一方フランスでは、生き物が町を照らしていた。生物発光を利用した街路灯
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 フランス・パリから50キロ南西にあるランブイエという小さな町は、円筒形のチューブから放たれる柔らかい青い光で照らされている。

 なんとこのライトは生きている。
電気で灯る照明と違い、細菌の生物発光を利用しているのだ。

 これは、持続可能な代替照明を広めようとしている「Glowee」という新興企業の取り組みだ。フランスでは今、パリ=シャルル・ド・ゴール空港をはじめ、各地で生き物ライトを利用する試みが行われているそうだ。

自然界のいたるところにある生物発光 「生物発光」とは、生物が体内の化学反応を利用して、光を放つことだ。

ぱっと思い浮かぶのはホタルだが、それだけでなく菌類から魚まで、自然界のさまざまなところで見ることができる。

 交尾の相手を誘うために光るホタル、光で獲物を誘き寄せる深海のアンコウ、周囲の水が乱れると光る藻類など、その目的もさまざまだ。

 珍しい能力に思えるが、深海の生物などは実に76%が光を放つことができ、海の魚だけでも27回も独自にこの能力を進化させてきた。

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ニュージーランド、ワイトモの土ボタル洞窟生物発光を利用した街路灯 「Glowee」社は、この生物発光式のライトを作るために、フランス沖で採取した「アリイビブリオ・フィシェリ(Aliivibrio fischeri)」という海洋バクテリアを利用している。

 「私たちの目標は、街中の明かりの在り方を変えることです」と、サンドラ・レイCEOは語る。「住民・環境・生物多様性をもっと尊重するような雰囲気を作り、新しい光の哲学を実際に選べる選択肢として広めたいのです」

 海水で充したチューブに細菌を入れ、そこに栄養や酸素を与えて循環させてやる。A・フィシェリは、普段の代謝の中で生化学反応が生じており、それによって発光する。だから栄養と酸素があれば、それだけで照明になってくれる。


 エサを作るためのエネルギーを除けば、ほとんどエネルギーなしで周囲を照らすことができる。灯りを消したければ、空気を止めるだけでいい。すると細菌は嫌気状態になり、生物発光しなくなる。

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持続可能な照明を目指して Glowee社によれば、この生物発光を利用した照明は、現代社会が依存する電気の照明に取って代わる、持続可能なソリューションであるという。

 1879年に電球が発明されて以来、今日まで照明はほとんど変わっていない。1960年代にはLEDが登場し、ランニングコストが大幅に低下したが、大部分が化石燃料で発電された電気に頼っているという点に変わりはない。

 他方、Glowee社が開発を進めている発光細菌から作られた青い液体は、LEDより少ない電気で光る。

 製造プロセスで使われる水や排出される二酸化炭素も少ない。しかも生分解されるので廃棄の問題も少ないし、理論上永遠に再利用できる。

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生物の光を利用する為のハードル その光は生物が作り出すものだ。それゆえに、もっと幅広く採用するには、克服せねばならないハードルがいくつか存在する。

 たとえば、生物発光による光はLEDほど明るくはなく、1平米を15ルーメンで照らせる程度だ。


 これがLEDなら家庭用でも1平米あたり111ルーメンで照らせるし、公園などの照明として使うにしても25ルーメンは必要になる。さらに温度にも敏感という問題もある。

 こうした問題をクリアするために、Glowee社は温度や圧力を調整して、もっと効率的に生物発光させる方法を模索しているところだという(なお遺伝子改変技術は使われないとのこと)。

 こうした努力が実を結べば、いつかさまざまな都市が生きた照明によって照らされるようになるかもしれない。

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References:In France, New Street Lights Being Tested Are Actual Living Beings / A small French town will be lit by bioluminescent organisms / written by hiroching / edited by / parumo

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