タコの悲しい住宅事情。人間の捨てたゴミを隠れ家とするタコが急増
image credit:WIKI commons CC BY SA 4.0

 タコが海底に落ちている物を利用して、外敵から身を守る隠れ家にしたり、産卵の巣にしたりすることはよく知られており、これまでは貝殻などを利用していた。

 ところが、人間が貝を乱獲し、人間がゴミを大量に海に捨てるせいで、タコの家が貝殻から缶や瓶な、プラスチックなどのゴミに代わってきたという。


 彼らの最新住宅事情が明らかにしたのはリオグランデ連邦大学(ブラジル)の研究グループだ。

 『Marine Pollution Bulletin』(2022年1月29日付)に掲載された研究によると、ゴミの家のせいで、タコが危険な毒物にさらされる危険があると警鐘を鳴らす。

人間の捨てたゴミを再利用して隠れ家にするタコ リオグランデ連邦大学は、世界各地で撮影された261点の写真・映像を分析し、タコと海に捨てられたゴミの関係を探っていった。

 この研究では、プラスチックやガラス以外にも、人間が捨てたココナッツの殻・木材・食品などもゴミとみなしている。

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a. ガラス瓶のかけら b. ガラス瓶 c. プラスチック製品 d. 2重のプラスチックカップ、e. バッテリー、f & g. 飲料缶、h. 錆びた鉄パイプ、e. 金属ポットとその他ゴミや貝殻の組み合わせ / image credit:sciencedirect.一番人気はガラス素材 そうしたゴミの中でもタコに一番人気だったのはガラスで、全体の41.6%を占めていた。プラスチックは24.7%だ。

 ガラスもプラスチックも一般的な海のゴミだが、ガラスが人気なのは、重く、海底に沈みやすいからだと推測されている。

 また、ガラス瓶は口が狭くなっており、外から進入されにくいことも理由かもしれない。ほかにもガラスの質感が、貝殻の内側に似ているからとも考えられるという。

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Octopus Use Rubbish As Home As Plastic In Ocean Rises

 なお、映像の撮影地域として一番多かったのはアジアで、その多くは2018年から2021年に撮影されたものだ。

 そうした中には、「メジロダコ(Amphioctopus marginatus)」が、2つのプラスチック製品で”竹馬”をしている姿も映されていた。

 ココナッツを運ぶことから「ココナッツオクトパス」とも呼ばれるメジロダコは、携帯用の家を抱えて移動する。


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Octo in a cup

 またバッテリーに乗っているタコも発見されている。バッテリーは海水やそこで暮らす生物に深刻な汚染被害をもたらす恐れがある。

 驚いたことに、ゴミの中には新種のタコもいた。それはブラジルに生息するピグミータコの仲間(学名 Paroctopus cthulu)で、残念なことにゴミ(特に飲料缶)の中で暮らす姿しか観察されていない。

 なおゴミの主な使い途は、「隠れ家」「竹馬」「潜る(ゴミに紛れたり、その下にいる場合)」だった。ただ上に乗っているだけのタコもいたようだ。

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ガラス瓶に入ったココナッツオクトパス photo by iStock
貝殻の乱獲でゴミを利用するしかなくなってしまったタコ 観光業が盛んになったことで、ここ数十年、飾りとして使う貝殻の採取量が増加していた。研究グループは、こうした貝殻の乱獲に警鐘を鳴らしている。

 タコが隠れ家として使う素材が海からなくなってしまえば、彼らはより身近なゴミに頼らざるを得なくなる。

 こうした傾向はタコが毒物に触れるリスクを高めると懸念され、実際の影響を確かめるために、さらなる研究が必要であるという。

プラスチック製ボトルの中で死んでいたタコ

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photo by iStock
 そもそもデータが少ないために、ゴミがタコに与える悪影響は過小評価されている恐れがあるとのこと。実態を把握するためにも、この問題を徹底的に調査する必要があるそうだ。


 ゴミの再利用はSDGsを推進していく上で人間が考えなければならないことだが、はからずもタコたちが、人間の捨てたゴミを再利用し、それにより危険に身をさらしているのは、申し訳ない気分になる。
References:Octopuses Are Reusing Human Trash as Shelter | Smart News| Smithsonian Magazine / written by hiroching / edited by parumo

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