
死後に残されたDNAから絶滅した動物を復活させるなど、かつては『ジュラシックパーク』のようなSF映画の中での出来事でしかなかった。
しかし遺伝子編集技術とクローン技術が急速に発展している現在、絶滅種のクローン作成はただの夢物語ではなくなった。
このほど、DNA Zooの研究者がオーストラリアの固有種「フクロアリクイ」の3Dゲノムマップを初公開した。
その最終的な目標は、1936年に絶滅してしまった「タスマニアタイガー(フクロオオカミ)」を復活させることだ。
フクロアリクイとタスマニアタイガー(フクロオオカミ)は非常に近い存在なので、科学者たちの願いが叶うかもしれないという。
絶滅したタスマニアタイガー(フクロオオカミ) 虎のような背中の模様から、タスマニアタイガーとも呼ばれるフクロオオカミは、400万年前に出現したと言われている。有袋類でありながら、北半球に生息するイヌ科の種と様々な類似点を持っていることから、収斂進化の代表例として取り上げられることが多い。
オーストラリア大陸やニューギニア島に広く生息していたが、人類の到来と共に個体数をどんどん減らしていき、1936年に絶滅してしまった。
デジタルでカラー化したタスマニアタイガー(フクロオオカミ)の在りし日の姿
[動画を見る]
Tasmanian Tiger in Colour共通祖先を持つフクロアリクイが復活の鍵に フクロオオカミの1世紀前の標本は博物館に残されており、科学者らはこれを利用してゲノム解析を行っていた。
それが最初に発表されたのは2018年のこと。しかし博物館の標本はDNAの保存状態が悪く、重要な部分が欠けた断片的な解析結果しか得られなかった。
もしもフクロオオカミを復活させるなら、欠けたパズルのピースを埋めなければならない。そこで注目されたのが、その近縁種フクロアリクイだった。
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photo by iStock
西オーストラリアに生息する動物のシンボルであるフクロアリクイは、フクロオオカミに非常に近い動物だ。
両者は3500万~4100万年前に共通の祖先から枝分かれした。進化の歴史から見ればそれは比較的最近のことで、謎めいた縞模様だけでなく、DNAの95%までが同じであると考えられる。
だからフクロアリクイの全ゲノムの解明は、フクロオオカミのDNAの全貌解明にもつながる。それはカリスマ的な絶滅種復活へ向けた大きな一歩である。
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image credit:DNA Zoo/UWA
最新の遺伝子編集とクローン技術の発達で復活も夢ではない フクロオオカミのゲノムを完全に解明し、そこからクローンを誕生させるまでには、まだまだ大きな難関を越えねばならない。それでも、遺伝子編集ツール「CRISPR」のおかげで、それは現実的な目標だ。
CRISPRはいわば”分子のハサミ”のようなもので、特定のDNAを特定の部分に正確に挿入することができる。
これを使ってフクロオオカミのゲノムを修復し、核を取り除いた卵細胞に移植する。うまくいけば修復されたDNAが新しい設計図となり、オリジナルのクローンが誕生する。それは絶滅したフクロオオカミと同じ生物(少なくともそれに限りなく近い)だ。
イギリスの研究者が羊で世界初の哺乳類クローン「ドリー」を誕生させたのは1996年のことだ。2017年には、中国の研究者が同じ手法で遺伝的にまったく同じ2匹のオナガザルを誕生させた。
さらに現在アメリカでは、アジアゾウから1万年前に絶滅したマンモスを復活させようという動きがある。
DNA Zooの研究者によれば、フクロオオカミの復活はマンモスの復活よりも難しいことであるそうだが、フクロアリクイのゲノムマップのおかげでその可能性はより現実的なものになったという。
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The thylacine Tasmanian tiger Tasmanian wolf.ogv絶滅種の復活は生態系にどのような影響をもたらすのか? もし、フクロオオカミを復活させることができたら、それを野生に返すことが次の目標になるだろう。
幸いにも、フクロオオカミが生きるための環境はきちんと残されている。タスマニアの半分は保護区に指定されており、彼らが暮らす場所も食べる動物も十分にあるのだ。
そして、それにはただ研究者の好奇心を満たす以上の意味がある。
肉食動物として食物連鎖の頂点に位置するフクロオオカミは、現在危機に瀕している生態系を安定させる役割を担ってくれると期待できるからだ。
遺伝学や発生学の進展は、絶滅した動物の復活すら現実的なものにしている。
もしも本当にフクロオオカミが復活したとしたら、そのとき我々は彼らを以前よりずっと大切にするのだろうか? それとも取り戻せることがわかって、興味を失うのだろうか?
References:We've decoded the numbat genome – and it could bring the thylacine's resurrection a step closer / written by hiroching / edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
しかし遺伝子編集技術とクローン技術が急速に発展している現在、絶滅種のクローン作成はただの夢物語ではなくなった。
このほど、DNA Zooの研究者がオーストラリアの固有種「フクロアリクイ」の3Dゲノムマップを初公開した。
その最終的な目標は、1936年に絶滅してしまった「タスマニアタイガー(フクロオオカミ)」を復活させることだ。
フクロアリクイとタスマニアタイガー(フクロオオカミ)は非常に近い存在なので、科学者たちの願いが叶うかもしれないという。
絶滅したタスマニアタイガー(フクロオオカミ) 虎のような背中の模様から、タスマニアタイガーとも呼ばれるフクロオオカミは、400万年前に出現したと言われている。有袋類でありながら、北半球に生息するイヌ科の種と様々な類似点を持っていることから、収斂進化の代表例として取り上げられることが多い。
オーストラリア大陸やニューギニア島に広く生息していたが、人類の到来と共に個体数をどんどん減らしていき、1936年に絶滅してしまった。
デジタルでカラー化したタスマニアタイガー(フクロオオカミ)の在りし日の姿
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Tasmanian Tiger in Colour共通祖先を持つフクロアリクイが復活の鍵に フクロオオカミの1世紀前の標本は博物館に残されており、科学者らはこれを利用してゲノム解析を行っていた。
それが最初に発表されたのは2018年のこと。しかし博物館の標本はDNAの保存状態が悪く、重要な部分が欠けた断片的な解析結果しか得られなかった。
もしもフクロオオカミを復活させるなら、欠けたパズルのピースを埋めなければならない。そこで注目されたのが、その近縁種フクロアリクイだった。
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西オーストラリアに生息する動物のシンボルであるフクロアリクイは、フクロオオカミに非常に近い動物だ。
両者は3500万~4100万年前に共通の祖先から枝分かれした。進化の歴史から見ればそれは比較的最近のことで、謎めいた縞模様だけでなく、DNAの95%までが同じであると考えられる。
だからフクロアリクイの全ゲノムの解明は、フクロオオカミのDNAの全貌解明にもつながる。それはカリスマ的な絶滅種復活へ向けた大きな一歩である。
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image credit:DNA Zoo/UWA
最新の遺伝子編集とクローン技術の発達で復活も夢ではない フクロオオカミのゲノムを完全に解明し、そこからクローンを誕生させるまでには、まだまだ大きな難関を越えねばならない。それでも、遺伝子編集ツール「CRISPR」のおかげで、それは現実的な目標だ。
CRISPRはいわば”分子のハサミ”のようなもので、特定のDNAを特定の部分に正確に挿入することができる。
これを使ってフクロオオカミのゲノムを修復し、核を取り除いた卵細胞に移植する。うまくいけば修復されたDNAが新しい設計図となり、オリジナルのクローンが誕生する。それは絶滅したフクロオオカミと同じ生物(少なくともそれに限りなく近い)だ。
イギリスの研究者が羊で世界初の哺乳類クローン「ドリー」を誕生させたのは1996年のことだ。2017年には、中国の研究者が同じ手法で遺伝的にまったく同じ2匹のオナガザルを誕生させた。
さらに現在アメリカでは、アジアゾウから1万年前に絶滅したマンモスを復活させようという動きがある。
DNA Zooの研究者によれば、フクロオオカミの復活はマンモスの復活よりも難しいことであるそうだが、フクロアリクイのゲノムマップのおかげでその可能性はより現実的なものになったという。
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The thylacine Tasmanian tiger Tasmanian wolf.ogv絶滅種の復活は生態系にどのような影響をもたらすのか? もし、フクロオオカミを復活させることができたら、それを野生に返すことが次の目標になるだろう。
幸いにも、フクロオオカミが生きるための環境はきちんと残されている。タスマニアの半分は保護区に指定されており、彼らが暮らす場所も食べる動物も十分にあるのだ。
そして、それにはただ研究者の好奇心を満たす以上の意味がある。
肉食動物として食物連鎖の頂点に位置するフクロオオカミは、現在危機に瀕している生態系を安定させる役割を担ってくれると期待できるからだ。
遺伝学や発生学の進展は、絶滅した動物の復活すら現実的なものにしている。
もしも本当にフクロオオカミが復活したとしたら、そのとき我々は彼らを以前よりずっと大切にするのだろうか? それとも取り戻せることがわかって、興味を失うのだろうか?
References:We've decoded the numbat genome – and it could bring the thylacine's resurrection a step closer / written by hiroching / edited by parumo
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