お腹に蜜をたっぷり溜め込み食料貯蔵庫代わりになる砂漠のアリ
 地中に掘られた巣の中で、「ハニーアント(ミツツボアリの仲間)」は仲間のお腹をパンパンに膨らませている。一滴、また一滴と、働きアリが甘い蜜を口移しで飲ませ続けているのだ。


 天井からぶら下がっているキラキラとした物体はアリのお腹だ。お腹に蜜をため込んだアリは生きている食料貯蔵庫なのだ。

[動画を見る]

Honeypot Ants Turn Their Biggest Sisters into Jugs of Nectar | Deep Look食料貯蔵庫代わりになる特殊な働きアリ ハニーアントが生息するのは、アメリカ南西部やメキシコの厳しい砂漠だ。万が一、エサが乏しくなってしまったら、特殊な働きアリ「レプレット」の出番だ。

 レプレットはいわば食糧貯蔵係だ。非常時に備え、別の働きアリが甘い蜜を口移しで飲ませお腹をパンパンにして蜜を蓄える。

 腹ペコの仲間がいると、レプレットは大きく顎を開き、小さな雫を吐きだす。お腹にたっぷりと蓄えられた液体が仲間の命をつなぐのだ。

 もちろん、そうするうちにお腹は萎む。ちなみにこの間、レプレットはつま先を天井に引っ掛けてぶら下がったままだ。

[画像を見る]

働きアリの中からレプレットはどうやって選ばれる? レプレットは生まれつき大きなお腹をしているわけではない。すべての始まりは巨大な女王アリだ。
働きアリはみな、彼女の娘である。

 女王アリは小さな白い卵を無数に産みつける。働きアリはその世話係で、卵が孵化して幼虫になり、まゆに包まれてサナギになる面倒を見る。

 そうした中で一番大きな子がレプレットに選ばれ、甘い蜜をたらふく飲まされる。

 働きアリは夜な夜なエサを求めて出歩く。昆虫の遺体はタンパク質や脂肪源だ。甘い蜜は砂漠の植物がくれる。

 そうやって集めてきた蜜を、働きアリは一滴、また一滴と妹に与え、レプレットに育てていく。そうやって育成されるレプレットは、巣の5分の1を占める。

[画像を見る]

 蜜は「クロップ」と呼ばれる袋に流れ込む。クロップにはバルブのような器官が備わっており、蜜が胃に流れて消化されることを防ぐ。そのためクロップは生きた貯蔵タンクとして、膨らんでいく。


 それでもお腹の膜は柔軟なので大丈夫だ。一方、お腹を守っている硬い硬膜は、互いに離れて、なんだか小さな惑星に浮かぶ島々のようだ。

 わざわざ天井からぶら下がっているのは、通気をよくして、菌類の繁殖を防いでいるのかもしれない。

[画像を見る]

天敵はアナグマと人間 お腹に蜜を溜めて天井からぶら下がるその姿は、暗闇に閉じ込めらた捕虜のように思えるかもしれない。あるいは、仲間が美味しい蜜を運んできてくれるのだから、いい御身分だと羨む人もいるだろう。

 だが、お気楽暮らしのレプレットであっても、突如として災厄に見舞われる。

 それは、いきなり巣を掘り返してくるアナグマだ。あるいは美味しいものに目がない人間かもしれない。その甘い蜜は、数千年前から人間のデザートだったという。

written by hiroching / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
編集部おすすめ