コウモリはメタラー。低音のうなり声「デスボイス」で仲間とコミュニケーションをとっていた
 どうやらコウモリはメタラーなのかもしれない。デスメタルのデスボイスで仲間とコミュニケーションしているようだ。


 新しい研究によると、コウモリはデスメタルのボーカリストと同じように喉を振動させて唸り声のような低音を出しているのだそうだ。

 コウモリがデスボイスで何をシャウトしているのかは今のところ不明だ。

 それでもデスボイスの低音からエコーローケーションの超音波まで、コウモリが人間の歌手顔負けの広い音域の持ち主であることがうかがえる事実だ。

デスボイスが出る仕組み 低音で唸るような響きが特徴的なデスメタルのデスボイスは、「仮声帯(かせいたい)」という喉の構造を震わせることで出される。

 ”仮”と呼ばれるのは、これを震わせて音を出せるのだが、通常の会話や歌では使われないためだ。

 喉頭蓋の付着部のすぐ下、声帯突起のすぐ上にあって、呼吸や発声の際に食物や飲料が気道に入らないようにする役割があるが、通常の発声では大きな役割を果たしていない。

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image credit:public domain/wikimedia

 じつはモンゴルのホーミーなどで有名な「喉歌」も仮声帯の振動によって歌われる。

 不吉さを感じさせるデスボイスと不思議な音色のホーミーが、同じ仕組みで出ているのは面白い。

 人間がデスボイスを出すとき、声帯が下がり、声帯と一緒に振動する。

 このために仮声帯が重たくなり、非常に低い周波数で震える。デスボイスが地獄の底から響いてくるような低音なのはそのためだ。

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デスメタルのコンピレーション低音から高音まで、幅広い音域を出せるボーカリスト 今回の研究では、コウモリの声の秘密を探るために、喉の様子が超高速撮影された。


 南デンマーク大学の研究チームによると、コウモリの喉を観察するために毎秒25万フレームで超高速撮影したそうだ。

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Bats growl like death metal singers and Mongolian throat singers

 その結果、デスボイスのほか、コウモリの大きな特徴の1つであるエコーロケーションの秘密が明らかになっている。

 コウモリは超音波をレーダーとして使い、暗闇の中でも昆虫などのエサを捕獲するが、それは極薄の「声帯膜」を振動させることで発声される。この構造はかつて人間にもあったが、進化の過程で失われた。

 さらにコウモリは低音から高音まで、7オクターブもの広い音域の持ち主なのだ。

 南デンマーク大学のコーエン・エレマンス教授は、「これは驚くべきことです」と、プレスリリースで説明する。

 同教授によると、大抵の哺乳類の音域は3~4オクターブで、普通の人間なら3オクターブ程度しか出ないのだという。

 「歌手の中には4~5オクターブの音域の持ち主もいますが、ごく少数です。有名なのは、マライア・キャリー、アクセル・ローズ、プリンスなどですね。コウモリは、さまざまな咽頭の構造を駆使して、この音域を超えることが判明しています」

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コウモリの喉頭内部 / image credit:University of Southern Denmarkデスボイスで何を語る? 豊かすぎる音域でコウモリがどんなおしゃべりをしているのかは不明だ。

 ちなみにデスメタル的なうなり声は、コウモリが混雑したねぐらに戻るときに出されることが多い。この状況ではもしかしたら苛立ちの表現なのかもしれない。


 だが、ほかにも攻撃的に思えるものや、まったく違う役割がありそうなものなど、いろいろなデスボイスが観察されている。

 コウモリの専門家にも、それで何を伝えているのか今はわからないそうだ。

 この研究は『PLoS Biology』(2022年11月29日付)に掲載された。

References:Bats growl like death metal singers and Mongolian throat singers / written by hiroching / edited by / parumo

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