太陽光による発電や廃熱による発電など、持続可能なエネルギーに優れた性能を発揮する材料では、原子が集団で動くことがわかっている。
今回開発された「可変シャッターPDF」は、その「動的乱れ(dynamic disorder)」と呼ばれる現象を撮影することができる。
動的乱れを理解することで、固体冷蔵庫やヒートポンプ、車や発電所の排ガスを利用した発電、放射性プルトニウムの熱を電気に変換する火星ローバー用発電機など、よりエネルギー効率の高い装置を開発できると期待できるそうだ。
素早い原子の動きを観察するための技術 持続可能エネルギーに使われる材料では、まるで生き物が”ダンス”でもしているかのように振る舞うことがある。そうした材料の反応や変化は、予測できない驚くべきものだ。
だが、こうした動的乱れを研究するのは難しい。それを引き起こす原子のまとまり(原子クラスター)はとても小さく無秩序で、しかも時間とともに変化するからだ。
これにくわえて、原子の動きが原因ではない「静的乱れ(static disorder)」というものもある。
これは材料の性能を引き上げてくれる特徴ではないが、これまでのカメラでは動的乱れと静的乱れを区別することはできなかった。
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中性子で原子の位置を見る、1ピコ秒の超高速シャッター だが米ブルックヘブン国立研究所や仏ブルゴーニュ大学をはじめとする研究チームが開発した中性子カメラなら、その違いまでしっかり撮影することができる。
『Nature Materials』(2023年2月20日付)で紹介されている「可変シャッターPDF(Pair Distribution Function)」は、普通のカメラとは違い、中性子で原子の位置を見る。
そのシャッタースピードは1ピコ秒。
「材料のこの側面を見られるのは、新開発の可変シャッターPDFだけです」と、ブルックヘブン国立研究所のサイモン・ビリンジ教授は話す。
それは複雑素材の特性を生み出している複雑さを観察するまったく新しい方法で、動く原子と動かない原子をはっきり区別できる。
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シャッタースピードが遅ければ、原子構造はぼやけてしか見えない。1ピコ秒の超高速シャッターならそれを鮮明にとらえることができる / image credit:Credit: Jill Hemman / ORNL, U.S. Dept. of Energy
原子の”動き”のメカニズム解明に迫る 今回の研究では、可変シャッターPDFを使って「一テルル化ゲルマニウム(GeTe)」の原子の対称性が崩れていることを発見している。
GeTeは、廃熱を電気に変換(あるいは電気で冷却)するのに重要な熱電材料だ。その原子が移動する様子や速さが観察されたのは史上初めてのことであるそうだ。
こうした可変シャッターPDFの観察結果から、GeTeなどに局所的な揺らぎが生まれるメカニズムに関する新理論が提唱されている。
このような原子のダンスを理解することは、より優れた材料の発見にもつながるという。
研究チームの今後のテーマは、この技術をもっと使いやすくして、動的乱れがあるさまざまな系に応用することだそうだ。
今後さらにカメラの改良が進めば、バッテリーの電極に使われるリチウムや太陽光による水分解など、原子の力学が大切な働きをしているさまざまな材料系を調べる標準的な観察手段になると期待できるとのことだ。
References:New 'camera' with shutter speed of 1 trillionth of a second sees through dynamic disorder of atoms / written by hiroching / edited by / parumo
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