人工子宮で胎児を育てるAIロボット乳母が開発される。女性の胎内で育てる必要がなくなる?
 中国の研究グループが、人間の胎児の世話をする人工知能システム「AIナニー(乳母)」を開発したそうだ。

 AI乳母は、人工子宮におさめられた胚が胎児に成長するまで面倒を見ることができ、既にマウスをはじめ、すでにさまざまな動物の胚を世話をしているという。


人工知能が胚から胎児を育てる AIナニー(乳母)を開発したのは、中国科学院傘下にある蘇州医用生体工学研究所のグループだ。

 同グループは、『Journal of Biomedical Engineering』(2021年11月16日付)で、「AIナニーにおける、胚の長期培養のためのオンライン監視システム」について詳しく説明している。

 それによると、同システムは理論上、実験室での胎児の育成を可能にするという。もはや女性が妊娠する必要はなくなるのだ。

 研究グループは、従来の出産よりも安全だとすら主張している。

 とは言っても、このシステムで胎児の出産までこなせるのかどうかは不明だし、そもそも2週を過ぎた人間の胚を研究に用いることは国際法で禁じられている。

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現在マウスの胚を育成中 論文によると、AIナニーの人工子宮は、栄養価の高い溶液入りのキューブを並べた容器で、今現在その中で多数のマウスの胚を育てているという。

 AIナニーは、胚をモニタリングして変化を検出し、それに応じて人工子宮内の環境を調整できる。万が一、胚の発達に異常があったり、死んでしまった場合は、警報を発してそれを知らせる。

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利便性と倫理問題というジレンマ 人工子宮の技術は近年急速に発展している。2017年、アメリカ・フィラデルフィア小児病院の研究チームは、人工子宮の中で早産のヒツジを正常に発育させることに成功している。

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Artificial womb might one day help premature babies

 中国ではかつての出産制限のつけがまわり、急速に人口減少が進んでいる。
そこに新型コロナが追い打ちをかけ、2021年には1950年以降で最少の出生率となった。

 現在、中国では代理出産が法律で禁じられており、人工子宮の技術が確立されれば、病院を代理親にすることになる。

 首都児科研究所に所属する匿名の研究者は、メディアに対して次のように語っている。
この技術に問題があるとは思いませんが、病院を赤ちゃんの大量生産工場に変えてしまうリスクがある。そんな責任を負いたい病院なんてないでしょう
人工子宮で胚から子供を育て産むことは人口を維持するのに役立つかもしれない。子供が欲しくても授かれなかった夫婦にとっても魅力的な技術だ。

 ただし、こうした技術には倫理的問題がつきまとう。

 すべての子が皆人工子宮で生まれるのであれば別だが、人間の子宮から生まれる子と、人工子宮から生まれる子が混在した場合大きな問題となる。社会的混乱や心理的影響は避けられないだろう。

References:Design and experiment of online monitoring system for long-term culture of embryo_Journal of Biomedical Engineering_The only official website / Chinese Scientists Create System to Care For Embryos in Artificial Womb / written by hiroching / edited by parumo

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