
様々なパワーストーンと同様、根拠は定かでないが、ブラッドストーンにも、不思議な力が宿っていると考えられてきた。
ヘリオトロープとも呼ばれるこの鉱物にまつわる物語や伝説が、少なくともローマ時代にさかのぼる頃から、たくさん生み出されてきた。
こうした話についてもっとも興味深いのは、真偽のほどを簡単に検証できるものはあるのに、人々が頑なに信じ続けていることだろう。
だが、少なくともひとつの伝承は真実に基づいているのかもしれない。
古代より様々な伝承が伝わるブラッドストーン 玉髄の一種「ブラッドストーン(ヘリオトロープ)」は、半透明の緑色で、赤い斑点があるのが特徴だ。
この赤い斑点が血のように見えることから、キリスト教の伝説では、十字架にかけられたイエスの体から流れ落ちた血が石になったと考えられている。
この話を広めた人たちは、オーストラリアやアメリカにもブラッドストーンが比較的多く存在することを知らなかったようだ。
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image credit:Bloodstone 4 / WIKI commons cc-by-2.0ブラッドストーンはなにでできているのか? ブラッドストーンは、シリカ、つまり二酸化珪素でできている。地球の地殻でもっとも一般的な元素である酸素と珪素は、頻繁に結合して、例えば海岸の砂のほとんどを形成している。
しかし、白い粒子や半透明の石を形成するのではなく、このふたつの元素は、ほかの元素の痕跡と結びついて、石英系統でありながら、独特な色や結晶を生み出すことがある。
ブラッドストーンに多く出る色は緑色で、ジャスパー(碧玉)あるいは緑の玉髄をさす名称として使われている。
赤い斑点は酸化鉄(Fe2O3)の一種であるヘマタイト(赤鉄鉱)が混入したもので、緑の背景によく映える。
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photo by iStock
ブラッドストーンが魔法の力を宿していると説いた大プリニウス ブラッドストーンと血液を結びつけて、魔法の力を宿していると吹き込んだのは、中世のキリスト教徒が最初ではない。
大プリニウス(ガイウス・プリニウス・セクンドゥス)は次のように書いている。
どうやら、大プリニウスは、実際にこうしてみる必要性は感じておらず、反論される可能性も大きかったのに、ただこの話を繰り返し説いたようだ。
一方で、大プリニウスはブラッドストーンを植物のヘリオトロープ(キダチルリソウ属)と合わせて、呪文を唱えると、これを身につけている者の姿を透明にできるなどと主張する魔術師を少なくとも軽蔑していた。
植物のヘリオトロープは、花が一日中太陽の動きを追う習性があることから、その名がつけられた。
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植物のヘリオトロープ(キダチルリソウ属)photo by iStock
鉱物のヘリオトロープのほうは、プリニウスの次の言葉から命名された。
このような話を聞いたら、ローマの戦士がこの石を身に着けて戦いにのぞめば、負傷しても出血が少なくて済むと信じていた習慣を一蹴するのは簡単だ。ブラッドストーンに止血効果があると考えていたアステカ人 しかし、アステカ人もこの石に似たような効能があると考えていた。
とくに石を粉末状にすると同様の止血効果があると考えていた。実施にヘマタイト(赤鉄鉱)に、失血をおさえる収斂効果があった可能性もある。
今日、酸化鉄は収斂性カラミン(酸化第二鉄の混じった酸化亜鉛、ローションなどに使われる)に使われているが、その効果のほどは異なると考えられている。
もちろん、兵士たちにとってもっと純粋な酸化鉄のサンプルがあればよかっただろう。
今日では、もっといい選択肢があるが、兵士たちの信仰心は、あながちまったくの迷信というわけではなかったかもしれない。
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ブラッドストーンの治癒力に関する現代の神話 ブラッドストーンが集中力を高めたり、意思決定力を強化するといった、クリスタルヒーラー的な力があることを裏づける証拠はほとんどない。
基本的なチャクラ(ヨガでエネルギーが集積するいくつかの点)と関連して、ブラッドストーンは、日常生活のストレスから心を守る強力なヒーリングストーンで、なかなかリラックスできない、必要以上に物事をくよくよ考えてしまう人にとって、最適なものだという説には、まったく根拠はない。
こうした迷信がいかにありえないか、立証されていないかを必要以上に長く考えることになるのは確かだろう。
もちろん、こうした迷信など信じていなくても、ブラッドストーンは美しいし、審美的、歴史的な理由でこれを手に入れたいと思うこともあるだろう。
しかし、ほかの人もそう感じているため、ネットでの価格は割高になっているようだ。
References:What Is Bloodstone Crystal? | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo
追記(2023/02/09):誤って記述した箇所を訂正して再送します。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
ヘリオトロープとも呼ばれるこの鉱物にまつわる物語や伝説が、少なくともローマ時代にさかのぼる頃から、たくさん生み出されてきた。
こうした話についてもっとも興味深いのは、真偽のほどを簡単に検証できるものはあるのに、人々が頑なに信じ続けていることだろう。
だが、少なくともひとつの伝承は真実に基づいているのかもしれない。
古代より様々な伝承が伝わるブラッドストーン 玉髄の一種「ブラッドストーン(ヘリオトロープ)」は、半透明の緑色で、赤い斑点があるのが特徴だ。
この赤い斑点が血のように見えることから、キリスト教の伝説では、十字架にかけられたイエスの体から流れ落ちた血が石になったと考えられている。
この話を広めた人たちは、オーストラリアやアメリカにもブラッドストーンが比較的多く存在することを知らなかったようだ。
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image credit:Bloodstone 4 / WIKI commons cc-by-2.0ブラッドストーンはなにでできているのか? ブラッドストーンは、シリカ、つまり二酸化珪素でできている。地球の地殻でもっとも一般的な元素である酸素と珪素は、頻繁に結合して、例えば海岸の砂のほとんどを形成している。
しかし、白い粒子や半透明の石を形成するのではなく、このふたつの元素は、ほかの元素の痕跡と結びついて、石英系統でありながら、独特な色や結晶を生み出すことがある。
ブラッドストーンに多く出る色は緑色で、ジャスパー(碧玉)あるいは緑の玉髄をさす名称として使われている。
赤い斑点は酸化鉄(Fe2O3)の一種であるヘマタイト(赤鉄鉱)が混入したもので、緑の背景によく映える。
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photo by iStock
ブラッドストーンが魔法の力を宿していると説いた大プリニウス ブラッドストーンと血液を結びつけて、魔法の力を宿していると吹き込んだのは、中世のキリスト教徒が最初ではない。
大プリニウス(ガイウス・プリニウス・セクンドゥス)は次のように書いている。
この石を、水の入った容器に入れ、そこに明るい太陽光が当たると、その光を反射して血の色に変化する。とくにエチオピア産の石はそうだ悟りの後で、このくだりを読んだ多くの者が、本能的にブラッドストーンを水の中に落としたいと思ったことだろう。
どうやら、大プリニウスは、実際にこうしてみる必要性は感じておらず、反論される可能性も大きかったのに、ただこの話を繰り返し説いたようだ。
一方で、大プリニウスはブラッドストーンを植物のヘリオトロープ(キダチルリソウ属)と合わせて、呪文を唱えると、これを身につけている者の姿を透明にできるなどと主張する魔術師を少なくとも軽蔑していた。
植物のヘリオトロープは、花が一日中太陽の動きを追う習性があることから、その名がつけられた。
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植物のヘリオトロープ(キダチルリソウ属)photo by iStock
鉱物のヘリオトロープのほうは、プリニウスの次の言葉から命名された。
同じ石が鏡のように太陽光をとらえ、日食を検出し、太陽の円の下を月が通過する様子を示すこれが実際になにを意味するかは、推測するだけだ。日食が起こっているなら、石がなくてもわかるからだ。
このような話を聞いたら、ローマの戦士がこの石を身に着けて戦いにのぞめば、負傷しても出血が少なくて済むと信じていた習慣を一蹴するのは簡単だ。ブラッドストーンに止血効果があると考えていたアステカ人 しかし、アステカ人もこの石に似たような効能があると考えていた。
とくに石を粉末状にすると同様の止血効果があると考えていた。実施にヘマタイト(赤鉄鉱)に、失血をおさえる収斂効果があった可能性もある。
今日、酸化鉄は収斂性カラミン(酸化第二鉄の混じった酸化亜鉛、ローションなどに使われる)に使われているが、その効果のほどは異なると考えられている。
もちろん、兵士たちにとってもっと純粋な酸化鉄のサンプルがあればよかっただろう。
今日では、もっといい選択肢があるが、兵士たちの信仰心は、あながちまったくの迷信というわけではなかったかもしれない。
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ブラッドストーンの治癒力に関する現代の神話 ブラッドストーンが集中力を高めたり、意思決定力を強化するといった、クリスタルヒーラー的な力があることを裏づける証拠はほとんどない。
基本的なチャクラ(ヨガでエネルギーが集積するいくつかの点)と関連して、ブラッドストーンは、日常生活のストレスから心を守る強力なヒーリングストーンで、なかなかリラックスできない、必要以上に物事をくよくよ考えてしまう人にとって、最適なものだという説には、まったく根拠はない。
こうした迷信がいかにありえないか、立証されていないかを必要以上に長く考えることになるのは確かだろう。
もちろん、こうした迷信など信じていなくても、ブラッドストーンは美しいし、審美的、歴史的な理由でこれを手に入れたいと思うこともあるだろう。
しかし、ほかの人もそう感じているため、ネットでの価格は割高になっているようだ。
References:What Is Bloodstone Crystal? | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo
追記(2023/02/09):誤って記述した箇所を訂正して再送します。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
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