スパイシーで甘い香り。クレオパトラが男性をメロメロにした香水を科学者が再現
 古代エジプト、プトレマイオス朝最後の女王、「クレオパトラ」が、ユリウス・カエサルやマルクス・アントニウスをメロメロにしたと言われる香水が、歴史に基づくレシピ、化学的な分析、そして試行錯誤の結果、復元された。

 フランスの哲学者、ブレーズ・パスカルは、「もしクレオパトラの鼻が低かったら、世界の歴史は変わっていただろう」と言った。


 これは、古代世界でもっとも影響力のあった2人の男性を虜にしたのは、クレオパトラの頭脳ではなく美しさだとする物言いだ。

 彼女が男性を魅了したのは、香水の効果もあったのかもしれない。

クレオパトラの死後に残された香水のレシピ本 古代エジプトは、「香りの王国」として有名だった。「クレオパトラ7世( 紀元前69年 - 紀元前30年8月12日)」の時代には、少なくとも3000年前からの香りに関する技術がかなり確立されていた。

 クレオパトラの死後まもなく、彼女が使っていた香水のレシピ本が世に出た。それから2000年以上が立ち、現代の科学者たちが、その香りを再現しようとしている。

 『NNear Eastern Archaeology』に掲載された論文にはこうある。
古代エジプトの香水や軟膏のベースは、現代のようにアルコール性のものではなく、植物オイルや動物性脂肪に由来するものだった

香りのいい樹脂、樹皮、ハーブを燃やした煙から抽出するか、樹脂や花、ハーブ、スパイス、木などを液体に浸してふやかして香水が作られた


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香水復元に立ちはだかる壁 しかし、これらレシピが書かれた象形文字の正確な意味は、長い年月の経過とともに失われてしまった。

 現代の私たちが知っているのは、クレオパトラ時代に葬儀や神殿の儀式で使われたオイルの名前だけで、その調合についてはわからない。

 ギリシャやローマの記録を翻訳するのは簡単だが、何世紀もギリシャやローマの支配下にあったにもかかわらず、記録を書いた者はたいてい香水を作った人間ではなく、部外者であったため、信頼性は低いと考えられる。

 とくに"香りの実の油"と呼ばれる成分についてはよくわかっておらず、議論になっている。

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新たに発見された香水工場にヒントが しかし、ナイル川の東の運河にある下エジプトの都市、Thmouisで香水工場と思われる場所が発見され、新たな可能性が出てきた。


 Thmouisはメンデスの先にあり、ここの香水は地中海じゅうで有名だった。

 陶器の香水入れが、ここからたくさん見つかっているため、自家用ではなく商業用だったに違いないと考えられている。

 香水入れの材料として使われたナイル川のシルトや、内容物の残滓など、容器の中に残っていたものの分子を蛍光X線を使って分析してみた。クレオパトラの香水はスパイシーで甘い香り ベルリン自由大学のドーラ・ゴールドスミス教授とベルリン・フンボルド大学のショーン・コフリン教授は、過去の文献と現代化学を組み合わせて、支配者をそこまで骨抜きにするほどの魅力的な香りを見つけるために、さまざまな材料を試験し、ありとあらゆる成分と調合法を試してみた。

 粉にしたばかりの没薬やシナモンなどのスパイシーなベースに、甘い香りを合わせたことで、えも言えぬ心地よい香りができたという。

 さらに、このなんとも魅力的な香りは2年間も持続し、エジプトの香水は輸送時にもその品質が劣化しないという事実にも一致した。

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 ちなみに、クレオパトラの香水の再現は2019年にもハワイ大学の研究者たちによって試みられており、ナショナル・ジオグラフィック・ミュージアムで開催された「クイーンズ・オブ・エジプト」展で、『オーデ・クレオパトラ』と名づけられた類似品の香りを体験することができた。

 この成果は、いい香りそのもの以上の効果があったという。防カビ・抗菌成分を配合することで、不快なにおいを抑えて、望ましい香りを輝かせることができた。

 この香水の製作は小さなことだが、古代の香りを再現する分野のひとつとして成長している。古代の不快な臭いをも再現する試みが行われている。

 王宮や神殿、サンダルから武器までさまざまなものが作られていた工房など、古代エジプトの都市を舞台にした「香りの風景」を作り出しているのだ。


References:Cleopatra's Perfume Has Been Recreated By Scientists – And It's Spicy | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo

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