伝説のUMA「シーサーペント」の正体はクジラのいちもつだったという説
 船乗りの生活は過酷だ。天候、海、そして海の怪物にも対峙しなくてはならない。かつての船乗りたちの間で恐れられていた怪物がいた。

 細長く巨大な体を持つ「シーサーペント」である。目撃例は中世以降多数存在し、それが描かれた世界地図や絵画も存在する。

 だが、その正体は意外な物だった可能性があるという。ある研究者によると、それはクジラの”いちもつ”との見間違いだというのだ。果たして本当なのだろうか?

18世紀のもっとも有名なシーサーペント目撃例 もっとも有名なシーサーペントの目撃例のひとつは、デンマークのルター派宣教師ハンス・エゲデが1734年7月6日に船上で見たという恐ろしい光景だ。

 これまで誰も見たことのないような"非常に恐ろしい生き物"と書いている。エゲデが報告した海獣は、船の全長よりも大きかったという。
それは、長く尖った鼻を持ち、クジラのように水を吹き出していた。大きなヒレがあり、体は甲羅のようなもので覆われ、皮膚にはシワがより、凹凸があった。

それはヘビのような姿をしていて、水中に潜ったかとおもうと、船と同じくらいの長さの体を後ろにのけぞらせて尾を振り上げた
 エゲデの説明は注目に値する。彼は教養人だったし、これまでにも遭遇したクジラを何度か描写していた。

 さまざまなものを目撃してきているので、そう簡単に驚くようなことはないはずだ。では、エガデたちは、実際にいったいなにを見たのだろうか?

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エゲデが描いた大海獣の銅版画。博物学者ウィリアム・ジャーディンの博物学書シリーズ「The Naturalist's Library」より。ハンス・エゲデが、1934年7月6日、船がグリーンランド海岸沖にいたとき、"これまで誰も見たことのないような、非常に恐ろしい生き物を見た"と書いている。シーサーペントの正体はクジラのいちもつ説が浮上 3人の研究者が、その問いに答えを出そうとした。

 2002年、チャールズ・パクストンは、イギリスで人間に求愛しようとする好色なダチョウの生態を研究して、イグノーベル賞を受賞している。

 パクストンのクジラ研究は2005年に行われ、研究者たちは目撃されたシーサーペントの描写に当てはまるような、すべてのもっともらしい行為を検討してみた。キーとなったのは、"ヘビのような"という描写だ。
クジラの中には、例えば一部のコククジラのように、尾びれをもたないものもいる。ヘビやウナギのような体は、体全体を水中から高くもち上げるために必要な急激な推進力とは必ずしも関係がない(パクストン)
 どうやら、海のモンスターの正体はクジラそのものではないようだが、クジラの"一部"は、その可能性があるという。
"ヘビのような尾"の説明はまだある。巨大なヒゲクジラの多くは、ヘビのような長いペニスを持っている。クジラが仰向けになっていたら、腹が上になり、そのときに勃起していたとしたら、普段は引っ込んでいるペニスが見えてもおかしくない
船乗りが謎めいたシーサーペントだと勘違いしたのがクジラのペニスとは、笑えるね。
サイズ的にはどうなのか? 思わず引き込まれる説だが、その"サイズ"については、議論の余地がある。クジラのペニスは確かに巨大だが、果たして船よりも大きかったのだろうか?

 研究者たちは、その答えはノーだと考えているが、一頭だけでなく、複数のクジラがいたとも考えられる。
タイセイヨウセミクジラや太平洋のコククジラは、それぞれ少なくとも1.8メートル、1.7メートルくらいのペニスを持っている。

それを、目撃者が尾だと見間違えた可能性はある。尾が胴体から船一隻分ほど離れているところで目撃されていることから、複数のオスのクジラがいたのではないかとも思われる
 クジラの大きくなったいちもつだという説がかなり説得力のあるものなら、1875年の別の目撃例もそうだった可能性が高い。

 商船ポーリーン号の乗組員たちが、興奮して騒いでいるマッコウクジラの群れの中に"白っぽい柱"を見たと報告していて、これはまさに、クジラのいちもつ説の描写と合致する。
1875年、ポーリーン号の乗組員たちが、シーサーペントがクジラの群れを襲っていると思われる場面を目撃した。

彼らがなにを見たのかは定かではないが、その描写は繁殖の準備万端のマッコウクジラの様子を映したBBCの映像を思い起こさせる。
 BBCの映像とは以下のものだ。

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The Sperm Whale Prepares To Breed | Attenborough | Life of Mammals | BBC Earth

 すべてのシーサーペント目撃例がクジラのいちもつだったというわけではないだろうが、シーサーペントだと言われているもののいくつかが、クジラの尻にくっついていたというのは、もっともらしい話だ。

 エゲデが見たものは本当はなんだったのか、結局はわからないかもしれない。すべてのシーサーペント目撃例が、クジラのペニスだったというわけではないだろう。

 だが、かなり頻繁に起こっているようで、クジラの近くにシーサーペントが現われることは珍しくなく、クジラにくっついたり、格闘したりすることもあるのかもしれない。

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image credit:public domain/wikimedia

 ネッシーの正体もクジラのいちもつだという説もあるが、ネッシーは湖に生息しているので、クジラはいないという点で、この説には大きな穴がある。

 だが、それ以外のたくさんのシーサーペント目撃例は、実はクジラのいちもつだったという可能性もありそうだ。

 あとよく言われているのは、リュウグウノツカイ説だけど、そっちの方が信憑性ありそうじゃない?でも、面白さでいったら、クジラのいちもつなのかな?

References:A lot of "sea serpent sightings" could actually be whale boners / written by konohazuku / edited by parumo

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