ロシアで宇宙実験カプセルに隔離されているNASAのクルーたちはウクライナのことを知っているのか?
 現在ロシアにいるアメリカ人は国外退避を続けているが、モスクワでは共同実験に参加していたNASAのアメリカ人技師2名がカプセルに閉じ込められたままであるそうだ。

 これは「SIRIUS-21」という、ロシア科学アカデミー生物医学研究所(IBMP)とNASAが共同で行っている長期隔離実験で、メンバーは宇宙のミッション環境を想定した実験モジュール内で外部から隔離されたまま8ヶ月間生活を行うというもの。


 NASAのアメリカ人技師のウィリアム・ブラウン氏とアシュレー・コワルスキ氏はそのメンバーで、現在ロシア人3人と、アラブ1人と共に、モジュール内で暮らしている。

 彼らがモジュールに入居したのは昨年11月のこと。実験終了は今年7月が予定されており、それまでは出ることができない。

 彼らは今、ウクライナでの出来事を知っているのだろうか?そして今、連絡を取ることはできているのだろうか?

ロシアでカプセルに隔離された状態の6人のクルー「SIRIUS-21」実験では、見知らぬ6人が共同生活を送りながら、模擬宇宙船施設に閉じこもり、月まで飛行して周囲を1周し、地球に帰還するために必要な条件を240日でシミュレートしている。

 彼らの外部との唯一の連絡手段は、サーバーにアップロードされるメールだけだ。NASAによると、メンバーは毎日ニュースを読めるため、ウクライナ侵攻についてはきちんと把握しているはずだという。

 しかしカプセル内にいる、NASAのアメリカ人技師、ウィリアム・ブラウン氏の友人とされる人物が最後に彼と連絡を取ったのは、ウクライナ侵攻開始前のことだ。モジュール内のメンバーが外部の状況をどの程度把握しているのか懸念されるという。

 NASAによれば、チームとの通信は途絶えていないそうだが、その友人は実際にメールが彼らに届いているのかどうか確信が持てないと語っている。[画像を見る]
SIRIUS 21実験に参加中のメンバー、アメリカ人のウィリアム・ブラウン(前列左)とアシュリー・コワルスキ(後列中央)、ロシア人のレグ・ブリノフ(前列中央)、ビクトリア・キリシェンコ(後列左)、エカテリーナ・カリアキナ(後列右)、アラブ首長国連合のサレフ・アル・アメリ(前列右)
 バイデン政権は、ロシア機のアメリカ領空乗り入れを禁止し、旅客機でさえアメリカへ飛べない事態になってしまった。

 ロシア側がアメリカ機に対して領空を閉ざすかどうかは不明だが、仮にそうなれば、アメリカ人がロシア国外に脱出することは一層困難になる。

 米国務省はロシア国内にいるアメリカ人に対し避難を呼びかけているが、NASAの広報担当者によると、今回のミッションは継続される予定であるとのこと。


 ただし、2月27以日以前に勧告された内容について実験メンバーが知っているかどうかは不明だ。

[動画を見る]

ウクライナ侵攻以降、メンバーとの連絡が途絶えた 土曜日、米国務省は、ロシア国内にいる全アメリカ人に直ちに国外に退避するよう勧告した。

 こうした状況の中、ブラウン氏の友人であるという写真家のネイサン・クレーン氏は、ウクライナ侵攻が始まって以降、彼からの連絡が途絶えたと語っている。
先週ウクライナについて彼と連絡を取りました。彼は戦争が起きそうだと認識していましたが、今現在どのくらい状況を把握しているのかわかりません。

最後のメール以降、彼から連絡がありません。ウクライナの惨事を悟られないようロシア側がメールを止めているのではと疑っています。あくまで個人的な意見です
 クレーン氏は、実験を中止し、まだ飛行機が利用できるうちにメンバーを国外退避させるべきと考えている。
NASAもプログラムも政治的に中立でいようとしているのはわかります。それでもプログラムは中止されるでしょう。何が起きてもおかしくない
カプセルに隔離されている彼らは今 実験メンバーのコワルスキ氏(32)は以前、カリフォルニアのエアロスペース・コーポレーションに勤務していた人物で、ブラウン氏(36)は軍・防衛契約・ヘルスケアコンサルティング・ソフトウェアエンジニアリング・ロジスティクスのスペシャリストだ。

 実験モジュールにはアメリカ人以外にも、ロシアのオレグ・ブリノフ司令官、ヴィクトリア・キリチェンコ氏、エカテリーナ・カリアキナ氏、アラブ首長国連合のサレフ・アル・アメリ氏が暮らしている。


 参加者は全員、NASAとIMBP(ロシア科学アカデミー生物医学研究所)が共同で行った審査によって選ばれた優秀な人材だ。

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image credit:kowalskinat0r / Instagram

 ウクライナ侵攻以前、IMBPのSNSは頻繁にカプセル内の様子を伝えていた。

 感謝祭、クリスマス、お正月などの祝日には、メンバーにシェフが腕によりをかけたご馳走が振る舞われ、その和気あいあいとした様子が世界中に伝えられた。[画像を見る]  現在メンバーのSNSアカウントは、家族や友人によって運営されているという。

 「SIRIUS-21」はこのまま、実験終了となる今年7月まで続行されるのだろうか?それともプログラムは中止となるのか?

 そもそも今、実験は行われているのだろうか?いろいろ気がかりだ。

References:NASA volunteers living in a sealed capsule in Russia could be unaware of Ukraine war | Daily Mail Online / written by hiroching / edited by parumo

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