古代の不思議、1600年経っても錆びない「デリーの鉄柱」
 インド、デリー郊外にあるイスラムモスクには、古代の不思議がある。それは、1600年前の昔から錆びることのない鉄の柱だ。


 クトゥブ・ミナール、日本ではデリーの鉄柱と呼ばれるこの柱は、高さ7.21m、地下に埋もれている部分は約2m、直径44cm、重さは10トン近くある鉄柱だ。

 1500年以上前の古代インド、グプタ朝最強の皇帝のひとりとされる、チャンドラグプタ2世(在位:376年 - 415年)時代に建てられたものだ。

 ずっと戸外にあるのに、錆(さび)の侵食がほとんどない。数十年もの間、世界中の専門家や金属加工業者がこの特異な性質について、いろいろ推測してきたが、2003年についにその謎が解けた。

いったいなぜ?1600年経っても錆びない鉄の柱 インド・デリー市郊外のイスラム教の宗教施設クトゥブ・ミナール内にある、錆びない柱「デリーの鉄柱」は、地球外の謎の金属でできているとか、その時代の文明にそぐわない高度な技術で作られたものと考えられていた。

 インド工科大学カーンプル校のバラスブラマニアム博士は、その謎を解明し『Current Science』誌に発表した。

 バラスブラマニアム博士によると、この柱は古代インドの冶金技術の生きた証だという。

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金属と錆の間に付着してバリアを形成する層の存在 鋳鉄の構造には、金属と錆の間に付着してバリアを形成する「ミサワイト」と呼ばれる非晶質オキシ水酸化物の保護層があるのだと説明する。

 インドではかつて、鉄を精製する際にミミセンナというリンを豊富に含む植物を加えていた記録がある。ミサワイトは鉄に含まれるリンの含有量が多いと形成されるらしい。

 現代の鉄は、リンの含有量は0.05%以下だが、このテリーの鉄柱は1%だ。

 当時はリンを含んだ鉄を加熱しながらハンマーで叩くことで、鉄の表面にリンを押し出すことで、ミサワイトのバリアが形成され、錆に強い鉄柱が完成するという。


 ありがちなことだが、こうした古代の驚異は、人間のやることに対しては非常に弱いところがある。

 この鉄柱を抱きかかえ、指先で障れると幸運がおとずれるという評判がたち、年々大勢の人が押し寄せた。そのため、柱の根元近くが見るからに変色してしまった。

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 ミサワイトは、鉄の防錆に非常に効果があるが、その層は非常に薄く、人間が常に触ることによって、1600年もこの鉄柱を守ってきたミサワイトを、知らず知らずのうちにこすり落としてしまっていたのだ。

 幸いなことに、当局がその危険性に気づいて、鉄柱のまわりに防護柵を築いて、人々が触れないように対策をとった。

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Great Iron Pillar Delhi - Non-rusting Iron pillar of India - Ancient marvel of India -Medieval India
References:Ancient Wonder – The 1,600-Year-Old Iron Pillar That Refuses to Rust / written by konohazuku / edited by / parumo

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