
北極海と北大西洋の間に位置する「グリーンランド」のこれまで知られていなかった場所で、ホッキョクグマのグループが確認された。その辺りは海氷が少なく狩りをすることは困難で、ホッキョクグマが生きられないとされていた環境だ。
ところが新たに発見されたグループは、フィヨルドから流れてきた氷河のかけらを使って、うまく狩りをしているという。
今回の発見は、ホッキョクグマの中には地球温暖化による氷が減少にうまく適応できるものがいる可能性を示しているそうだ。
グリーンランドで発見された20番目のホッキョクグマの亜集団 これまで、北極圏には19のホッキョクグマの亜集団がいることが知られていた。今回、ワシントン大学のクリスティン・レイドラ氏らによって、それらの亜集団を大きく分けると2つのグループで構成されていることが明らかになった。
GPS内蔵首輪で集めた36年分の追跡データを分析したところ、グリーンランド「南東グループ」は北緯64度から北に行くことがなく、「北東グループ」はそのラインから南に行くことがなかった。しかも両グループは遺伝的にも異なっていたのだ。
そして今回、グリーンランド南東で新たに発見されたホッキョクグマ集団は、機能的にも独立したグループである初の証拠であり、世界で20番目のホッキョクグマ亜集団と認定する基準を満たしていると『Science』(2022年6月16日付)に掲載された研究で述べられている。
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新たなホッキョクグマのグループが発見される / image credit: Kristin Laidre/University of Washington本来なら生きるのが困難な場所で暮らしていたグループ 新たに特定された20番目のホッキョクグマ・グループは、およそ300頭ほど。
全亜集団の中で一番遺伝的な多様性に富んでおり、遺伝子の比較からは、約200年ほど前に北東グループから分岐したらしいことが示唆されている。
ホッキョクグマは世界最大の陸上捕食動物でありながら、アザラシなど主に海の生物を食べていることから海洋哺乳類に分類されている。
彼は、獲物の頭上からこっそり忍び寄るための海氷がなければ、狩りができない。温暖化で氷が少なくなってしまうと、ホッキョクグマが生きられなくなるのはそのためだ。
北極圏の氷は季節によって大きさが変わる。秋になれば海には一時的な氷床が広がり、春にまた解けて消える。
ホッキョクグマは食べものがなくても100~180日は生きられるので、氷がない夏でもどうにかなる。だが温暖化で氷がない期間が長くなれば、飢え死に追い込まれる危険が高まる。
ところが、20番目のホッキョウグマグループが暮らすフィヨルドは、北極圏の南端に位置し、氷がない時期は年に250日以上も続く。
これまでの常識なら本来ホッキョクグマが生きられない環境なのだ。ところがこのグループは、氷のない海でも驚くほど上手に生きているのだ。
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上空から撮影した20番目のホッキョクグマグループの個体 / image credit: Kristin Laidre/University of Washington新たな狩りの方法で、環境に適応 レイドラ氏らは、彼らは氷河の「メランジュ」(フィヨルドの氷が割れて、海に流れたもの)を利用してるのではと推測している。
淡水の氷に乗って狩りをして、海氷のない季節にエサを確保している可能性が濃厚であるという。
また彼らの生息域の近くに人間はおらず、ハンターであっても簡単には近づけないため、よりいっそう安全な場所となっている。
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フィヨルドの急な斜面にいたホッキョクグマ / image credit:Kristin Laidre/University of Washington
その一方、フィヨルドの斜面は急峻で、ホッキョクグマといえども容易には移動できない可能性はある。
南東グループの出生率は非常に低いが、これは彼らが交配相手と出会いにくいことが原因ではないかと推測されている。
遺伝子の分析から、南東グループには北東グループから移住してきたものがいることも判明している。
その2頭はメランジュを使った狩りによく適応しており、他の地域のホッキョクグマも海氷の減少にうまく適応できる可能性を示唆している。
グリーンランド北部とスヴァールバル諸島には、同じように氷河の氷を利用して生きられそうな場所が見つかっている。ただし、ホッキョクグマの大多数はそこに移住できないかもしれない。
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image credit:Kristin Laidre/University of Washingtonホッキョクグマは絶滅の危機から逃れられていない 生き残るために気候変動に適応したグループが発見された今回の研究は、ホッキョクグマにとって希望の光かもしれない。
だからといって温暖化の脅威が低まるわけではないと研究グループは主張する。
ホッキョクグマは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「危急種(VU)」に分類される絶滅が危惧される動物だ。研究者からは、温暖化の影響で今世紀中に絶滅する恐れがあると指摘されている。
「北極の海氷の喪失は、ホッキョクグマ全体にとって主要な脅威であり、この研究は、その事実を変えるものではない」と、レイドラ氏は語る。
北極の氷が減るほどに、ホッキョクグマが生き残れるチャンスは低くなるとのことだ。
References:Secret population of polar bears found living in seemingly impossible habitat | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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ところが新たに発見されたグループは、フィヨルドから流れてきた氷河のかけらを使って、うまく狩りをしているという。
今回の発見は、ホッキョクグマの中には地球温暖化による氷が減少にうまく適応できるものがいる可能性を示しているそうだ。
グリーンランドで発見された20番目のホッキョクグマの亜集団 これまで、北極圏には19のホッキョクグマの亜集団がいることが知られていた。今回、ワシントン大学のクリスティン・レイドラ氏らによって、それらの亜集団を大きく分けると2つのグループで構成されていることが明らかになった。
GPS内蔵首輪で集めた36年分の追跡データを分析したところ、グリーンランド「南東グループ」は北緯64度から北に行くことがなく、「北東グループ」はそのラインから南に行くことがなかった。しかも両グループは遺伝的にも異なっていたのだ。
そして今回、グリーンランド南東で新たに発見されたホッキョクグマ集団は、機能的にも独立したグループである初の証拠であり、世界で20番目のホッキョクグマ亜集団と認定する基準を満たしていると『Science』(2022年6月16日付)に掲載された研究で述べられている。
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新たなホッキョクグマのグループが発見される / image credit: Kristin Laidre/University of Washington本来なら生きるのが困難な場所で暮らしていたグループ 新たに特定された20番目のホッキョクグマ・グループは、およそ300頭ほど。
全亜集団の中で一番遺伝的な多様性に富んでおり、遺伝子の比較からは、約200年ほど前に北東グループから分岐したらしいことが示唆されている。
ホッキョクグマは世界最大の陸上捕食動物でありながら、アザラシなど主に海の生物を食べていることから海洋哺乳類に分類されている。
彼は、獲物の頭上からこっそり忍び寄るための海氷がなければ、狩りができない。温暖化で氷が少なくなってしまうと、ホッキョクグマが生きられなくなるのはそのためだ。
北極圏の氷は季節によって大きさが変わる。秋になれば海には一時的な氷床が広がり、春にまた解けて消える。
ホッキョクグマは食べものがなくても100~180日は生きられるので、氷がない夏でもどうにかなる。だが温暖化で氷がない期間が長くなれば、飢え死に追い込まれる危険が高まる。
ところが、20番目のホッキョウグマグループが暮らすフィヨルドは、北極圏の南端に位置し、氷がない時期は年に250日以上も続く。
これまでの常識なら本来ホッキョクグマが生きられない環境なのだ。ところがこのグループは、氷のない海でも驚くほど上手に生きているのだ。
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上空から撮影した20番目のホッキョクグマグループの個体 / image credit: Kristin Laidre/University of Washington新たな狩りの方法で、環境に適応 レイドラ氏らは、彼らは氷河の「メランジュ」(フィヨルドの氷が割れて、海に流れたもの)を利用してるのではと推測している。
淡水の氷に乗って狩りをして、海氷のない季節にエサを確保している可能性が濃厚であるという。
また彼らの生息域の近くに人間はおらず、ハンターであっても簡単には近づけないため、よりいっそう安全な場所となっている。
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フィヨルドの急な斜面にいたホッキョクグマ / image credit:Kristin Laidre/University of Washington
その一方、フィヨルドの斜面は急峻で、ホッキョクグマといえども容易には移動できない可能性はある。
南東グループの出生率は非常に低いが、これは彼らが交配相手と出会いにくいことが原因ではないかと推測されている。
遺伝子の分析から、南東グループには北東グループから移住してきたものがいることも判明している。
その2頭はメランジュを使った狩りによく適応しており、他の地域のホッキョクグマも海氷の減少にうまく適応できる可能性を示唆している。
グリーンランド北部とスヴァールバル諸島には、同じように氷河の氷を利用して生きられそうな場所が見つかっている。ただし、ホッキョクグマの大多数はそこに移住できないかもしれない。
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image credit:Kristin Laidre/University of Washingtonホッキョクグマは絶滅の危機から逃れられていない 生き残るために気候変動に適応したグループが発見された今回の研究は、ホッキョクグマにとって希望の光かもしれない。
だからといって温暖化の脅威が低まるわけではないと研究グループは主張する。
ホッキョクグマは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「危急種(VU)」に分類される絶滅が危惧される動物だ。研究者からは、温暖化の影響で今世紀中に絶滅する恐れがあると指摘されている。
「北極の海氷の喪失は、ホッキョクグマ全体にとって主要な脅威であり、この研究は、その事実を変えるものではない」と、レイドラ氏は語る。
北極の氷が減るほどに、ホッキョクグマが生き残れるチャンスは低くなるとのことだ。
References:Secret population of polar bears found living in seemingly impossible habitat | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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