エジプト「テーベ・ネクロポリス(死者の都)」にある位の高い貴族の墓2つから、9匹のワニの頭部の遺骨が発見されたそうだ。
『Journal of African Archaeology』で発表されたこの前代未聞の発見について、発掘チームのパトリック・チュジク博士(ワルシャワ大学地中海考古学センター)は、「この類のものとしては初めて」と語っている。
ワニは古代エジプトでは「セベク神」と関連づけられた神聖な動物だ。そのため今回発見されたワニも、単なる生贄などではなく、象徴的な意味合いがあったと考えられている。
古代エジプトの墓で初めて発見されたワニの頭部遺骨
チュジク博士によると、ナイル川沿いでワニのミイラはいくつも発見されているという。
古代エジプトにおいてワニは、ワニの頭を持つ神「セベク神」に結び付けられた神聖な動物で、その遺体は全身をミイラにされて動物のカタコンベ(地下墓地)に納められた。
だが今回、テーベ・ネクロポリス(死者の都)の貴族の墓で発見されたものは、それらと少々状況が違う。まずワニの遺体は全身でなく、頭だけであった。
またミイラにされることなく、ただ亜麻布に包まれていただけだった。動物のカタコンベではなく、人間の墓で発見されたのも前代未聞だ。
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テーベ・ネクロポリスの墓で発見されたワニの頭部遺骨 / image credit:
テーベ・ネクロポリスと高官の墓
古代エジプトの都市「テーベ」は、上エジプト第4州の主要都市で、新王国時代には首都でもあった重要な場所だ。
ナイル川沿いに築かれたこの街の東岸は「生者の都」とされ、現代にも残るカルナック神殿やルクソール神殿などが建てられた。
一方、ナイル川西岸は「死者の都(ネクロポリス)」とされ、ハトシェプスト女王葬祭殿など、王家の墓地や葬祭殿群などが建立されている。
ワニの頭蓋骨は、そのハトシェプスト女王葬祭殿そばの「エル・アサシフのネクロポリス(Necropolis of el-Asassif)」にある2つの墳墓から発見された。
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テーベ・ネクロポリスのそばにあるハトシェプスト女王葬祭殿/ image credit: Merlin UK/ CC BY-SA 3.0
墓は、古代エジプト第11王朝の4代目ファラオ「メンチュヘテプ2世」(エジプトが分裂した戦乱時代「第一中間期」を再統一した功績で知られる)の時代に活躍した高官2名のものだ。
1人はChettiという人物。もう1人は名称不明だが、メンチュヘテプ2世の「主席大臣」(高官の中でも特に位が高く、ファラオに返答することが許されていた)だったと考えられている。
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壁画に描かれた、古代エジプト第11王朝の4代目ファラオ、メンチュヘテプ2世/ image credit:public domain/wikimedia
ワニとセベク神
2つの墓から発見された9つのワニの頭は、現在もナイル川に生息するナイルワニのものだ。
9つの頭といっても断片的なもので、すべてが残されていたわけではない。
その1つの要因としては、ただ亜麻布に包まれただけで、ミイラにするなど保存処理されなかったことが挙げられるが、それよりも1世紀前に墓を最初に調査したメトロポリタン美術館の研究者の責任が大きいという。
当時の発掘調査では、宝石や彫刻など、価値のありそうな遺物ばかりが注目され、動物の遺体にはほとんど関心が払われなかった。
そのため、動物の遺骨が見つかっても、そのまま廃棄されてしまったのだ。
古代エジプトでは、ワニは「セベク神」に関連づけられ、神聖な動物として崇拝されていた。
ワニの頭をもつセベク神は力強さ、敏捷性、ファラオの権力、武勇などを象徴したほか、太陽神ラーと習合し「セベク・ラー」と呼ばれることもあった。
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アメネムハト3世の葬祭殿で発見されたセベク像 / image credit:Graeme Churchard from Bristol / WIKI commons CC BY 2.0
遺骨が少ないため、頭部を切断した方法はわからないが、ワニの頭部は埋葬された人物への供物だったと考えられている。そのため彼らは、セベク神に関係する象徴的な意味を持っていた可能性が高い。
チュジク博士は、今回の発見についてこう述べている。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
『Journal of African Archaeology』で発表されたこの前代未聞の発見について、発掘チームのパトリック・チュジク博士(ワルシャワ大学地中海考古学センター)は、「この類のものとしては初めて」と語っている。
ワニは古代エジプトでは「セベク神」と関連づけられた神聖な動物だ。そのため今回発見されたワニも、単なる生贄などではなく、象徴的な意味合いがあったと考えられている。
古代エジプトの墓で初めて発見されたワニの頭部遺骨
チュジク博士によると、ナイル川沿いでワニのミイラはいくつも発見されているという。
古代エジプトにおいてワニは、ワニの頭を持つ神「セベク神」に結び付けられた神聖な動物で、その遺体は全身をミイラにされて動物のカタコンベ(地下墓地)に納められた。
だが今回、テーベ・ネクロポリス(死者の都)の貴族の墓で発見されたものは、それらと少々状況が違う。まずワニの遺体は全身でなく、頭だけであった。
またミイラにされることなく、ただ亜麻布に包まれていただけだった。動物のカタコンベではなく、人間の墓で発見されたのも前代未聞だ。
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テーベ・ネクロポリスの墓で発見されたワニの頭部遺骨 / image credit:
テーベ・ネクロポリスと高官の墓
古代エジプトの都市「テーベ」は、上エジプト第4州の主要都市で、新王国時代には首都でもあった重要な場所だ。
ナイル川沿いに築かれたこの街の東岸は「生者の都」とされ、現代にも残るカルナック神殿やルクソール神殿などが建てられた。
一方、ナイル川西岸は「死者の都(ネクロポリス)」とされ、ハトシェプスト女王葬祭殿など、王家の墓地や葬祭殿群などが建立されている。
ワニの頭蓋骨は、そのハトシェプスト女王葬祭殿そばの「エル・アサシフのネクロポリス(Necropolis of el-Asassif)」にある2つの墳墓から発見された。
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テーベ・ネクロポリスのそばにあるハトシェプスト女王葬祭殿/ image credit: Merlin UK/ CC BY-SA 3.0
墓は、古代エジプト第11王朝の4代目ファラオ「メンチュヘテプ2世」(エジプトが分裂した戦乱時代「第一中間期」を再統一した功績で知られる)の時代に活躍した高官2名のものだ。
1人はChettiという人物。もう1人は名称不明だが、メンチュヘテプ2世の「主席大臣」(高官の中でも特に位が高く、ファラオに返答することが許されていた)だったと考えられている。
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壁画に描かれた、古代エジプト第11王朝の4代目ファラオ、メンチュヘテプ2世/ image credit:public domain/wikimedia
ワニとセベク神
2つの墓から発見された9つのワニの頭は、現在もナイル川に生息するナイルワニのものだ。
9つの頭といっても断片的なもので、すべてが残されていたわけではない。
その1つの要因としては、ただ亜麻布に包まれただけで、ミイラにするなど保存処理されなかったことが挙げられるが、それよりも1世紀前に墓を最初に調査したメトロポリタン美術館の研究者の責任が大きいという。
当時の発掘調査では、宝石や彫刻など、価値のありそうな遺物ばかりが注目され、動物の遺体にはほとんど関心が払われなかった。
そのため、動物の遺骨が見つかっても、そのまま廃棄されてしまったのだ。
古代エジプトでは、ワニは「セベク神」に関連づけられ、神聖な動物として崇拝されていた。
ワニの頭をもつセベク神は力強さ、敏捷性、ファラオの権力、武勇などを象徴したほか、太陽神ラーと習合し「セベク・ラー」と呼ばれることもあった。
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アメネムハト3世の葬祭殿で発見されたセベク像 / image credit:Graeme Churchard from Bristol / WIKI commons CC BY 2.0
遺骨が少ないため、頭部を切断した方法はわからないが、ワニの頭部は埋葬された人物への供物だったと考えられている。そのため彼らは、セベク神に関係する象徴的な意味を持っていた可能性が高い。
チュジク博士は、今回の発見についてこう述べている。
古代エジプトの墓で発見された動物の遺体の意味について、興味深い議論を巻き起こすでしょう。References:Nine Crocodile Heads Found in Ancient Egyptian Tombs a “First of Its Kind” Discovery | Ancient Origins / written by hiroching / edited by / parumo
それは単なる生け贄などではなく、象徴的な意味を持っていたと思われます。今回のケースでは、ワニはおそらくセベク・ラー神を意味したのでしょう
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
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