
「アファンタジア」という奇妙な症状がある。例えば今いる部屋の作りを脳内で思い出してみよう。
これまで、この症状は本人が言うまで周りの人にはわからなかった。しかし最新の研究では、アファンタジアの症状を持つ人の特徴が明らかとなった。
ある形状を想像した時の瞳孔の変化で、アファンタジアを客観的に診断することができるという。
アファンタジアの人だけにある瞳孔の特徴 「目は口ほどにもの言う」との諺があるが、最新の方法も目の瞳孔の拡張反応に基づいて診断する。
瞳孔は明るいところでは小さく縮み、暗いところでは大きく開く。網膜に入る光の量を調整するためだ。だが、これ以外にも認知作業を行うことで大きさが変化することが知られている。
そこでオーストラリアの研究グループは、アファンタジアの人(18名)とそうでない人(42名)に対して、明るい形と暗い形の画像を見てもらうという実験を行った。
直接見た時にはどちらの人でも、画像の明るさに関わらず瞳孔の拡張反応が認められた。
ところが今度は目を開いたまま、同じ画像を”思い浮かべる”よう指示した。
研究グループによれば、頭の中で視覚的なイメージを思い浮かべられる人ならば、瞳はそれに反応するのだという。それが鮮やかで強烈であるほど、大きく変化する。
ところが、アファンタジアの人はこうした瞳孔反応が生じないという。
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photo by Pixabay
アファンタジアはイメージを思い浮かべた時に瞳孔が変化しない 瞳孔の反応は本人の意思とは関係なしに起きる。特に光のようなまぶしいものを思い浮かべれば勝手に瞳孔は拡張する。
だから、この方法ならば、自己申告に頼らないアファンタジアの客観的な診断法になると考えられるという。
「客観的な生理学的試験までもう少しです。血液検査のように、症状があればそれを確認できるようになります」と、シドニー大学の生理学者ジョエル・ピアソン氏は語る。
またイメージを鮮明に思い浮かべられる人ほど、瞳孔の変化は大きくなるという。これもまた、視覚的イメージを思い浮かべる力を測定する手がかりになるそうだ。
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頭で想像するとなぜ瞳孔は変化するのか? だが、この研究において一番興味を引かれるのは、そもそもなぜ頭の中で想像するだけで瞳孔が反応するのか? という点だろう。
ピアソン氏らは、視覚イメージと認知をつなぐトップダウン式メカニズムが関係しているのではと推測する。
おそらく脳内の視覚情報を処理する領域は、実際の視覚情報とまったく同じように想像上の視覚情報をも処理しているのだ。
だから何かを明るいものを思い浮かべれば、実際に網膜が光を受けた時と同じように瞳孔が反応する。
今回の研究でも、何かを鮮明にイメージできる人ほど、実際に光を受けた時のような反応をすることが確認されているが、上記のように考えれば辻褄が合うだろう。
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アファンタジアの人は本当に思い浮かべようとしていたのか? ところで、アファンタジアの人は本当にイメージを思い浮かべようとしていたのだろうか? そう指示されても、想像しようとしなかった(あるいはできない)可能性だってある。
この研究では、その点についても確かめている。実験参加者に、同時に4つの形を想像するよう指示してみたのだ。
なぜなら、難しい認知作業であるほど、瞳孔が開くことが知られているからだ。
もちろん同時に4つの形を想像するのは、1つだけよりも難しい。
そしてアファンタジアの人たちは、4つ同時に想像した場合は瞳孔が拡大していた。つまり少なくとも頭の中で何かを思い浮かべようと努力はしていたということだ。
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まったく違う心象世界で暮らす人々 視覚的イメージを想像する能力は、それ以外の重要な脳機能をも助けている。
たとえば、記憶を取り出す時にイメージが使われるし、学習した文字や記号を思い浮かべる時、訪れたことのある場所を思い出したり、移動したりする時もそうだ。
そうしたことができないアファンタジアの人は、まったく違う心象世界で生きていると言えるかもしれない。
このことは、私たちが世界を認識するための神経学的な働きが、想像以上に多様であることを浮き彫りにしている。
この研究は『eLife』(2022年3月31日付)に掲載された。
References:The Eyes Can Reveal if Someone Has Aphantasia – An Absence of Visuals in Their Mind / written by konohazuku / edited by / parumo
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家具やインテリア、窓、カーテンの色や形状のイメージが描けるはずだ。ところが、アファンタジアの症状を持つ人は頭の中で視覚的なイメージを思い浮かべることができない。
これまで、この症状は本人が言うまで周りの人にはわからなかった。しかし最新の研究では、アファンタジアの症状を持つ人の特徴が明らかとなった。
ある形状を想像した時の瞳孔の変化で、アファンタジアを客観的に診断することができるという。
アファンタジアの人だけにある瞳孔の特徴 「目は口ほどにもの言う」との諺があるが、最新の方法も目の瞳孔の拡張反応に基づいて診断する。
瞳孔は明るいところでは小さく縮み、暗いところでは大きく開く。網膜に入る光の量を調整するためだ。だが、これ以外にも認知作業を行うことで大きさが変化することが知られている。
そこでオーストラリアの研究グループは、アファンタジアの人(18名)とそうでない人(42名)に対して、明るい形と暗い形の画像を見てもらうという実験を行った。
直接見た時にはどちらの人でも、画像の明るさに関わらず瞳孔の拡張反応が認められた。
ところが今度は目を開いたまま、同じ画像を”思い浮かべる”よう指示した。
すると、アファンタジアの人たちの瞳孔は全く変化しなかったのだ。
研究グループによれば、頭の中で視覚的なイメージを思い浮かべられる人ならば、瞳はそれに反応するのだという。それが鮮やかで強烈であるほど、大きく変化する。
ところが、アファンタジアの人はこうした瞳孔反応が生じないという。
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アファンタジアはイメージを思い浮かべた時に瞳孔が変化しない 瞳孔の反応は本人の意思とは関係なしに起きる。特に光のようなまぶしいものを思い浮かべれば勝手に瞳孔は拡張する。
だから、この方法ならば、自己申告に頼らないアファンタジアの客観的な診断法になると考えられるという。
「客観的な生理学的試験までもう少しです。血液検査のように、症状があればそれを確認できるようになります」と、シドニー大学の生理学者ジョエル・ピアソン氏は語る。
またイメージを鮮明に思い浮かべられる人ほど、瞳孔の変化は大きくなるという。これもまた、視覚的イメージを思い浮かべる力を測定する手がかりになるそうだ。
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頭で想像するとなぜ瞳孔は変化するのか? だが、この研究において一番興味を引かれるのは、そもそもなぜ頭の中で想像するだけで瞳孔が反応するのか? という点だろう。
ピアソン氏らは、視覚イメージと認知をつなぐトップダウン式メカニズムが関係しているのではと推測する。
おそらく脳内の視覚情報を処理する領域は、実際の視覚情報とまったく同じように想像上の視覚情報をも処理しているのだ。
だから何かを明るいものを思い浮かべれば、実際に網膜が光を受けた時と同じように瞳孔が反応する。
今回の研究でも、何かを鮮明にイメージできる人ほど、実際に光を受けた時のような反応をすることが確認されているが、上記のように考えれば辻褄が合うだろう。
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アファンタジアの人は本当に思い浮かべようとしていたのか? ところで、アファンタジアの人は本当にイメージを思い浮かべようとしていたのだろうか? そう指示されても、想像しようとしなかった(あるいはできない)可能性だってある。
この研究では、その点についても確かめている。実験参加者に、同時に4つの形を想像するよう指示してみたのだ。
なぜなら、難しい認知作業であるほど、瞳孔が開くことが知られているからだ。
もちろん同時に4つの形を想像するのは、1つだけよりも難しい。
そしてアファンタジアの人たちは、4つ同時に想像した場合は瞳孔が拡大していた。つまり少なくとも頭の中で何かを思い浮かべようと努力はしていたということだ。
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まったく違う心象世界で暮らす人々 視覚的イメージを想像する能力は、それ以外の重要な脳機能をも助けている。
たとえば、記憶を取り出す時にイメージが使われるし、学習した文字や記号を思い浮かべる時、訪れたことのある場所を思い出したり、移動したりする時もそうだ。
そうしたことができないアファンタジアの人は、まったく違う心象世界で生きていると言えるかもしれない。
このことは、私たちが世界を認識するための神経学的な働きが、想像以上に多様であることを浮き彫りにしている。
この研究は『eLife』(2022年3月31日付)に掲載された。
References:The Eyes Can Reveal if Someone Has Aphantasia – An Absence of Visuals in Their Mind / written by konohazuku / edited by / parumo
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