
黄色い眉のような冠羽が魅力のニュージーランドの固有種、絶滅危惧種でもあるマカロニペンギン属のシュレーターペンギンには不思議な生態がある。
一夫一婦制の夫婦は、せっかく産んだ最初の卵を育てようとしないのだ。
それはいったいなぜなのか?その謎が新たな研究により明らかとなった。
1個目と2個目の卵の大きさがかなり違う 『PLOS One』(2022年10月12日付)に掲載された研究では、1個目の卵を捨ててしまう謎の解明が試みられた。
ニュージーランド、オタゴ大学のロイド・デイビス教授は、1998年からずっとマカロニペンギン属のシュレーターペンギンの不思議な産卵を観察してきた人物だ。
最近では、このペンギンの繁殖地であるバウンティ諸島とアンティポデス諸島で、250時間にわたる観察をおこなっている。
1990年の研究では97%の夫婦が4日間の抱卵のうちに最初の卵をなくし、うち58%のペアは2番目の卵を産んだ日に最初の卵をなくしたことが明らかとなっている。
今回の研究結果によると、45%のペンギンが最初の卵を温めず、ただ眺めているだけだったという。
そこでデイビス教授らは、158羽のペンギンの営巣地で産まれた卵を調べてみることにした。すると最初の卵と2つ目の卵の大きさがまったく違うことが判明したのだ。
一般的な鳥の場合、後に産まれた卵ほど小さい傾向にある。
ところが、シュレーターペンギンの2つ目の卵は、1つ目より平均85%も大きいのだという。この大きさの違いは、全鳥類の中で最大である。
[画像を見る]
シュレーターペンギンが最初に産んだ卵 (左) と 2番目に産んだ卵の大きさを比較/ image credit: Lloyd Davis最初の卵は小さくて、転がり落ちてしまう危険性が高いから どうやら、この卵の大きさの違いが、最初の卵を見捨てるという不思議な習性と関係があるようだ。
たいていのペンギンは、石や小枝・草といったもので巣を作り、そこに卵を産む。ところがシュレーターペンギンの産卵場所は、卵が転がり落ちる危険がある傾斜のある岩場だ。
だが卵が小さいとうまく抱えることができない。つまり小さな卵が落下して割れてしまうリスクは非常に高い。その為手間をかけてまで、生まれにくい卵を育てようとしないのだ。
これを軽減するために、科学者たちは14の巣の周りに「石の輪」を設置し、卵が転がり落ちないようにした。それでもペンギンは最初に産んだ卵を育てようとはしなかったという。
シュレーターペンギンはオスとメスが分担し、交互で卵を温める。抱卵は約35日程度だそうだ。
[動画を見る]
ニュージーランド、アンティポデス諸島のシュレーターペンギンシュレーターペンギンのオスの性格とも関係か? 1個目の小さな卵を放置するというこの習性は、シュレーターペンギンのオスの性格とも関係しているかもしれない。
通常のペンギンのオスは、繁殖期が始まるとテストステロンが増え、メスは少なくなる。
繁殖期になってもオスのテストステロンがあまり増えていなかった一方、メスはオスと同等かそれ以上だったのだ。
動物の多くは、繁殖期になるとオス同士が攻撃的になりケンカをする。シュレーターペンギンのオスはそれと対照的で、繁殖期でも非常におとなしく従順なのだ
「ほかの種ではコロニー内でオス同士がケンカしますが、シュレーターペンギンの場合、ケンカなどせず突っ立ったままです」(デイビス教授)
オスはリスクを冒してまで卵を守ろうとしないのかもしれない。
[画像を見る]
最初の卵は放置するという奇妙な習性をもつシュレーターペンギン / image credit:Lloyd Davis
孤立した環境で暮らすシュレーターペンギンは、特に研究が進んでいないペンギンの仲間だ。
人里離れた環境で暮らしていることが幸いして、人間の活動からはある程度守られているが、気候変動などの影響で個体数が減少し、絶滅危惧種に指定されている。
だからこそ、手遅れになる前にこのペンギンについてもっと知ることが急務であると、デイビス教授は語っている。
References:In 'bizarre behavior,' New Zealand penguins lay one egg, reject it, and then lay another. Now, scientists know why. | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
一夫一婦制の夫婦は、せっかく産んだ最初の卵を育てようとしないのだ。
産卵には多くのエネルギーが必要なのにもかかわらず、半数近くの夫婦は1個目の卵はを放棄し、2個目の卵をあたため、孵化させようとする。
それはいったいなぜなのか?その謎が新たな研究により明らかとなった。
1個目と2個目の卵の大きさがかなり違う 『PLOS One』(2022年10月12日付)に掲載された研究では、1個目の卵を捨ててしまう謎の解明が試みられた。
ニュージーランド、オタゴ大学のロイド・デイビス教授は、1998年からずっとマカロニペンギン属のシュレーターペンギンの不思議な産卵を観察してきた人物だ。
最近では、このペンギンの繁殖地であるバウンティ諸島とアンティポデス諸島で、250時間にわたる観察をおこなっている。
1990年の研究では97%の夫婦が4日間の抱卵のうちに最初の卵をなくし、うち58%のペアは2番目の卵を産んだ日に最初の卵をなくしたことが明らかとなっている。
今回の研究結果によると、45%のペンギンが最初の卵を温めず、ただ眺めているだけだったという。
そこでデイビス教授らは、158羽のペンギンの営巣地で産まれた卵を調べてみることにした。すると最初の卵と2つ目の卵の大きさがまったく違うことが判明したのだ。
一般的な鳥の場合、後に産まれた卵ほど小さい傾向にある。
ところが、シュレーターペンギンの2つ目の卵は、1つ目より平均85%も大きいのだという。この大きさの違いは、全鳥類の中で最大である。
[画像を見る]
シュレーターペンギンが最初に産んだ卵 (左) と 2番目に産んだ卵の大きさを比較/ image credit: Lloyd Davis最初の卵は小さくて、転がり落ちてしまう危険性が高いから どうやら、この卵の大きさの違いが、最初の卵を見捨てるという不思議な習性と関係があるようだ。
たいていのペンギンは、石や小枝・草といったもので巣を作り、そこに卵を産む。ところがシュレーターペンギンの産卵場所は、卵が転がり落ちる危険がある傾斜のある岩場だ。
だが卵が小さいとうまく抱えることができない。つまり小さな卵が落下して割れてしまうリスクは非常に高い。その為手間をかけてまで、生まれにくい卵を育てようとしないのだ。
これを軽減するために、科学者たちは14の巣の周りに「石の輪」を設置し、卵が転がり落ちないようにした。それでもペンギンは最初に産んだ卵を育てようとはしなかったという。
シュレーターペンギンはオスとメスが分担し、交互で卵を温める。抱卵は約35日程度だそうだ。
[動画を見る]
ニュージーランド、アンティポデス諸島のシュレーターペンギンシュレーターペンギンのオスの性格とも関係か? 1個目の小さな卵を放置するというこの習性は、シュレーターペンギンのオスの性格とも関係しているかもしれない。
通常のペンギンのオスは、繁殖期が始まるとテストステロンが増え、メスは少なくなる。
ところが、シュレーターペンギンの血液を調べたところ、意外なことが明らかになった。
繁殖期になってもオスのテストステロンがあまり増えていなかった一方、メスはオスと同等かそれ以上だったのだ。
動物の多くは、繁殖期になるとオス同士が攻撃的になりケンカをする。シュレーターペンギンのオスはそれと対照的で、繁殖期でも非常におとなしく従順なのだ
「ほかの種ではコロニー内でオス同士がケンカしますが、シュレーターペンギンの場合、ケンカなどせず突っ立ったままです」(デイビス教授)
オスはリスクを冒してまで卵を守ろうとしないのかもしれない。
[画像を見る]
最初の卵は放置するという奇妙な習性をもつシュレーターペンギン / image credit:Lloyd Davis
孤立した環境で暮らすシュレーターペンギンは、特に研究が進んでいないペンギンの仲間だ。
人里離れた環境で暮らしていることが幸いして、人間の活動からはある程度守られているが、気候変動などの影響で個体数が減少し、絶滅危惧種に指定されている。
だからこそ、手遅れになる前にこのペンギンについてもっと知ることが急務であると、デイビス教授は語っている。
References:In 'bizarre behavior,' New Zealand penguins lay one egg, reject it, and then lay another. Now, scientists know why. | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
編集部おすすめ