
ベルギーで、金属探知機によって、1600年以上前の古代ローマの青銅の遺物「中空十二面体」の破片が見つかった。
中空十二面体は過去200年の間に、ヨーロッパ北部で100個以上が発見されている、なんとも謎に満ちた遺物だ。
大きさは野球のボールほど、中が空洞になっている12面体の幾何学的な鋳物で、均一な各面には穴があいており、それぞれの角に飾り鋲のようなものがついている。
しかし、これがなんのために使われたものなのかは、いまだにわかっていない。
ベルギーの畑で発見された中空十二面体の破片 数ヵ月前、アマチュア考古学者であるパトリック・シュエルマンズ氏は、ベルギー北部フランドル地方の小さな町、コルテッセム近くの畑で金属探知機を使っていると、謎の金属の破片を発見した。
シュエルマンズ氏はこの破片をトンヘレンにあるガロ・ロマン博物館に寄贈した。
ガロ・ロマン博物館の学芸員、クリーマーズ氏らは、その破片の分析を進めていたが、2022年12月に中空十二面体の一部だと特定した。
破片は、角に鋲のようなものがついたほんの一部分だけだが、もとは直径5センチ強ほどの十二面体であることは間違いない。
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フランドル地方のコルテッセムの町近くの畑で見つかった破片は、明らかにローマの中空十二面体の一部だった / Image credit:Kris Vandevorst / Flanders Heritage Agency魔術や占いなどの儀式に使用された可能性
クリーマーズ氏によれば、ガロ・ロマン博物館にはすでに、1939年にトンヘレンのローマ時代の城壁の外で発見された、完全な形の青銅の十二面体が展示されていて、新たに見つかった破片は、この2月にその隣に展示される予定だという。
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現在、考古学者たちがこの破片が見つかった場所を調査している。ローマ時代の別荘があった場所だった可能性があるからだ / image credit:Kris Vandevorst / Flanders Heritage Agency謎めいた中空十二面体 古代ローマの中空十二面体は、18世紀にイギリスで初めて発見された。
それ以来、イギリス、オランダ、ベルギー、フランス、ドイツ、オーストリア、スイスで、これまでおよそ120個が見つかっている。
使われている金属自体の年代を特定することはできないが、地層に埋もれていたものもいくつかあり、西暦1世紀から5世紀の間のものではないかと言われている。
謎はそれだけではない。専門家でも、この幾何学的遺物の機能を説明することはできず、これまでにこの遺物について書かれた記録も残ってない。
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1939年にベルギー、トンヘレンの古代ローマ時代の城壁付近で発見された、完全な中空十二面体 / image credit:Gallo-Romeins Museum Tongeren
クリーマーズ氏によれば、ローマ時代には人気があったが、のちのローマ帝国がキリスト教を採用してから禁止された、未来を告げる占いのようなことが、魔術目的で秘密裏に使われていていた可能性があるとのこと。
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image credit:Kleon3 / Wikimedia一体何に使われたのか?様々な説が唱えられる 謎に包まれたこの遺物についての説明は、長年の間にいろいろ出てきた。
最初は、メイスという武器の頭の部分だと考えられた。ほかには、穀物の種を植える時期を正確に割り出す道具、さらにはサイコロなど、ゲームのための道具、あるいは、バリスタというローマの投石器のための距離を正確に割り出すための機器という説もある。
最近は、ローマ人の手袋を作るための編み機という説も新たに出てきた。
だが、ほとんどの考古学者は、魔術的な儀式で使われたものではないかと考えている。
この遺物には、計測器のように使い方がわかるメモリのようなマークはなにもない。しかも、それぞれは、重さもサイズも直径4センチから11cmとバラバラだ。
このローマの中空十二面体は、ローマ帝国の北西部でしか見つかっていない。多くは埋葬地から出土している。
このことから、これらを使った祭式、魔術行為がガロ・ロマン地域に限定されていたことがわかる。ここは、ガリア人やケルト人の影響を受けたのちのローマ帝国の領域だ。
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image credit:Hunt Museum / WIKI commons今回の発見で使用目的が明らかになる可能性 クリーマーズ氏は、コルテッセム近くで見つかった今回の破片は、この金属の遺物の謎にさらに光を当てることになるかもしれないと言う。
ほかの多くの十二面体は、個人や博物館のコレクションで初めて認識されたものなので、その考古学的な前後関係は不明だという。
しかし、コルテッセムの破片が見つかった場所は、きちんと文書化されている。
その後の考古学調査で、この場所に壁画があった痕跡が明らかになり、ローマ時代の別荘が存在していた可能性が示唆された。
フランドル遺産局は、割れた破片の表面から、おそらく最後の儀式で、この十二面体が故意に壊されたことがわかると述べている。
さらになにかが見つかる可能性があるため、発見場所は今後も調査されることになる。
金属探知機のおかげで、フランドル地方で十二面体が出土した正確な位置を初めて知ることができた。これは、さらなる調査研究の扉を開くことになると期待されている。
References:Mysterious 12-sided Roman object found in Belgium may have been used for magical rituals | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo
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中空十二面体は過去200年の間に、ヨーロッパ北部で100個以上が発見されている、なんとも謎に満ちた遺物だ。
大きさは野球のボールほど、中が空洞になっている12面体の幾何学的な鋳物で、均一な各面には穴があいており、それぞれの角に飾り鋲のようなものがついている。
しかし、これがなんのために使われたものなのかは、いまだにわかっていない。
ベルギーの畑で発見された中空十二面体の破片 数ヵ月前、アマチュア考古学者であるパトリック・シュエルマンズ氏は、ベルギー北部フランドル地方の小さな町、コルテッセム近くの畑で金属探知機を使っていると、謎の金属の破片を発見した。
シュエルマンズ氏はこの破片をトンヘレンにあるガロ・ロマン博物館に寄贈した。
ガロ・ロマン博物館の学芸員、クリーマーズ氏らは、その破片の分析を進めていたが、2022年12月に中空十二面体の一部だと特定した。
破片は、角に鋲のようなものがついたほんの一部分だけだが、もとは直径5センチ強ほどの十二面体であることは間違いない。
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フランドル地方のコルテッセムの町近くの畑で見つかった破片は、明らかにローマの中空十二面体の一部だった / Image credit:Kris Vandevorst / Flanders Heritage Agency魔術や占いなどの儀式に使用された可能性
中空十二面体はある種の暦、土地の測量機器、王の笏など、さまざまな説がありますが、どれも決定打に欠けます。クリーマーズ氏は語る。
私たちはむしろ、魔術や占いなどの非公式な活動と関係があるのではないかと考えています
クリーマーズ氏によれば、ガロ・ロマン博物館にはすでに、1939年にトンヘレンのローマ時代の城壁の外で発見された、完全な形の青銅の十二面体が展示されていて、新たに見つかった破片は、この2月にその隣に展示される予定だという。
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現在、考古学者たちがこの破片が見つかった場所を調査している。ローマ時代の別荘があった場所だった可能性があるからだ / image credit:Kris Vandevorst / Flanders Heritage Agency謎めいた中空十二面体 古代ローマの中空十二面体は、18世紀にイギリスで初めて発見された。
それ以来、イギリス、オランダ、ベルギー、フランス、ドイツ、オーストリア、スイスで、これまでおよそ120個が見つかっている。
使われている金属自体の年代を特定することはできないが、地層に埋もれていたものもいくつかあり、西暦1世紀から5世紀の間のものではないかと言われている。
謎はそれだけではない。専門家でも、この幾何学的遺物の機能を説明することはできず、これまでにこの遺物について書かれた記録も残ってない。
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1939年にベルギー、トンヘレンの古代ローマ時代の城壁付近で発見された、完全な中空十二面体 / image credit:Gallo-Romeins Museum Tongeren
クリーマーズ氏によれば、ローマ時代には人気があったが、のちのローマ帝国がキリスト教を採用してから禁止された、未来を告げる占いのようなことが、魔術目的で秘密裏に使われていていた可能性があるとのこと。
占いなどの行為は許可されておらず、違反者への罰則も厳しいものだったのです。おそらくこれが、なんの記録も書き残されていない理由なのでしょう
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image credit:Kleon3 / Wikimedia一体何に使われたのか?様々な説が唱えられる 謎に包まれたこの遺物についての説明は、長年の間にいろいろ出てきた。
最初は、メイスという武器の頭の部分だと考えられた。ほかには、穀物の種を植える時期を正確に割り出す道具、さらにはサイコロなど、ゲームのための道具、あるいは、バリスタというローマの投石器のための距離を正確に割り出すための機器という説もある。
最近は、ローマ人の手袋を作るための編み機という説も新たに出てきた。
だが、ほとんどの考古学者は、魔術的な儀式で使われたものではないかと考えている。
この遺物には、計測器のように使い方がわかるメモリのようなマークはなにもない。しかも、それぞれは、重さもサイズも直径4センチから11cmとバラバラだ。
このローマの中空十二面体は、ローマ帝国の北西部でしか見つかっていない。多くは埋葬地から出土している。
このことから、これらを使った祭式、魔術行為がガロ・ロマン地域に限定されていたことがわかる。ここは、ガリア人やケルト人の影響を受けたのちのローマ帝国の領域だ。
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image credit:Hunt Museum / WIKI commons今回の発見で使用目的が明らかになる可能性 クリーマーズ氏は、コルテッセム近くで見つかった今回の破片は、この金属の遺物の謎にさらに光を当てることになるかもしれないと言う。
ほかの多くの十二面体は、個人や博物館のコレクションで初めて認識されたものなので、その考古学的な前後関係は不明だという。
しかし、コルテッセムの破片が見つかった場所は、きちんと文書化されている。
その後の考古学調査で、この場所に壁画があった痕跡が明らかになり、ローマ時代の別荘が存在していた可能性が示唆された。
フランドル遺産局は、割れた破片の表面から、おそらく最後の儀式で、この十二面体が故意に壊されたことがわかると述べている。
さらになにかが見つかる可能性があるため、発見場所は今後も調査されることになる。
金属探知機のおかげで、フランドル地方で十二面体が出土した正確な位置を初めて知ることができた。これは、さらなる調査研究の扉を開くことになると期待されている。
References:Mysterious 12-sided Roman object found in Belgium may have been used for magical rituals | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo
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