デボン紀を生きた古代魚「ダンクルオステウス」の詳細が明らかに
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 古代魚の中でも、最大級の大きさを誇るといわれていた、デボン紀後期を生きた古代魚「ダンクルオステウス」は、体長9mはあると予測されていた。だが、新たな研究によると、これまで考えられていたより体長は短く、その半分ほどだったらしい。


 それでも、この魚が超ビッグだったことには変わらない。縦には短かったかもしれないが、ずんぐりタイプで横に分厚かったのだ。

鎧のように硬い頭蓋骨を持つ古代魚「ダンクルオステウス」 約3億6000万年前、この海の怪物は、体長9mはあると考えられていた。だが、新たな研究によると、実際には体長はその半分ほどで、ただずんぐりしていただけだったのではないかという。

 「ダンクルオステウス」は、デボン紀(4億1900万年前~3億5800万年前)の海を悠々と泳いでいた多くの超捕食動物の一種だ。

 鎧のような皮膚をもつこの装甲魚は、まだ海だった現在のオハイオ州付近に生息していて、3600kgの力で獲物を砕くことができる刃物のような顎を持っていた。

 このダンクルオステウス(D. telleri)の化石は、150年前にクリーブランドの町近く、エリー湖のほとりで初めて見つかった。よく知られた超巨大なその標本は、クリーヴランド自然史博物館にある。

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部分的に再構築されたダンクルオステウスの頭蓋骨 (標本 CMNH 5768)、クリーブランド自然史博物館 / image credit:James St. John / WIKI commons CC BY 2.0

 軟骨の骨格をもつ現代の魚と違って、ダンクルオステウスは軟骨の骨格に鎧のように硬い頭蓋骨がくっついていた。その頭蓋骨は、高さが85cm近くあり、映画『エイリアン』のあの怪物に似ていて恐ろしい。サメの頭蓋骨の大きさと体長との比率から体長を換算していた しかし、化石化して発見されたのは、ダンクルオステウスの頭蓋骨だけだったので、初期の研究者はサメの頭蓋骨の大きさと体長との比率から、ダンクルオステウスの全体サイズを推定し、そのままにしていた。

 この150年間、ダンクルオステウスは、地元の古生物学の象徴となり、オハイオ州の公式の先史時代の魚にもなった。


 にもかかわらず、ダンクルオステウスに焦点を当てたきちんとした科学的な研究は、実はほとんどされていなかった。

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何かがおかしい?研究者が新たにサイズを分析 クリーヴランド、ケースウェスタン大学のラッセル・エンゲルマンは、コロナパンデミックの間、通常の研究室での研究ができなくなった。そこで、クリーヴランド自然史博物館に行って、研究課題をいくつか考えた。

 ダンクルオステウスの標本を見ているとき、エンゲルマンは課題にぶちあたった。

「生物学のすべては、体の大きさに影響されます。古い測定法をいくつか使ってみましたが、生物学的にどうにもつじつまが合わなかったのです」

 何度やってみても、残っている頭蓋骨の大きさと体長9mという体長が結びつかなかった。

 エンゲルマンが再現したものはすべて、ダンクルオステウスの従来の想像図とは似ても似つかない、奇妙で非現実的な比率の体にどうしてもなってしまうのだ。

 当然のことながら、彼は最初の研究者がダンクルオステウスの体の大きさをどうやって決定したのかを突き止めようと決心した。そのとき、本当の課題が明らかになった。

「文献を調べたところ、これまでの研究者のほとんどは、基本的に目分量で判断していたことがわかりました」

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実際には考えられているほど大きくはなかった。ただし太い そこで、さまざまな魚の頭蓋骨の寸法を測定し、それらを体の比率と比較してみた。そして、頭蓋骨のサイズと形状が、体の比率と非常に相関していることを発見した。


 これを、ダンクルオステウスに当てはめて分析してみると、もっとも極端な数値を除外できるだけではなく、すべてが当てはまらなかったのだ。

 ダンクルオステウスは、9mではなく、4mを超えなかった可能性が高いと、2月21日に発表された『Diversity』誌に書いている。

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これまで、ダンクルオステウスの体長は9メートル(グレイの魚)だと考えられてきたが、新しい研究では4メートル(黒い魚)ほどだった可能性が高いことがわかった / image credit:Russel Engelman, Diversity (2023) CC-BY 4.0

 エンゲルマンの分析から、多くの怪しい要素が調べられたが、最終的には頭蓋骨の高さと幅に集約された。長い頭蓋をもつ魚は体も長く、短い頭蓋をもつものは体も短い傾向にある。

 ダンクルオステウスの比較的短い頭は、この魚がサメというよりもマグロに似た、短く幅広いずんぐりした体をしていることを意味している。

 エンゲルマンは、クリーヴランドの古生物学のマスコットの格下げには、最初は少々がっかりしたが、最終的には、その結果にわくわくしているという。

 この巨大魚の話からひとつ教訓があるとすれば、それは化石魚類学の専門家でさえ、ときには捕獲した魚のサイズをつい大げさに判断してしまう可能性があるということだ。

追記:(2023/03/14)本文を一部訂正して再送します。
References:Ancient monster fish 'Dunk' was short and chunky, study finds | Live Science / Diversity | Free Full-Text | A Devonian Fish Tale: A New Method of Body Length Estimation Suggests Much Smaller Sizes for Dunkleosteus terrelli (Placodermi: Arthrodira) / written by konohazuku / edited by / parumo

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