マグニチュード9.5。チリ沿岸部で人類史上最大の地震の証拠を発見
 知られているものとしては人類史上最大の地震の証拠が発見されたそうだ。

 3800年前に現在のチリ北部で発生した、マグニチュード9.5の大地震は長さ8000キロにわたる規模の津波を引き起こした。
その影響はすさまじく、以降1000年にわたって沿岸部から人が消えたという。

 この地震は地殻プレートの断層によって沿岸部が迫り上がったことで引き起こされた。これにより高さ20メートルもの大津波が発生し、ニュージーランドまで到達。内陸数キロまで押し流された車ほどもある岩が見つかっている。

これまで史上最大とされていた地震の記録 これまで、観測史上最大の地震は、1960年にチリ中部の都市バルディビア近海で起きた「チリ地震」とされていた。

 マグニチュード9.4~9.5の地震によって、6000人が命を落とし、太平洋中に津波が広まった。原因となった断層の断裂は巨大で長さ800キロにも及んだ

 しかし『Science Advances』(2022年4月6日付)に掲載された研究では、さらに大きな地震の証拠を発見している。その断層の断裂は1000キロもあるという。

 「十分長い断層がないため、チリ北部でこれほどの地震はあり得ないと考えられてきました」と、英サウサンプトン大学の地質学者ジェームズ・ゴフ氏は声明で語っている。

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チリ地震 (1960年) 堆積物の証拠により史上最大地震の記録が塗り替えられる 今回発見された3800年前に起きた地震は、やはりチリで発生したものだが、1960年のチリ地震よりも大きく、人類史上最大であるという。

 「巨大地震」に分類されるこうした地震は、地殻プレートが別のプレートの下に沈み込むことで起こる。

 2枚のプレートは摩擦によって固定されるが、プレートを動かしていた力はそのまま蓄積。
やがてプレート同士が接触する部分がその力に耐えられなくなると、巨大な裂け目が生じて、「地震波」という形で巨大なエネルギーを放出する。

 大昔の巨大地震の証拠は、沿岸部にしかない小石や砂などの沿岸堆積物や、海の岩石・貝殻・生物といったものだ。

 それらはなぜかアタカマ砂漠の内陸深くで見つかった。

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アタカマ砂漠 photo by Pixabay
 「海の堆積物や生物の証拠を見つけました。それらは内陸に流されるまで海でひっそりと存在していたものです」と、ゴフ氏は説明する。

 それらは非常に高い位置の、しかも内陸の奥深くで見つかったので、嵐によって運ばれたとは考えられなかったという。

 そんなものが内陸にある理由を突き止めるべく、放射性炭素年代測定法で分析を試みたところ、炭素の放射性同位体「炭素14」が検出された。

 これは地球のどこにでもあり、堆積物が形成される時に吸収される。その「半減期」(放射性同位体の半分が放射性崩壊するまでの時間)は5730年なので、崩壊していない炭素14の量を調べることで、過去5万年の歴史を推測することができる。

 チリ北部の沿岸600キロの範囲で集めたサンプルの分析結果からは、内陸で発見された沿岸部物質は3800年前にそこへ流されてきたことが判明している。

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photo by Pixabay
巨大地震の影響で沿岸部から1000年間、人が消えた また巨大地震の証拠は他にも見つかっている。それは人間が作った石垣で、津波の堆積物の下で発掘された。


 その一部は海側へ向かって後ろ向きに倒れており、逆流してきた津波によって倒されたらしいことが窺えた。

 「当時そこで暮らしていた人々は何も残していません」と、ゴフ氏。考古学的な調査からは、住人が津波から逃れて移住したことで、大きな社会的混乱が起きていたことが明らかになったという。

 沿岸部に人間が戻ってきたのはようやく1000年後のこと。彼らが海から食料を得ていたことを考えると、驚くべき長さであるそうだ。将来の巨大地震に備えるために これは南半球で起きた地震と津波が人間の暮らしを破壊したことを物語るもっとも古い痕跡だ。

 こうした研究によって、いつかまた起きるかもしれない巨大地震の危険さについていっそう理解を深めることができる。

 「この地震はチリの人々に大きな影響を与えましたが、3800年前に津波が襲った時、南太平洋の島々は無人島でした」と、ゴフ氏。

 しかし、かつての無人島には現在では人が暮らしており、観光地としても人気がある。今回のような発見から学び、もしもの時に備えることが大切であるそうだ。

References:Scientists find evidence for biggest earthquake in human history | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

追記:(2022/04/22)本文を一部訂正して再送します。

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