
もっとも古い微生物の化石によるならば、地球の生命は少なくとも35億年前には登場していた。それは今日の我々へと続く壮大な物語の始まりだ。
だが決して順風満帆な旅路だったわけではない。生物はこれまで何度も失敗と挫折を繰り返し、どうにか命のバトンを繋いできた。時に地球上にいた生物のほとんどが姿を消すような悲惨な出来事もあった。
地球史上、主な大量絶滅はこれまで5度繰り返されたことがわかっており、「ビッグファイブ」と呼ばれている。
過去の失敗から学ぶことは、我々が未来を生きるためにも大切なことだ。ここでは過去に大量絶滅が起きた原因について、今わかっていることを見ていこう。
1. オルドビス紀末:O-S境界(4億4300万年前) オルドビス紀とシルル紀を分ける最初の大量絶滅だ。この時代、ほとんどの生き物はまだ海で暮らしていた。軟体動物や三葉虫のような硬い殻を持つ単純な生き物が主役だった時代だ。
現代のほぼ全ての脊椎動物の祖先である、アゴを持つ魚が現れたのもこの頃。一番古い地上の植物の化石もこの時代にまでさかのぼる。
オルドビス紀とシルル紀の境目となる「O-S境界」では海洋生物の85%が絶滅した。
当時、陸地のほとんどは南半球にあった。そのためもっとも有力な説は、南半球で起きた氷河の形成と後退が絶滅を引き起こした原因とされている。
氷河が形成されたことで、一部の種が絶滅しつつも、寒さと乾燥に適応した種は生き残った。
しかし今度は氷河が解け出すと、水没や気温の上昇、あるいは大気組成の変化などが起きて、せっかく生き残った種も死に絶えてしまった。
そもそも氷河が形成された原因については、岩石の風化・隕石の落下・宇宙からのガンマ線など諸説ある。
だが、億5000万年以上前の海底はほとんど残されていない。主に海底で起きたことで、大陸もまた移動してしまっているため、原因を解明できるような手がかりはほとんど残されてない。
なおこの大量絶滅によって、生命が進化の方向性を変えることはなかった。このとき存在した形態(脊椎動物の祖先も含む)は、数百万年後にほぼ元通りに回復している。
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オルドビス紀後期の大量絶滅(オルドビス紀-シルル紀)2. デボン紀末:F-F境界(3億7200万年~3億5900万年前) デボン紀は、植物と昆虫が陸上に進出した時代だ。
植物は種と維管束系(水の輸送・貯蔵を担う器官)を発達させ、まだ草食動物との競争がなかったことから、爆発的に成長した。これによって大気に含まれる二酸化炭素が減り、寒冷化が引き起こされた。
なお、最初の両生類の祖先や、爬虫類・鳥類・哺乳類の祖先である四肢動物が地上を支配し始めるのは、このデボン紀末の大量絶滅が終わってからのことだ。
「F-F境界」(約3億7220万年前の後期デボン紀のフラニアン期とファメニアン期の境界)はまず「ケルワッサー事変(Kellwasser Event)」で始まり、これがゆっくりと数百万年続いた後に、「ハンゲンベルグ事変(Hangenberg Event)」で終わりを迎えたと考えられている。
といっても、実際どのような現象だったのかよくわかっていない。
ヨーロッパではこの時代にできた直径50キロものクレーターが見つかっており、当時大きな隕石が衝突しただろうことがわかっている。
この時期から数百万年の間にさらに2つの隕石が落下しているようだ。また付近で起きた超新星爆発によって、オゾン層が減少したという説もある。
しかしいずれも状況証拠でしかなく、はっきりと結論付けるのは難しい。なにしろ、そもそも大量絶滅など起きていないという見解もあるくらいだ。
それによれば、この時期は自然に起きた絶滅が少々多く、かつ生物の進化も少し遅れただけなのだという。
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What If You Lived in the Devonian Period?3. ペルム紀-三畳紀:P-T境界(2億5200万年前) 2億5200万年前、歴史上最大の大量絶滅が起きた。これによって海洋生物の90~96%(諸説あり)、陸上脊椎動物の70%以上が絶滅したとされている。
約2億5,100万年前の古生代と中生代の境目となる「P-T境界」時期の化石記録によれば、いくつかのタイプの動物は完全に姿を消した。
空の王者はそうした昆虫で、それらを脅かす鳥や空飛ぶ爬虫類はまだいなかった。
大量絶滅の原因はよくわかっていない。それを知る手がかりは大陸の移動によって深く埋もれ、散逸してしまったからだ。
しかし地質学的には数百万年以下と、かなり短期間で起きている。
大気に含まれる二酸化炭素の同位体の変化、現在の中国とシベリアにあたる地域で大規模な火山噴火が起きたらしいこと、炭層(石炭でできた堆積岩)が燃えた可能性、大量に増殖した細菌の代謝によって大気の組成が変化した可能性など、地質学的な激変の痕跡がいくつも見つかっている。
ただし、具体的にどれが原因なのかは特定されておらず、こうした要因が組み合わさることで温暖化が進んだという意見も多い。
いずれにせよ、この大量絶滅で生命は激減。地上の生き物が新たな姿で復活するまで、数百万年の歳月を要した。
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The Great Dying: The Permian Mass Extinction4. 三畳紀-ジュラ紀:T-J境界(2億100万年前) 三畳紀(トリアス紀)とジュラ紀の境目にあたる「T-J境界」でもまた大量絶滅が起きたが、それまでに比べればマシだった。
この時代の地上を支配していたのは、主竜類というワニのような爬虫類だ。だがT-J境界ではほとんどの主竜類が消え、その一グループだった恐竜と鳥類が台頭するきっかけになる。
続くジュラ紀は、恐竜が主役の時代だ。初期の哺乳類もT-J境界を生き延び、ゆっくりではあるが進化を続けた。ただし昼間は恐竜の天下で、哺乳類は暗闇の中で虫を食べていたのかもしれない。
この時期の大量絶滅の原因としてもっとも有力なのは、「中央大西洋マグマ帯」で起きた火山活動による大気の変化だ。
現代の南北アメリカとアフリカが分裂し始めたことで、マグマが噴出。これらの大陸は漂流しながら、やがて大西洋になる地域の一部を運んで行った。
隕石が原因という説もあるが、最近ではあまり支持されていない。またデボン紀の絶滅のように、特に激変があったわけではなく、繁栄するより死ぬペースが少し速かっただけという可能性もある。
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Triassic–Jurassic extinction event5. 白亜紀-古第三紀:K-Pg境界(6600万年前) 恐竜が絶滅し、現代(新生代)が始まった時代だ。ほかの大量絶滅と違い、白亜紀と第三紀の間にあたる「K-Pg境界」の大量絶滅の原因はほぼ解明されている。
地殻内ではかなり稀なイリジウムが大量に含まれた地層が、世界中で見つかっているからだ。
イリジウムは隕石ではよく見られる元素だ。
さらに2016年、ユカタン半島にあるチクシュルーブ・クレーターで掘削調査を行ったところ、イリジウムをはじめとする元素の異常が確認され、世界各地のイリジウム層と結びつけられることになった。
地質学的な歴史は推測と再構築の繰り返しであるため、過去の出来事が完全に解明されることはほとんどない。
ある種の化石が消えた時期を指摘することはできる。地球の大気が変化した時期・火山活動による堆積物・隕石の衝突などを調べ、さまざまな地質学的な痕跡について説明することもできる。
しかしこうした状況証拠から大量絶滅が起きた理由を断定するのは御法度だが、世界に分布するイリジウム層によって特徴づけられるこのK-Pg境界に限っては、恐竜を消し去った大量絶滅の原因を、唯一最終的に結論づけることができる。
いずれにせよ、この後生命の舵取りは現代の我々へと向かうことになる。
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Cretaceous–Paleogene extinction event
そして今、すでに6度目の大量絶滅は始まっているとする科学者もいる。無脊椎動物で調査を行ったところ、特に陸(島)と淡水で、大量絶滅が進行している可能性が高いという。
References:What caused Earth's 5 mass extinctions? - Big Think / written by hiroching / edited by / parumo
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だが決して順風満帆な旅路だったわけではない。生物はこれまで何度も失敗と挫折を繰り返し、どうにか命のバトンを繋いできた。時に地球上にいた生物のほとんどが姿を消すような悲惨な出来事もあった。
地球史上、主な大量絶滅はこれまで5度繰り返されたことがわかっており、「ビッグファイブ」と呼ばれている。
過去の失敗から学ぶことは、我々が未来を生きるためにも大切なことだ。ここでは過去に大量絶滅が起きた原因について、今わかっていることを見ていこう。
1. オルドビス紀末:O-S境界(4億4300万年前) オルドビス紀とシルル紀を分ける最初の大量絶滅だ。この時代、ほとんどの生き物はまだ海で暮らしていた。軟体動物や三葉虫のような硬い殻を持つ単純な生き物が主役だった時代だ。
現代のほぼ全ての脊椎動物の祖先である、アゴを持つ魚が現れたのもこの頃。一番古い地上の植物の化石もこの時代にまでさかのぼる。
オルドビス紀とシルル紀の境目となる「O-S境界」では海洋生物の85%が絶滅した。
当時、陸地のほとんどは南半球にあった。そのためもっとも有力な説は、南半球で起きた氷河の形成と後退が絶滅を引き起こした原因とされている。
氷河が形成されたことで、一部の種が絶滅しつつも、寒さと乾燥に適応した種は生き残った。
しかし今度は氷河が解け出すと、水没や気温の上昇、あるいは大気組成の変化などが起きて、せっかく生き残った種も死に絶えてしまった。
そもそも氷河が形成された原因については、岩石の風化・隕石の落下・宇宙からのガンマ線など諸説ある。
だが、億5000万年以上前の海底はほとんど残されていない。主に海底で起きたことで、大陸もまた移動してしまっているため、原因を解明できるような手がかりはほとんど残されてない。
なおこの大量絶滅によって、生命が進化の方向性を変えることはなかった。このとき存在した形態(脊椎動物の祖先も含む)は、数百万年後にほぼ元通りに回復している。
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オルドビス紀後期の大量絶滅(オルドビス紀-シルル紀)2. デボン紀末:F-F境界(3億7200万年~3億5900万年前) デボン紀は、植物と昆虫が陸上に進出した時代だ。
植物は種と維管束系(水の輸送・貯蔵を担う器官)を発達させ、まだ草食動物との競争がなかったことから、爆発的に成長した。これによって大気に含まれる二酸化炭素が減り、寒冷化が引き起こされた。
なお、最初の両生類の祖先や、爬虫類・鳥類・哺乳類の祖先である四肢動物が地上を支配し始めるのは、このデボン紀末の大量絶滅が終わってからのことだ。
「F-F境界」(約3億7220万年前の後期デボン紀のフラニアン期とファメニアン期の境界)はまず「ケルワッサー事変(Kellwasser Event)」で始まり、これがゆっくりと数百万年続いた後に、「ハンゲンベルグ事変(Hangenberg Event)」で終わりを迎えたと考えられている。
といっても、実際どのような現象だったのかよくわかっていない。
ヨーロッパではこの時代にできた直径50キロものクレーターが見つかっており、当時大きな隕石が衝突しただろうことがわかっている。
この時期から数百万年の間にさらに2つの隕石が落下しているようだ。また付近で起きた超新星爆発によって、オゾン層が減少したという説もある。
しかしいずれも状況証拠でしかなく、はっきりと結論付けるのは難しい。なにしろ、そもそも大量絶滅など起きていないという見解もあるくらいだ。
それによれば、この時期は自然に起きた絶滅が少々多く、かつ生物の進化も少し遅れただけなのだという。
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What If You Lived in the Devonian Period?3. ペルム紀-三畳紀:P-T境界(2億5200万年前) 2億5200万年前、歴史上最大の大量絶滅が起きた。これによって海洋生物の90~96%(諸説あり)、陸上脊椎動物の70%以上が絶滅したとされている。
約2億5,100万年前の古生代と中生代の境目となる「P-T境界」時期の化石記録によれば、いくつかのタイプの動物は完全に姿を消した。
超大陸パンゲアが分裂し始めた時期で、地上は両生類・初期の爬虫類・巨大な昆虫によって支配されていた。
空の王者はそうした昆虫で、それらを脅かす鳥や空飛ぶ爬虫類はまだいなかった。
大量絶滅の原因はよくわかっていない。それを知る手がかりは大陸の移動によって深く埋もれ、散逸してしまったからだ。
しかし地質学的には数百万年以下と、かなり短期間で起きている。
大気に含まれる二酸化炭素の同位体の変化、現在の中国とシベリアにあたる地域で大規模な火山噴火が起きたらしいこと、炭層(石炭でできた堆積岩)が燃えた可能性、大量に増殖した細菌の代謝によって大気の組成が変化した可能性など、地質学的な激変の痕跡がいくつも見つかっている。
ただし、具体的にどれが原因なのかは特定されておらず、こうした要因が組み合わさることで温暖化が進んだという意見も多い。
いずれにせよ、この大量絶滅で生命は激減。地上の生き物が新たな姿で復活するまで、数百万年の歳月を要した。
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The Great Dying: The Permian Mass Extinction4. 三畳紀-ジュラ紀:T-J境界(2億100万年前) 三畳紀(トリアス紀)とジュラ紀の境目にあたる「T-J境界」でもまた大量絶滅が起きたが、それまでに比べればマシだった。
この時代の地上を支配していたのは、主竜類というワニのような爬虫類だ。だがT-J境界ではほとんどの主竜類が消え、その一グループだった恐竜と鳥類が台頭するきっかけになる。
続くジュラ紀は、恐竜が主役の時代だ。初期の哺乳類もT-J境界を生き延び、ゆっくりではあるが進化を続けた。ただし昼間は恐竜の天下で、哺乳類は暗闇の中で虫を食べていたのかもしれない。
この時期の大量絶滅の原因としてもっとも有力なのは、「中央大西洋マグマ帯」で起きた火山活動による大気の変化だ。
現代の南北アメリカとアフリカが分裂し始めたことで、マグマが噴出。これらの大陸は漂流しながら、やがて大西洋になる地域の一部を運んで行った。
隕石が原因という説もあるが、最近ではあまり支持されていない。またデボン紀の絶滅のように、特に激変があったわけではなく、繁栄するより死ぬペースが少し速かっただけという可能性もある。
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Triassic–Jurassic extinction event5. 白亜紀-古第三紀:K-Pg境界(6600万年前) 恐竜が絶滅し、現代(新生代)が始まった時代だ。ほかの大量絶滅と違い、白亜紀と第三紀の間にあたる「K-Pg境界」の大量絶滅の原因はほぼ解明されている。
地殻内ではかなり稀なイリジウムが大量に含まれた地層が、世界中で見つかっているからだ。
イリジウムは隕石ではよく見られる元素だ。
そうしたイリジウム地層の時期は、K-Pg境界と一致する。
さらに2016年、ユカタン半島にあるチクシュルーブ・クレーターで掘削調査を行ったところ、イリジウムをはじめとする元素の異常が確認され、世界各地のイリジウム層と結びつけられることになった。
地質学的な歴史は推測と再構築の繰り返しであるため、過去の出来事が完全に解明されることはほとんどない。
ある種の化石が消えた時期を指摘することはできる。地球の大気が変化した時期・火山活動による堆積物・隕石の衝突などを調べ、さまざまな地質学的な痕跡について説明することもできる。
しかしこうした状況証拠から大量絶滅が起きた理由を断定するのは御法度だが、世界に分布するイリジウム層によって特徴づけられるこのK-Pg境界に限っては、恐竜を消し去った大量絶滅の原因を、唯一最終的に結論づけることができる。
いずれにせよ、この後生命の舵取りは現代の我々へと向かうことになる。
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Cretaceous–Paleogene extinction event
そして今、すでに6度目の大量絶滅は始まっているとする科学者もいる。無脊椎動物で調査を行ったところ、特に陸(島)と淡水で、大量絶滅が進行している可能性が高いという。
References:What caused Earth's 5 mass extinctions? - Big Think / written by hiroching / edited by / parumo
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