
8億3000万年前の塩の天然結晶「ハライト」の中から、古代の生物である、原核生物と藻類の名残が発見された。
なんとその一部はまだ生きている可能性があるというから驚きだ。
8億年以上前にはまだ陸上に生物が存在せず恐竜が誕生するずっと前だ。この発見は、太古の地球の生命について知る手がかりになるだけでなく、火星などの地球外生命の探索にも役立つかもしれないという。
岩塩が結晶化したときに閉じ込められた太古の生物 アメリカ、ウェストバージニア大学のグループが非破壊的な方法で岩塩を調査したところ、その中に古代の生物を見つけ出した。
地球に初めて生命が誕生したのは海の中で38億年前と言われている。5億4000万年前の「カンブリア紀」になると海の生物は目覚しい進化を遂げた。
約4億年前になると、植物、節足動物、両生類が次々と海から陸にあがり陸上生活を始めたと考えられている。
発見された生物の姿は8億3000万年前のもので、一般に想像される現在の「生物」とはとは違うだろう。
古い微生物の化石が発見されたことは以前にもあるが、そうしたものは頁岩のような数十億年前の岩盤に押し込まれた形で見つかる。
一方、塩は岩のようには有機物を保存してくれない。
だが塩水の中で結晶が形成されて、その時に少量の液体が閉じ込められることはある。これは「流体包含物」と呼ばれ、岩塩が結晶化した時に浸かっていた水の名残だ。
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image credit:Schreder-Gomes et al., Geology, 2022
もともと海だった新現生代の地層を調査 これは科学的には大変貴重なものだ。
より最近の時代のものなら、岩塩が形成されるような塩分濃度がきわめて高い場所で、細菌・真菌・藻類といった微生物が発見されている。
だが、石膏や岩塩の流体包含物から見つかる微生物のほとんどは近・現代のもので、古代にまでさかのぼる古い生物はごくわずかだ。
しかも、それを検査する時にどうしてもサンプルに手を加えることになるので、発見された生物が岩塩の年代と同じなのかどうかはっきりしないところがあった。
研究グループは論文でこう述べている。「堆積環境にいる原核・真核生物の微生物を、そのまま含んでいる最古の化学的体積岩は何だろうか?」
オーストラリア中央部は現在では砂漠だが、かつては海だった。
そこにある「ブラウン層」は「新現生代」(10億~6億3500万年前)にさかのぼり、その特徴もよく知られている。
ここは広範囲にわたり岩塩が見られ、当時の海の環境について伝えてくれている場所だ。
今回の調査では、1997年にブラウン層から採取されたサンプルが、非破壊的な光学的手法によって検査された。
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image credit:Schreder-Gomes et al., Geology, 2022
この手法なら岩塩を傷つけることがないので、その中のものも無傷のままだ。まず低倍率で岩塩の結晶を確認し、それから2000倍に拡大して流体包含物を調べる。岩塩の中に生物を発見。
興味深いのは、紫外線蛍光の範囲だ。有機物の腐敗と一致する色もあれば、現代の生物のそれと一致するものもあった。このことは、有機物が変質していないことを示している。
8億3000万年前の岩塩の中には、まだ生きている微生物すらいるかもしれないという。流体包含物は、そうした微生物が生息する微細な環境ごと保存している可能性があるからだ。
2億5000万年前の岩塩からなら、生きている原核生物が見つかったことはある。ならば8億3000万年前の岩塩の中で生きていてもおかしくはない。
ただし現時点で、微生物が悠久とも言える長さを生き続けられるかどうか、はっきりしたことはわからない。
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image credit:Schreder-Gomes et al., Geology, 2022
研究グループによると、長期的には放射線が有機物を破壊してしまうだろうという。だが2億5000万年前の岩塩は、無視できるほどの放射線しか浴びていなかった。
しかも微生物には、休眠状態になるなど、流体包含物の中で生き続けるメカニズムが備わっているかもしれない。
今回のサンプルを壊すことなく分析できる方法なら、その中に潜む生物を発見する頼もしいツールになることだろう。
研究グループによれば、光学的な非破壊検査法は、古代の岩石に残されているバイオシグネチャーを研究する基本手順になるだろうという。
化学的な分析や生物学的な分析とあわせて、微生物に地質学的な背景を与えることができる。
地球のものか地球外のものかに関わらず、古い化学的堆積物には、微生物や有機化合物が閉じ込められている可能性があるとのことだ。
この研究は、『Geology』(2022年5月6日付)に掲載された。
References:Potentially Alive 830-Million-Year-Old Organisms Found Trapped in Ancient Rock / written by hiroching / edited by / parumo
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なんとその一部はまだ生きている可能性があるというから驚きだ。
8億年以上前にはまだ陸上に生物が存在せず恐竜が誕生するずっと前だ。この発見は、太古の地球の生命について知る手がかりになるだけでなく、火星などの地球外生命の探索にも役立つかもしれないという。
岩塩が結晶化したときに閉じ込められた太古の生物 アメリカ、ウェストバージニア大学のグループが非破壊的な方法で岩塩を調査したところ、その中に古代の生物を見つけ出した。
地球に初めて生命が誕生したのは海の中で38億年前と言われている。5億4000万年前の「カンブリア紀」になると海の生物は目覚しい進化を遂げた。
約4億年前になると、植物、節足動物、両生類が次々と海から陸にあがり陸上生活を始めたと考えられている。
発見された生物の姿は8億3000万年前のもので、一般に想像される現在の「生物」とはとは違うだろう。
古い微生物の化石が発見されたことは以前にもあるが、そうしたものは頁岩のような数十億年前の岩盤に押し込まれた形で見つかる。
一方、塩は岩のようには有機物を保存してくれない。
だが塩水の中で結晶が形成されて、その時に少量の液体が閉じ込められることはある。これは「流体包含物」と呼ばれ、岩塩が結晶化した時に浸かっていた水の名残だ。
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image credit:Schreder-Gomes et al., Geology, 2022
もともと海だった新現生代の地層を調査 これは科学的には大変貴重なものだ。
その当時の水温・水質・気温といったことを今に伝えてくれるからだ。
より最近の時代のものなら、岩塩が形成されるような塩分濃度がきわめて高い場所で、細菌・真菌・藻類といった微生物が発見されている。
だが、石膏や岩塩の流体包含物から見つかる微生物のほとんどは近・現代のもので、古代にまでさかのぼる古い生物はごくわずかだ。
しかも、それを検査する時にどうしてもサンプルに手を加えることになるので、発見された生物が岩塩の年代と同じなのかどうかはっきりしないところがあった。
研究グループは論文でこう述べている。「堆積環境にいる原核・真核生物の微生物を、そのまま含んでいる最古の化学的体積岩は何だろうか?」
オーストラリア中央部は現在では砂漠だが、かつては海だった。
そこにある「ブラウン層」は「新現生代」(10億~6億3500万年前)にさかのぼり、その特徴もよく知られている。
ここは広範囲にわたり岩塩が見られ、当時の海の環境について伝えてくれている場所だ。
今回の調査では、1997年にブラウン層から採取されたサンプルが、非破壊的な光学的手法によって検査された。
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image credit:Schreder-Gomes et al., Geology, 2022
この手法なら岩塩を傷つけることがないので、その中のものも無傷のままだ。まず低倍率で岩塩の結晶を確認し、それから2000倍に拡大して流体包含物を調べる。岩塩の中に生物を発見。
まだ生きている可能性 こうして発見された有機物の固体と液体は、その大きさ・形状・紫外線蛍光(紫外線を受けて放たれる蛍光のこと)から判断するなら、原核生物や真核生物の細胞に一致しているという。
興味深いのは、紫外線蛍光の範囲だ。有機物の腐敗と一致する色もあれば、現代の生物のそれと一致するものもあった。このことは、有機物が変質していないことを示している。
8億3000万年前の岩塩の中には、まだ生きている微生物すらいるかもしれないという。流体包含物は、そうした微生物が生息する微細な環境ごと保存している可能性があるからだ。
2億5000万年前の岩塩からなら、生きている原核生物が見つかったことはある。ならば8億3000万年前の岩塩の中で生きていてもおかしくはない。
ただし現時点で、微生物が悠久とも言える長さを生き続けられるかどうか、はっきりしたことはわからない。
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image credit:Schreder-Gomes et al., Geology, 2022
研究グループによると、長期的には放射線が有機物を破壊してしまうだろうという。だが2億5000万年前の岩塩は、無視できるほどの放射線しか浴びていなかった。
しかも微生物には、休眠状態になるなど、流体包含物の中で生き続けるメカニズムが備わっているかもしれない。
有機化合物や死んだ細胞が養分になるとも考えらえる。火星の生命も岩塩の中に? こうしたことは火星の生物について示唆に富んでいる。火星でブラウン層に似た堆積物が見つかるかもしれない。
今回のサンプルを壊すことなく分析できる方法なら、その中に潜む生物を発見する頼もしいツールになることだろう。
研究グループによれば、光学的な非破壊検査法は、古代の岩石に残されているバイオシグネチャーを研究する基本手順になるだろうという。
化学的な分析や生物学的な分析とあわせて、微生物に地質学的な背景を与えることができる。
地球のものか地球外のものかに関わらず、古い化学的堆積物には、微生物や有機化合物が閉じ込められている可能性があるとのことだ。
この研究は、『Geology』(2022年5月6日付)に掲載された。
References:Potentially Alive 830-Million-Year-Old Organisms Found Trapped in Ancient Rock / written by hiroching / edited by / parumo
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