
いつもはなんの変哲もない魚で、むしろ地味なくらい。が、いざ縄張り争いとなると大きな口をガバっと開き「キシャーッ!!」なんて効果音がぴったりの異世界めいた姿にチェンジする。
口のサイズがすべてな世界を生きる奇魚サーカスティック フリンジヘッドの変わりっぷりにズームインだ。
タコや同種と縄張り争いするサーカスティック・フリンジヘッド
[動画を見る]
Sarcastic Fringehead Fights For Territory | Life | BBC Earth巨大な口が特徴的なエイリアンフィッシュ サーカスティック・フリンジヘッド(英名:Sarcastic fringehead、学名:Neoclinus blanchardi)はスズキ目 コケギンポ科コケギンポ属の魚。体長最長30センチほどで大きな口と長くて平らな体が特徴だ。
主にアメリカのカリフォルニア州からメキシコのバハ・カリフォルニア州の温帯海域で深さ3~73メートルの範囲で生息する。
たいてい海底の巣穴にたむろしてるが、貝殻や捨てられたペットボトルに住み着いてることもある。
[画像を見る]
photo by iStock
とここまでは一見地味なサーカスティック・フリンジヘッドだが、ひとたび縄張り争いとなると見た目が一変。
大きな口をガバっと開き、個性的な壮絶バトルを繰り広げることで有名なのだ。口を開けると悪夢生物!デモゴルゴン似という声も サーカスティック・フリンジヘッドの頬は伸縮性がある膜状で、それが横長の顎につながっている。舌は紫色で歯は2列あり、口の周りに蛍光の黄色い縁取りがある。
普段見えないその口が、縄張りを巡るバトルとなるとガバっと開き、悪夢生物めいた様相を呈するのだ。
脳裏に焼きつくその姿については、アメリカのSFホラードラマ「ストレンジャー・シングス」の異世界クリーチャー「デモゴルゴン」の魚類バージョンとみなす者もいるもよう。
[画像を見る]
激しい口の大きさ比べ。勝てば住み家と繁殖権ゲット だが安心してほしい。サーカスティック・フリンジヘッドのバトルは共食いなどではなく、単なる口の大きさ比べにほかならない。
公正な判定がなされているかは不明だが、彼らの世界では口がより大きいものが勝者であり最上の巣と繁殖権を得られるのだ。
[動画を見る]
Sarcastic Fringeheads : Channel Islands : UGENA
サーカスティック・フリンジヘッドの繁殖方法は、メスが産卵にふさわしい貴重な場所に数千個もの卵の塊を産みつけ、そこにオスが精子をかけるスタイル。
それが許されるのが勝者のオスで、繁殖後もわが子が無事に孵化するまでガード役を務めるという。
Sarcastic fringeheads fight for dominance in a (literal) jaw-dropping display Don't miss #SuperNaturalSeries, from @JimCameron and narrated by Benedict Cumberbatch, now streaming on @DisneyPlus. pic.twitter.com/89BQi3PAar
— National Geographic TV (@NatGeoTV) September 23, 2022
我を忘れて勝負に没頭。ときには口が触れ合う事故も 余談だが、魚名のフリンジヘッド(fringehead)はこの種の魚の目のあたりでヒラヒラしてる細い皮膚の突起(皮弁)を意味する。
そして日本語で「皮肉な」とも訳されるサーカスティック(Sarcastic)の語源は「肉を引き裂く」を意味するギリシャ語 sarkazein だともいわれている。
引き裂かれたような口を見せては縄張りを競うオスたち。しかしこれ当人同士でどっち大きいかわかるもんなのかね?
互いに負けじと張り合ううちに口同士がうっかり触れる事故もあるそうだが、魚の世界じゃ気まずくなったりしないんだろうな。
[画像を見る]
そういやカバも口の大きさを競うっていうし、生まれつき口が小さなオスにはハードモードな世界だわ。
てかもし口のサイズが遺伝するなら勝者の子孫から成るサーカスティック・フリンジヘッドの口は大きくなる一方な気も。そしたらもっとすごい絵面になりそうでちょっとぞくぞくしちゃうな。
References:sciencefocus / wikipediaなど /written by D/ edited by parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』