-Xの発する電波のイメージ映像

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謎の天体の正体は? このことは、この天体が長い周期で回転する「超長周期のマグネター」である可能性を示唆している。

 マグネターもまたパルサーの一種だが、極端に強い磁場が特徴だ。質量の大きな星が崩壊して残された死んだ核で、太陽の2.3倍の質量が直径20キロの球状のわずかな範囲に詰め込まれている。

 その磁場は普通の中性子星の1000倍。
地球との比較なら1000兆倍もある。そんなものがどのようにして形成されるのか不明だが、パルサーから進化した可能性はある。

 もしもGLEAM-Xが超長周期マグネターなのだとすれば、時間が経つうちに自転速度が減速したのかもしれない。しかし、これまで超長周期マグネターは検出不可能ともされてきた。

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高速電波バーストの正体である可能性も じつはこれは高速電波バースト(FRB)の正体であるとも考えられる。前触れもなく凄まじいエネルギーを放出するFRBの正体について、マグネターではないかという説がある(関連記事)。

 だが、これまでFRBが観測されてきた場所は、若いマグネターがあるはずのない場所であった。しかし超長周期マグネターならばこの矛盾をうまく説明してくれるかもしれない。

 別の可能性としては、「白色矮星」がGLEAM-Xの正体とも考えられるが、今のところは超長期マグネターであると考えた方が整合的であるようだ。

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地球から見た天の川で★で示したものがGLEAM-X / image credit:Dr Natasha Hurley-Walker/ICRAR/Curtin and the GLEAM Team引き続き観察が必要 なお、マーチソン広視野アレイはこれまで8年間宇宙を見つめてきたが、GLEAM-Xを観測できたのはたったの2ヶ月間だけだ。

 その原因は、電波望遠鏡の検出閾値から外れている、天体が異常なバーストを起こしたなど、色々考えられるという。

 はたして今後GLEAM-Xは再び観察されるのか? それはわからないが、いずれにせよ研究グループは引き続き観測を続ける予定であるという。
別の波長を調べたり、ほかにも似たような天体がないか探してみるのも、1つのアイデアだという。

 「もっと検出が増えれば、たった1度きりの珍しい現象だったのか、それともこれまで気づかなかった膨大な数の新しいグループなのかわかるでしょう」とハーリー・ウォーカー氏は言う。

 この研究は『Nature』(2022年1月26日付)に掲載された。

References:Mysterious object unlike anything astronomers have seen before - ICRAR / written by hiroching / edited by parumo

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