
その謎とは、かつてのオフィスに置かれた黒板だ。
これは1980年にホーキング博士が開催した超空間と超重力についての会議で使われたもので、博士は生涯それを大切にしていたという。だが、そこに描かれているものが何を意味しているのか、その全貌は解明されていない。
だが、それもまもなく解き明かされるかもしれない。現在、ロンドン科学博物館で、その黒板が展示されているのだ。
ロンドン科学博物館で開催中のホーキング展 ロンドン科学博物館で開催中の『Stephen Hawking at Work』では、ホーキング博士が残した謎めいた黒板が現在展示中だ。
ホーキング博士のオフィスのキュレーター、ファン=アンドレス・レオン氏は、1980年の会議に出席した人々が、この黒板でホーキング博士に何を伝えられたのか、彼らの解釈を聞き出したいとコメントしている。
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image credit:(Isidora Bojovic/Science Museum Group
今回のホーキング展では、他にも、1966年の博士論文、彼が乗っていた車椅子、ザ・シンプソンズの作者から贈られたジャケット(博士は同作品に何度も出演している)など、数多くの貴重な品々が展示されている。
理論物理学者だったホーキング博士が普段どのような生活を送っていたのか、一般人にはなかなか想像が及ばないところだ。だがオフィスに置かれていた遺品からは、博士のユニークさが垣間見えると、レオン氏は話す。
「オフィスに残されたたくさんの資料は、ただの物などではないことがわかるでしょう。それらにはホーキング博士をユニークな存在にしたものが反映されています」
展示会でお目にかかれるのは、昨年の夏以降に整理されてきた700点以上の品々のほんの一部に過ぎない。
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image credit:Sarah Lee via Science Museum Group
ホーキング博士が語った宇宙 ホーキング博士が一躍有名人になったのは、『ホーキング、宇宙を語る』が出版された1988年のことだが、すでにそれ以前に重要な業績を残している。
たとえば彼は、博士論文のテーマとしてブラックホールが形成されるプロセスを取り上げ、それを逆転させるという大胆な考察を行っている。ここからは宇宙は時空の一点から爆発して誕生したに違いないことが示されている。
さらにその後の研究では、ブラックホールはそれほど黒くはなく、完全に蒸発して消えてしまうまでは宇宙に熱的な放出(ホーキング放射)をすることも示した。
「ホーキング博士は、ブラックホールを道具として使い、より大きなものを理解しようとしました」と、レオン氏は話す。
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遊び心いっぱいで、壮大な比喩が得意の物理学者 ホーキング展には、ガラス製のリンゴも展示される。
これはインテルの研究者からの贈り物で、ホーキング博士が務めていたルーカス教授職(ケンブリッジ大学の数学関連の地位)の前任者に、かのニュートンもいることにちなんだものだ。
このリンゴにはビッグバンの名残である「宇宙マイクロ波背景放射」をイメージした彩色が施されている。
ホーキング博士は、宇宙マイクロ波背景放射の小さな揺らぎを「創造の指紋」と表現している。この初期宇宙の不規則性がのちに星々や銀河を形成することになったからだ。
博士はこのような壮大な比喩が得意で、出版社や読者を大いに喜ばせた。
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そんな才能あふれるホーキング博士だが、レオン氏は決してその実像を誇張するつもりはないという。
レオン氏が伝えたいのは、ホーキング博士の物理学者としてのセンスだけでなく、ユーモアやウィットに富んだ部分なのだという。
宇宙の謎に挑んだ偉大な物理学者の展示会といえば、重厚なオーケストラと渦巻く銀河で演出された荘厳なものを想像するかもしれない。だがが、レオン氏の狙いは遊び心あるものにすることだったそうだ。
「彼は物事を深刻に受け止めませんでした。遊び心いっぱいでなければ、これほど有名にはならなかったと思いますよ」
そんなホーキング博士の展示会『Stephen Hawking at Work』は、ロンドン科学博物館で6月12日まで開催されている。その後マンチェスターをはじめとする各都市でも開催されるとのこと。ぜひとも日本でも開催してもらいたいところだ。
References:Stephen Hawking at Work | Science Museum / Stephen Hawking exhibition hopes to unravel the mysteries of his blackboard | Physics | The Guardian / written by hiroching / edited by parumo
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