「人類のゆりかご」はこれまで考えられていたよりも100万年以上古い可能性
 地球は、その秘密を簡単には明かしてくれない。人類の進化に大いに関係する化石がたくさん見つかっている、南アフリカの人類化石遺跡群「人類のゆりかご」もしかりだ。


 ここでは、アウストラロピテクス属が最初に発見され、アウストラロピテクス・アフリカヌスやパラントロプス・ロブストゥスなど多数の人類化石が発見されており、長い間研究者たちは、初期の人類の祖先や、長く忘れられていたその親戚たちの化石を研究してきた。

 最近、アメリカ、パデュー大学の地質学者が開発した年代測定器によって、人類のゆりかごの1つである「スタルクフォンテイン洞窟遺跡」で発見された一部の化石の年代が、100万年以上前にさかのぼることがわかった。

 世界一有名な318万年前の化石人骨、アウストラロピテクスの化石、つまりあの"ルーシー"よりも古いことになる。

人類発祥の地、南アフリカの人類化石遺跡群 人類発祥の地として知られている「人類のゆりかご」は、スタルクフォンテイン、スワルトクランス、クロムドライなどの周辺地域からなる、初期のヒト科動物のさまざまな化石が出土した洞窟堆積層がある、南アフリカ人類化石遺跡群のことだ。

 特にスタルクフォンテイン洞窟は、1936年に初めて大人のアウストラロピテクスの化石が発見されて、一躍有名になった。

 ヒト科動物には、私たちヒトやその祖先が含まれるが、そのほかの大型類人猿は入らない。これ以降、有名なアウストラロピテクス・アフリカヌスのミセス・プレスや、リトル・フットのほぼ完璧な全身骨格など、アウストラロピテクスの化石が続々と見つかった。

 古人類学者たちが、何十年もスタルクフォンテインやほかの「人類のゆりかご」の洞窟遺跡を研究し、この400万年にわたる人類と環境進化を明らかにしようとしている。

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南アフリカで発見された、アウストラロピテクス・アフリカヌス「ミセスプレス」の標本、 / image credit:Jose Braga; Didier Descouens / WIKI commons年代測定が難しい人類の起源の化石 インディアナ州パデュー大学、地球・大気・惑星科学のダリル・グレンジャー教授は、この国際研究チームの一員で、こうした洞窟堆積層の地質年代測定を専門としている。

 博士課程のときに、埋もれた洞窟の堆積物を年代測定する方法を考案し、現在では世界中の研究者がこの方法を採用している。

 これまで、スタルクフォンテインから出たリトル・フットの骨格をおよそ370万年前のものと推定したが、この遺跡のほかの化石の年代については議論が続いている。

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スタルクフォンテイン洞窟 photo by iStock
これまで発見された旧人類の化石は100万年以上古い可能性 『National Academy of Sciences』の会報に発表された研究によると、グレンジャー教授と、ヨハネスブルグのヴィトヴァーテルスラント大学、フランスのトゥールーズ・ジャン・ジョレス大学の研究者チームは、リトル・フットだけでなく、アウストラロピテクスがいたすべての洞窟堆積物が、これまで主張されていた200~250万年前ではなく、もっと古い340~370万年前にさかのぼるものだということを発見した。


 このため、これらの化石はアウストラロピテクス時代の終末期ではなく、初期のものと位置づけられる。

 エチオピア出身の「ルーシー」は、320万年前の人で、彼女の種であるアウストラピテクス・アフリカヌスは、およそ390万年にさかのぼることができる。

 スタルクフォンテイン洞窟は、深く複雑な構造になっていて、ここに住んでいた人類の祖先の長い歴史が保存されている。

 とはいえ、岩や骨は深い穴の底に落ちてきたもので、洞窟堆積物の年代を測定する方法がほとんどなかったため、ここの化石の年代を理解するのはなかなか一筋縄ではいかない。

 人類の祖先の化石がたくさん見つかっている東アフリカは、大地溝帯の火山が年代測定可能な火山灰層を形成している。

 研究者たちは、この火山灰層を利用して、化石の年代を割り出した。南アではとくに洞窟では、化石自体はそれほど豊富ではない。

 骨の周辺で見つかった動物の化石や洞窟に堆積した方解石の流れ石などを利用して、年代を推定するのが一般的だった。

 しかし、洞窟の中で骨が移動したり、古い堆積物の中に若い流れ石が混じることもあり、この方法では正確なデータが得られない可能性があった。

 より正確な方法は、化石が見つかった実際の岩を年代測定することだ。角礫岩と呼ばれる化石が埋め込まれたコンクリート状の母岩を、グレンジャー教授たちは分析した。
スタルクフォンテインは、ほかのどの場所よりもアウストラロピテクスの化石が出るところですが、年代を正確に特定するのは難しい。


化石が見つかった場所近くの動物の化石を調べたり、流れ石のような洞窟の特色を示す年代を比較したりして、さまざまな年代の範囲を割り出してきました。

今回のデータは、これまでの論争に決着つけることになります。これらの化石は、私たちがもともと考えていたよりも、ずっと古いものであることがわかったのですから
 グレンジャー教授ら研究チームは、加速器質量分析装置を使って、岩石中の放射性核種を測定し、さらに、地質図を作成すると同時に、洞窟堆積物がどのように蓄積されるかを熟知して、スタルクフォンテインのアウストラロピテクスの化石が出た堆積物の年代を決定した。

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スタルクフォンテインで見つかったアウストラロピテクスの4つの異なる頭蓋骨 / image credit:Jason Heaton/Ronald Clarke/Ditsong Museum of Natural History宇宙起源核種から化石の年代を割り出す グレンジャー教授とパデュー大学の希少同位体測定研究所(PRIMEラボ)の研究グループは、いわゆる宇宙線起源の核種や、化石、地質の特徴、岩石の歴史について、なにを明らかにできるかを研究している。

 宇宙線とは常に地球に降り注いでいる高エネルギー粒子のこと。この宇宙線によって作り出される極めて希少な同位体が、宇宙線起源核種だ。

 宇宙からやってくるこうした宇宙線は、地表にある岩石内部で核反応を起こし、鉱物結晶内に新たな放射性同位体を作り出すのに十分なエネルギーを持っている。

 例えば、アルミニウム26は、中性子を失ったアルミニウムが、何百万年もかけてゆっくりと崩壊し、マグネシウムに変化したもの。

 アルミニウム26は、岩石が地表に露出していれば生成されるが、洞窟のような場所で深く埋まってしまった後では生成されないため、PRIMEラボの研究者たちは、アルミニウム26と別の宇宙起源核種ベリリウム10のレベルを同時に測定することによって、洞窟堆積物(とその中にある化石)の年代を割り出すことができた。

 宇宙起源核種をベースにした、スタルクフォルテインの新たなデータに加えて、洞窟堆積物の丁寧な地図を作ったが、1930年代と40年代の発掘調査中に異なる年代の動物の化石が紛れ混んでしまい、以前の年代に関して何十年にもわたる混乱につながった。

 「私が望むのは、この年代測定法が信頼できる結果をもたらすことを、人々に納得してもらうことです」グレンジャー教授は言う。

「この方法を使えば、アフリカだけでなく、世界中のほかの場所でも、古代の人類とその親戚をより正確な年代に位置づけることができるのです」

 化石の年代が重要なのは、当時の生活風景についての研究者の理解に影響を与えるからだ。


 人類はどこでどのように進化してきたのか、どうやって生態系に適合したのか、もっとも近い親類は誰なのか、また誰だったのか、これらは差し迫った複雑な問題だ。

 スタルクフォンテインの化石を正しい文脈に位置づけることは、このパズル全体を解き明かすための第一歩なのだ。

References:Fossils in the 'Cradle of Humankind' may be more than a million years older than previously thought / written by konohazuku / edited by / parumo

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