その理由は、可視光の中で人間が最も知覚しやすい色が緑色であることから緑色に調整されているのだ。
だが次世代の暗視ゴーグルなら、肉眼では見通せない真っ暗闇を、まるで昼間のようにフルカラーで再現してくれるという。
『https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0265185』(2022年4月6日付)に掲載された最新の研究では、AIに赤外線の波長から可視光を予測させることに成功している。
軍用のフルカラー暗視ゴーグルにつながるだけでなく、目の治療や美術品修復といった可視光が邪魔になる現場でも便利な技術であるそうだ。
なぜ暗視ゴーグルは緑なのか? 暗視ゴーグルの仕組みを理解するために、まず人間の視覚の仕組みから説明しよう。人間の目に見える「可視光」の波長は、380ナノメートル(紫に見える)から740ナノメートル(赤)の範囲にある。
これらの波長の光を受け止めた目の「錐体細胞(すいたいさいぼう)」は、これをもとに電気シグナルを脳に伝え、そこで色として認識される。
また目にはもう1つ「桿体細胞(かんたいさいぼう)」というセンサーもある。こちらは色は見えないが、光の強弱に反応し、明暗を認識することができる。私たちが暗い場所でも、ものの形を認識できるのはそのおかげだ。
とは言え、明かりのない本当に真っ暗なところでは、私たちには何も見えない。そこで「赤外線」を利用する。
肉眼ではとらえられない赤外線を検出し、それを映像にする装置が、「暗視ゴーグル」や「暗視装置(ナイトビジョン)」と呼ばれるものだ。
従来の暗視ゴーグルは、視界を緑色でのみ表示する。これは可視光と違って赤外線にはそもそも肉眼が認識できる色がないことと、可視光の中で一番認識しやすい色が緑であることが理由だ。
緑以外で視界を表示するために、超高感度カメラで可視光を検出し、増幅するというやり方もある。しかし、これは目のような敏感な組織を傷つけてしまう恐れがある。
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AIに赤外線から可視光を予測させる そこで考案されたのが、AIに暗闇を見通す手助けをしてもらうというアイデアだ。
可視光と赤外線が写る写真をもとに、AI(ニューラルネットワーク)にさまざまな色情報を学習させ、赤外線から可視光を予測させるのだ。
カリフォルニア大学アーバイン校のアンドリュー・ブラウン博士は、「ニューラルネットワークが学習したやり方は、ちょうど100枚の顔写真を見せ、写真1枚1枚の鼻に丸をつけると、鼻と認識できるようになる、といった感じだ」と説明する。
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AIは可視光と赤外線の画像から学習し、赤外線から可視光を予測する / image credit:Andrew Browne
こうして学習したAIに暗視ゴーグルがとらえた赤外線画像を見せ、可視光の画像を予測させてみると、まずまずの結果が得られたという。
今の時点では完全ではない。元の画像と予測された画像を比較すると、色に多少の違いはある。それでもその違いを人間が区別するいことはできないという。
ブラウン博士は、「並べれば、そこかしこに食い違いはある」「それでも基本的には判別することはできず、誰かがそれを見てAIに予測された画像だとは思わないだろう」と説明する。
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軍事だけでなく、医療や美術にも応用可能 フルカラー暗視ゴーグルの実現へ向けた大きな一歩ではあるが、まだ概念実証の段階の技術で、今のところ暗視AIの予測は学習したデータに限定されるという。
「例えば、目的が絵の具の見本をすべて集めて色を予測することなら、数に限りある見本をもとに良好な性能を発揮するだろう。だが現実世界でやろうとすれば、与えられたデータの範囲のことしかできない」と、ブラウン博士は言う。
さらなる性能向上のために、研究グループは、より多くのデータセットを集め、ニューラルネットワークのハードウェア自体の改良も進めている。
こうした技術はもちろん軍が関心を示すだろうが、敏感な網膜組織を光による損傷から守らねばならない目の手術や、可視光では劣化が進んでしまう美術品の修復にも応用できるだろうとのことだ。
ブラウン博士は、「人工ニューラルネットワークは、さまざまな科学的応用をサポートするだろう。医療でも強力なツールとなり、医師を手助けできる」「新技術の文脈では、その技術の特定のタスクを遂行する性能をアップさせることができるだろう」と話している。
References:Machine Learning Turns Monochromatic Night Vision Into a Rainbow of Colors / written by hiroching / edited by / parumo
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