古代エジプトのミイラ作りの材料が大量に発見される
 古代エジプトで行われていた防腐処理、ミイラ化のための材料や遺物が、カイロ近郊サッカラ北部のアブシール墓地で発見された。かなり大きな埋葬用竪穴群の中に大量に納められていたという。


 アブシール墓地は、エジプトの古王国時代にさかのぼる巨大な共同墓地で、同じエリアにはピラミッド、神殿、マスタバ(古代エジプトのレンガ造りの墳墓)もある。

 今回の発見があったのは、アブシール・ウェストと言われる、第26王朝時代(紀元前664~525年)にさかのぼる比較的新しいエリアで、チェコのエジプト学研究所が発見した。

ミイラを作る材料が入った陶器が370個 考古最高評議会の事務総長モスタファ・ワジリによると、発見場所は深さ14メートル、5.3×5.3メートルの広さの巨大な竪穴で、そこからミイラ化プロセスで使う材料の名残が入った大きな陶器が370個も出てきたという。

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アブシール墓地の深い竪穴のひとつ。ここからミイラ化に使う材料が入った容器が見つかった / image credit:Egyptian Antiquities Authority ミイラ化作業の必需品 第一王朝以前は、エジプトの砂漠の乾燥した気候を利用して、自然にまかせてミイラを作っていた。

 だがまもなく、エジプト人たちは、死者のあの世への旅を確実なものにするため、人工的に遺体をミイラにする防腐処理を施し始めた。

 当時のエジプトでは、魂であるカーは、死と共にいったん肉体を離れるが、冥府の神オシリスの神々しい楽園で再び肉体と一緒になると信じられていた。

 肉体をきちんと保存しないと、魂と一緒になることはできず、楽園に入る権利を失ってしまうという。

 何世紀もの時間をかけて、死後の世界へ移行するミイラ化のプロセスと儀式は完成されていった。

 脳が重要だとみなされたかどうかは不明だが、なんらかの方法で脳が溶かされ、頭蓋骨から掻き出されたことはわかっている。

 その他の臓器は重要なので、保存しなければならないと考えられていた。おもしろいのは、心臓が思考を司る臓器だと信じられていたことで、そのせいで、脳の価値が低くなったのかもしれない。


 すべての臓器は、塩やナトロンで保存処理をされ、カノープスの壺の中に入れられて遺体のそばに一緒に埋葬された。だが、心臓はたいてい体内に残された。

 このたびの発掘では、こうしたカノープスの壺が4つ見つかっている。発見当時、石灰石でできた壺は空だったが、象形文字で壺の主の名前がWahe lq Raと記されていた。

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アブシール墓地で見つかったカノープス壺 / image credit: Egyptian Antiquities Authorityアブシール墓地に埋葬された人々 墓の主のことは、名前しかわかっていないが、近くの墓も何年もかかって発掘されている。そのひとつは、第26王朝末期から第27王朝始めの軍司令官メネキブネカウの墓だ。

 ほかにも、王の知人パディホル、神官イウファ、外国人傭兵の監督者ウジャホレスネトの墓もあった。このエリアは王族ではなく、それなりの重要人物の墓が集中しているのがわかる。

 アブシールの遺跡には、14のピラミッドもあり、これらは当然のことながら、王族の墳墓だ。最近発見された墓よりもかなり早い時期の第5王朝(紀元前24~25世紀)頃に建造されている。

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アブシール遺跡のニウセルラー・イニとネフェリルカラーのピラミッド
/ image credit:Chanel Wheeler / WIKI commons壺の中の材料の成分はこれから行われる予定 陶器の壺の中から見つかった材料の成分は、まだはっきり特定できていない。遺体を保存するのに、多くの材料が配合されただろうが、基本は塩とナトロンだ。


 また、薬草と花が腐敗臭をごまかすために使われた。壺の中身を詳しく分析するため、さらに研究が進められる予定だ。

 チェコの研究チームのムハンマド・ムジャヒド博士は、この地域の発掘調査は2022年も引き続き行われると断言している。

 研究チームヘッドのミロスラフ・バルタは、この発掘は、古代エジプト社会がエジプト人独自のアイデンティティを守るため、新たな方法を模索していた時代の古代遺物を発掘する長期プロジェクトの一環だとしている。

References:Stack of Mummification Materials Found In Abusir Tomb | Ancient Origins / written by konohazuku / edited by parumo

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