レオナルド・ダ・ヴィンチはニュートンの100年前に重力を理解していたことがスケッチから判明
 あらゆる分野に精通し、比類なき万能の天才として知られている「レオナルド・ダ・ヴィンチ」が没して5世紀が過ぎたが、いまだ彼の残した偉業は完全には解明されていない。

 新たな研究で、ダ・ヴィンチは、万有引力の法則の発見したといわれているニュートンよりも100年以上前に、重力の存在に気が付いていたことが、彼の残したスケッチから明らかになったという。


ダ・ヴィンチが残した重力の認識を示すスケッチ アイザック・ニュートン(1643年1月4日 - 1727年3月31日)は17世紀後半に、木から落ちるリンゴを目にして、重力の概念をひらめいたとされている。

 だが、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年4月15日 - 1519年5月2日)は、その100年以上前から、重力について理解していたようだ。

 『Leonardo』(2023年2月1日付)に掲載された研究では、「アランデル手稿」というダ・ヴィンチのノートに描かれた三角形を分析している。

 それによると、彼のスケッチは「重力による物体の運動」と「実験者が作り出した運動」とが「等価」であることを表しており、重力がある種の加速度であることをダ・ヴィンチが認識していたことがうかがえるそうだ。

[画像を見る]

ダ・ヴィンチの重力の調査を示すスケッチ / image credit:caltech.eduダ・ヴィンチが水瓶を使って行った独創的な重力実験 ダ・ヴィンチが思案していたのは、リンゴではなく、水瓶であったようだ。

 水瓶を真横に倒せば、もちろん中から水が流れ出てくる。そのとき、落下する水の速度に合わせて、水瓶を水平に引いたらどうなるか?

 落下する水滴を「斜辺」、それが落下した距離と水瓶の動きを「底辺」や「高さ」と見立てると、そこに「二等辺三角形」が出現する。ダ・ヴィンチはスケッチでこのことを指摘している。

[画像を見る]

ダ・ヴィンチが確立した二等辺三角形 / image credit:Gharib et al., Leonardo, 2022

 ダ・ヴィンチは、水の落下速度が一定ではなく、だんだんと加速することや、もはや水瓶の動きによって影響されないことに気づいていた。

 つまり水瓶を等速で動かしても落下物は直線にならず、水瓶を加速させることで落下物が直線になることを指摘したのだ。

 じつは、このような落下する物体の速度が時間とともに変化するという認識は、地球の「万有引力定数」を求めるうえで重要な一歩だったものだ。

 カリフォルニア工科大学のモルテザ・ガーリブ氏らは、今回の研究でこう述べている。
約500年前、レオナルド・ダ・ヴィンチは、重力の謎と加速度との関係を明らかにするべく、想像力と卓越した実験技術による独創的な実験をおこなった


[画像を見る]

ダ・ヴィンチの行った実験を再現 / image credit: Caltech 100%には至らなかったもののほぼ理解していた 傑出した頭脳を持つダ・ヴィンチは、この落下する物体の加速度を数学的に表そうとしていたが、完璧にはできなかったようだ。

 もしかしたら、当時はまだ正確に時間を測定する手段がなかったことや、のちにニュートンが考案する微積分学もなかったことが原因かもしれない。

 それでもダ・ヴィンチの手法からは、現代知られている万有引力定数の97%の値が算出されることがわかっている。

 ガーリブ氏らによると、もし彼が手稿に描かれていた実験を実際にやっていたのであれば、意図的に重力の効果を発生させた人類最初の人間がダ・ヴィンチだったとしてもおかしくないという。

 同氏らは、幾何学のような当時でも使えたものを駆使して、未知の謎を探求したダ・ヴィンチのやり方に感動したとのこと。そうした創意工夫は、現代の科学でも有効なものだ。

 ガーリブ氏は、「ダ・ヴィンチがさらなる実験をしたかのか、この問題をさらに深く探究したのかどうかはわかりません」と語る。

 だが1500年代初頭に早くもこの問題に取り組んでいたという事実が、ダ・ヴィンチがいかに先進的な人間だったのか実証しているとのことだ。

References:Leonardo da Vinci's Forgotten Experiments Explored Gravity as a Form of Acceleration | www.caltech.edu / Sketches Hint Leonardo da Vinci Grasped Gravity a Century Ahead of Newton : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
編集部おすすめ