
生物のようなにしなやかに動作するソフトロボットには、生物のように機能する人工筋肉が望ましい。米国の研究グループが、生体の筋肉より強力かつ柔軟な人工筋肉素材を開発した。
スイッチのオンオフに合わせて伸縮する様子は、心臓の鼓動を連想させるほど生き物っぽい。また自重の20倍もある球を跳ね飛ばしたり、クラゲ型ロボットにジャンプさせたりするような力強さもある。
これを見れば、未来のソフトロボットがのように動作するのか、きっとイメージできることだろう。
注目される高弾性エネルギー密度軽量素材 人工筋肉として使われる素材は、機械的なエネルギーを出力でき、強い歪みにも耐えられる丈夫さがなければならない。つまり繰り返し使われても、きちんと形状と強度を保ち続ける必要がある。
こうした条件を満たしそうな候補はいくもあるが、特に注目されるのが「誘電エラストマー」という高弾性エネルギー密度軽量素材だ。
誘電エラストマーは、電気活性高分子と呼ばれる天然あるいは合成の物質で、電場の刺激で大きさや形状が変化する分子で構成されている。電気エネルギーを運動エネルギーに変換してくれるので、「アクチュエーター(エネルギーや電気信号を、物理的運動に変換する機械要素)」として利用できる。
誘電エラストマーは一般に、アクリル系とシリコン系にわけられる。
どちらも一長一短で、アクリル系は強い歪みにも耐えらえるが、あらかじめ引き伸ばしておく必要があり、柔軟性に欠ける。一方、シリコン系は、生産しやすいがアクリル系ほど歪みに強くない。
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Scientists develop durable material for flexible artificial musclesしなやかで強い人工筋肉 今回、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究グループは、市販の化学物質を紫外線で硬化させることで、アクリル系誘電エラストマーを強度や耐久性はそのままに、より柔軟かつ調整可能な素材に改良することに成功した。
「加工可能高性能誘電エラストマー(PHDE)フィルム」は、アクリル酸によって水素結合がうながされるため、より動きやすくなっている一方、ポリマー鎖間の架橋を調整することで、より柔らかく柔軟に仕上がっている。
これを2本の電極で挟めば、電気エネルギーを運動エネルギーに変換するアクチュエーターになる。
1枚1枚のPHDEフィルムの厚さと重さは、人間の髪の毛(厚さ35μm)ほど。何枚も重ね合わせれば、まるで筋肉のように動く。
その出力は小型ロボットやセンサーを動かすには十分なほど力強い。生体の筋肉よりも強い圧力を発揮し、それでいて10倍も柔軟なのだ。
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PHDEで作られた直径1.2センチのクラゲ型ロボット。見事なジャンプを披露する/Credit: Soft Materials Research Lab/UCLAよりしなやかで強力なソフトロボットに 一般に多層構造の軟質フィルムは、液体の樹脂を硬化させる”濡れた生産法”で作られる。だが、このやり方では、各層が均一にならず、アクチュエーターとしての性能が低下する。
このため、これまで誘電エラストマーを使ったアクチュエーターは単層のものしかなかった。
一方、今回のPHDEは”乾いた生産法”で作られている。
ブレードを使ってフィルムを積層し、紫外線で硬化させる。
例えば、クラゲのようなロボットにジャンプさせることができるし、自重の20倍も重い球をパッと上空へ弾き飛ばすこともできる。
また電圧をオンオフすることで心臓のように伸縮するその様子は、いかにも生物で、人工筋肉を内蔵した未来のソフトロボットがどのように動作するのかイメージさせてくれる。
PHDEを利用すれば、ソフトロボットの移動性能や耐久性を改善させることが可能で、触覚のあるウェアラブルデバイスやハプティックデバイスも誕生するかもしれない。
また今回の乾いた製造プロセスは、マイクロ流体技術・組織工学・微細加工など、ほかのフィルム軟素材に応用できる可能性もあるとのことだ。
この研究は『Science』(2022年7月7日付)に掲載された。
References:Scientists develop durable material for flexible artificial muscles / written by hiroching / edited by / parumo
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スイッチのオンオフに合わせて伸縮する様子は、心臓の鼓動を連想させるほど生き物っぽい。また自重の20倍もある球を跳ね飛ばしたり、クラゲ型ロボットにジャンプさせたりするような力強さもある。
これを見れば、未来のソフトロボットがのように動作するのか、きっとイメージできることだろう。
注目される高弾性エネルギー密度軽量素材 人工筋肉として使われる素材は、機械的なエネルギーを出力でき、強い歪みにも耐えられる丈夫さがなければならない。つまり繰り返し使われても、きちんと形状と強度を保ち続ける必要がある。
こうした条件を満たしそうな候補はいくもあるが、特に注目されるのが「誘電エラストマー」という高弾性エネルギー密度軽量素材だ。
誘電エラストマーは、電気活性高分子と呼ばれる天然あるいは合成の物質で、電場の刺激で大きさや形状が変化する分子で構成されている。電気エネルギーを運動エネルギーに変換してくれるので、「アクチュエーター(エネルギーや電気信号を、物理的運動に変換する機械要素)」として利用できる。
誘電エラストマーは一般に、アクリル系とシリコン系にわけられる。
どちらも一長一短で、アクリル系は強い歪みにも耐えらえるが、あらかじめ引き伸ばしておく必要があり、柔軟性に欠ける。一方、シリコン系は、生産しやすいがアクリル系ほど歪みに強くない。
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Scientists develop durable material for flexible artificial musclesしなやかで強い人工筋肉 今回、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究グループは、市販の化学物質を紫外線で硬化させることで、アクリル系誘電エラストマーを強度や耐久性はそのままに、より柔軟かつ調整可能な素材に改良することに成功した。
「加工可能高性能誘電エラストマー(PHDE)フィルム」は、アクリル酸によって水素結合がうながされるため、より動きやすくなっている一方、ポリマー鎖間の架橋を調整することで、より柔らかく柔軟に仕上がっている。
これを2本の電極で挟めば、電気エネルギーを運動エネルギーに変換するアクチュエーターになる。
1枚1枚のPHDEフィルムの厚さと重さは、人間の髪の毛(厚さ35μm)ほど。何枚も重ね合わせれば、まるで筋肉のように動く。
その出力は小型ロボットやセンサーを動かすには十分なほど力強い。生体の筋肉よりも強い圧力を発揮し、それでいて10倍も柔軟なのだ。
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PHDEで作られた直径1.2センチのクラゲ型ロボット。見事なジャンプを披露する/Credit: Soft Materials Research Lab/UCLAよりしなやかで強力なソフトロボットに 一般に多層構造の軟質フィルムは、液体の樹脂を硬化させる”濡れた生産法”で作られる。だが、このやり方では、各層が均一にならず、アクチュエーターとしての性能が低下する。
このため、これまで誘電エラストマーを使ったアクチュエーターは単層のものしかなかった。
一方、今回のPHDEは”乾いた生産法”で作られている。
ブレードを使ってフィルムを積層し、紫外線で硬化させる。
すると各層が均一になり、アクチュエーターとしてのパワーが増す。だからPHDEは、これまで以上に複雑な動きに対応できる。
例えば、クラゲのようなロボットにジャンプさせることができるし、自重の20倍も重い球をパッと上空へ弾き飛ばすこともできる。
また電圧をオンオフすることで心臓のように伸縮するその様子は、いかにも生物で、人工筋肉を内蔵した未来のソフトロボットがどのように動作するのかイメージさせてくれる。
PHDEを利用すれば、ソフトロボットの移動性能や耐久性を改善させることが可能で、触覚のあるウェアラブルデバイスやハプティックデバイスも誕生するかもしれない。
また今回の乾いた製造プロセスは、マイクロ流体技術・組織工学・微細加工など、ほかのフィルム軟素材に応用できる可能性もあるとのことだ。
この研究は『Science』(2022年7月7日付)に掲載された。
References:Scientists develop durable material for flexible artificial muscles / written by hiroching / edited by / parumo
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