
そこで科学者らはパリっとした最高食感のチョコレートの構造を徹底研究。彼らが辿り着いた結論は、チョコの螺旋構造だという。
最高のチョコレートを科学する 熟練のショコラティエは、まるで鍛冶屋のように、素材を熱したり冷ましたりしながら、完璧な結晶格子構造を作り出さねばならない。
物理学者でチョコレート店の経営者でもあるリチャード・タンゴ=ロウィー氏によると、カカオバターは「6相の多形結晶」なのだとか。
理想的なのが第5相で、ぼそぼそと崩れることなく、パリッと割れて溶け、おまけに高級感ただよう光沢まで与えてくれる。
しかし第5相結晶を作るには数週間かかる上に、不安定で、時間が経つと鈍い第4相に劣化してしまう。
かように、チョコレートとは熟慮と職人技と科学の賜物なのだ。
ゆえにアムステルダム大学のメタマテリアル科学者が興味を引かれ、最高の食感を楽しめるチョコの構造について『Soft Matter』(2022年3月21日付)で発表したとしても驚くには当たらない。
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パリパリ食感を最大化する螺旋 研究グループが求めたのは、噛むとパリッと弾けるような食感だ。彼らにとって理想のチョコとは、噛めば噛むほどパリパリするものだった。
この理想を実現するために、「破砕現象」を最大化する形状が探られた。そして突き止められたのが、噛む方向に応じて砕けるポイントを調整できる「螺旋形状」だ。
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一口ごとにパリパリ感を味わえる螺旋形状 / image credit:University of Amsterdam
研究グループは、チョコ螺旋理論に基づき各種サンプルを作り、その咀嚼音を録音することで、パリパリ具合をチェックしてみた。
すると予想通り、螺旋の渦がたくさんあるほど、パリッという破砕音がはっきり聞こえることが確認された。
そうした違いは試食した人もきちんと感じられるもので、「感覚評価全般や知覚されたパリパリ感は、力-変位曲線から測定された破砕数と正の相関を示していた」という。
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破砕数と正の相関:ある軸に力を加えると超強力、別の軸に力を加えると超割れやすい / image credit:3Dプリンターを使っての試行錯誤 次に試みられたのが、「最大異方性構造」の実験だ。つまりある方向から噛んだ時は強いが、別方向からだと脆く砕けやすい構造が探られたのだ。
そのために、この非常に扱いが難しい素材を、第5相を最大化しつつ3Dプリンターで印刷しなければならなかった。
まずは45度でチョコレートを熱して、その結晶すべてを破壊。次に、第5相形成の”種”となるチョコペレットをくわえ、第5相の融点(34度)以下にまで冷却された。
この時点でチョコレートをシリンジに入れて、32度に保たれた3Dバイオプロッター用のカートリッジにセット。そして12度に保たれた印刷板に、ファンで空気を送って固形化を促しながら、1層1層チョコレートを印刷する。
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3Dプリンターで量産するにはまだまだ工夫が必要 だがここで問題発生。シリンジの中でチョコが固まってしまうのだ。
だがこれがまた連鎖的に問題を発生させた。印刷圧力や速度を調整するためにプリンターを停止・再開すると、ノズルに大きさにムラのあるチョコ雫が残ったため、均一に揃ったチョコレートを作れなかったのだ。
というわけで、最高のパリパリ食感を楽しめるチョコの構造については理解が進んだものの、実際にそれを3Dプリンターで作り出すにはもっと工夫が必要であるようだ。
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Pre-finalist of the Amsterdam Science & Innovation Award Corentin Coulais
References:Physicists deploy 3D printing in pursuit of world's crackliest chocolate / written by hiroching / edited by / parumo
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